ハウスホーファーについて付言すれば、彼は第一次世界大戦前は、陸軍の現役の軍人でした。1908年から1910年まで、駐日ドイツ大使館付武官として日本に駐在しています。彼は日本に深い関心を示し、その文化や歴史も学びました。日本陸軍とも親交を深め、彼の地政学的な理論は、陸軍の戦略に多くの影響を残すことになったのです。
また、ハウスホーファーは第一次大戦後にミュンヘン大学の教授となりました。そのときの教え子のひとりが、後にヒトラーの側近となったルドルフ・ヘス(1894-1987)です。彼との縁でハウスホーファーは、ヒトラーとも交流がありました。
ヒトラーが彼の「生存圏」の理論を、我田引水的に曲解することを憂慮していたとも伝えられています。
『広辞苑』の解説は、満点ではない
しかし、生存圏という理論が、ナチズムにとって利用しやすい理屈であることは容易に推測できます。ドイツにとっての生存圏は正義であっても、侵略される側の他の民族や国家にとっては厄災そのものとなります。
ところで『広辞苑』の地政学についての解説は、必ずしも満点とは言い難い点があると思います。(次回に続く)
世界の今の見え方が変わる!
これまでに読んだ本は1万冊以上、訪れた世界の都市は1200以上。「現代の知の巨人」と呼ばれる出口治明さんが、「教養としての地政学」を、分かりやすく楽しく説き明かします。
地政学とは何か――?
ナチスも利用した「悪魔の学問」ではない。
ビジネスにも不可欠な「弱者の生きのびる知恵」である。
◎出口治明が語り下ろす、目からウロコのエッセンス。
≫地政学はなぜ必要か?
平たくいえば「国は引っ越しできない」から。
≫「陸は閉じ、水は開く」
―シュメール人のことわざに地政学の萌芽があった。
≫「どうすれば、サンドイッチの具にならずに済むか、という問題」をめぐって、
世界史の権謀術数は繰り広げられてきた。
≫海上の覇権争奪戦に関係するシーレーン(海上交通路)において、
「鍵をにぎるのが半島や海峡」である。
≫「人間の真の勇気はたったひとつである。現実を直視して、それを受け入れる勇気である」
―ロマン・ロランの名言から、日本の今を紐解く。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「Books」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?