日本は国内総生産(GDP)で見れば、世界三位もしくは四位の経済大国です。四位というのは購買力平価で計算するとインドに負けているからです。名目では三位です。

 このように日本は経済的にはとても大きな国です。ということは、潜在的には軍事大国になる可能性を持っているのですね。自衛隊は高性能の航空機や艦艇をたくさん所有しています。その軍事力は相当に強大です。

 ローマ時代の政治家であり哲学者だったキケロ(BC106―BC43)は、「戦争とは金だ」と一言でその本質を喝破しています。総力戦の時代に入った今日では、長い目で見ると経済力に勝る国が戦争に勝ちます。兵士に食べさせる食料も、一丁の小銃も、すべてお金がなければ買えません。

 それでは日本が、どこかの国と軍事同盟を結ぶとしたら、可能性のある国はどこでしょうか。

自分より貧しい国に、助けを求めるのか?

 経済的にも軍事的にも、日本は小国ではありません。かなり大きい国です。大きい国を守るのですから、同盟相手の国は日本より小さい国では不可能です。日本より貧しい国に「守ってくれ」といったらどうなるか。「じゃあ、お金をくれ」という話になるしかありません。発展途上国や日本より小さい国との同盟で、日本の安全保障を求めることは難しいのです。

 そのように考えていくと、実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に三つしかないということがわかります。

 アメリカ、中国、欧州連合(EU)です。

 EUを構成する国々は小さいのですが、全体としての経済規模は、さほどアメリカに劣りません。また、日本は日英同盟の経験がありますから、ヨーロッパと同盟関係を結ぶことも決して唐突ではありません。

 経済力と軍事力において自国と同等以上の水準を有する国をパートナーに選ばないと、安全保障条約を結んでも実効性を欠くことになりがちです。大国になると、理想的なパートナーを探すことはかなり難しくなってくるのです。

(次回に続く)


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 平たくいえば「国は引っ越しできない」から。 ≫「陸は閉じ、水は開く」
  ―シュメール人のことわざに地政学の萌芽があった。
≫「どうすれば、サンドイッチの具にならずに済むか、という問題」をめぐって、
 世界史の権謀術数は繰り広げられてきた。
≫海上の覇権争奪戦に関係するシーレーン(海上交通路)において、
 「鍵をにぎるのが半島や海峡」である。
≫「人間の真の勇気はたったひとつである。現実を直視して、それを受け入れる勇気である」
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