日中同盟は、アメリカにとって悪夢

 いちばん現実的に考えて、最適と思われる相手はアメリカです。アメリカに対する国民感情は常に良好を保っています。

 しかし、あえて他の同盟相手を考えるとすれば、中国という選択肢があります。

 それはアメリカが最も嫌がることです。というのはGDPの二位と三位の連合だからです。自民党の総裁選でも、二位と三位の連合が一位の有力候補をひっくり返したことが、過去にもありました。アメリカにとって極東アジアで東京・北京という政治的枢軸が形成されることは、忌まわしい悪夢になると思います。

 ですから戦略的に考えれば、日本と中国が同盟関係になっても不思議ではありません。

 しかし、日本と中国とは過去の経緯もあって、お互いの国民感情はそれほど良くありません。しかも共産主義体制と自由主義体制という、異なった政治体制同士です。日中同盟は、観念的にはあり得ますが、実際に政治生命を懸けて日中同盟に取り組もうとする政治家が現われるでしょうか。

EUはそもそも、日本を必要としていない

 EUは、国民感情としては悪くはないでしょう。

 ただ、EUの軍事力は全体としてもアメリカほど強大ではありません。また、EUの軍隊が日本の援助に駆けつけてくれるにしても、あまりにも距離が遠すぎます。またEUは、アメリカの力の源泉の一つである原子力空母を核とした機動部隊を持ちません。そして、この点が重要ですが、過去の日本との経済的な関係や軍事的な同盟関係を検証しても、ほとんど特筆すべきものがありません。わずかに日露戦争以前の日英同盟だけです。

 つまり、EUサイドには二十一世紀の今日、日本と同盟を結ぶ強いニーズは、おそらく何もないと思うのです。

 EUには日本と同盟を結ぶメリットはほとんどない。しかし中国にはあると思います。二位・三位の連合になれば、アメリカに対して強烈な圧力になりうるわけですから。しかしその可能性については、前述したとおりゼロに近い。

 このように考えてくると、日本の同盟相手はアメリカだけになりそうです。

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