ドラマは史実と違う

本能寺の変には謎が多いのですが、光秀が周到に準備した計画的なものではなかった、と見ていいのでしょうか。

加来:光秀は、信長の首を取った後のことは、事前にあまり考えていませんでした。まず信長をこの世から抹殺して、初めて畿内の武将を味方につけ、上杉景勝や毛利輝元などの有力武将に少しずつ働きかけたように思います。

 それでも光秀は、基本を間違えています。光秀は城持ちの武将ですが、どう考えても大名級。一方の信長は天下人です。一国の主と日本全体を見ている人は違う。当時は信長が主君で、秀吉や柴田は光秀と同列です。家臣は信長にはなれないのです。その当たり前のことが、理解ができていないのが、そもそもおかしいと思います。

 信長を討ちとっただけでは、天下人にはなりえません。本能寺の変後に、光秀は自分の娘を嫁がせていた細川忠興の父親である、越前以来の盟友・細川藤孝に対して「あなたの息子(忠興)のために信長を討った」などと言って、協力を求めていますが、応じてはもらえませんでした。前もって計画していたならば、親戚関係にあった細川家こそを、あらかじめ味方につけておくのが、自然でしょう。

 実際には11日間ですが、「明智の3日天下」と呼ばれるほど短命に終わったのは、準備が不十分だったから、事前計画がなかったからだと思います。本能寺の変には事前工作の痕跡が見られません。毛利氏に連絡した形跡もない。毛利氏と密約があったなら、秀吉の中国大返しも実現しなかったはずです。

 光秀が本能寺の変後に安土を攻めた際、進軍路となる瀬田の唐橋(大津市)を、織田家の山岡景隆に焼かれた際に、3日間ぼんやりしていました。精神的に半分、病気だったという説も否定できません。

 「天下人を討ちとっても、なり代われない」という話は企業社会にも通ずるところがあります。オーナーから雇われた社員は、たとえ社長になっても、本当のトップにはなり代われない。どうしてもかつぐ人が必要になります(編集部注:のちに秀吉は、信長の孫である三法師(織田秀信)をかつぎ、織田家の家督を継ぐことを支援した)。

ドラマでは光秀は乱世を良くしようする正義感の強い人物のように描かれています。

加来:ドラマは史実とは違います。光秀は血も涙もない実務型の官僚だったといえるでしょう。比叡山焼き討ちの時、光秀が「焼いてはいけません」と信長に言って蹴られたという話がありましたが、それはうそです。先に述べましたが、光秀は上司に言われたことをきっちりやるタイプです。自分がトップに立つのではなく、下にいれば活躍できる人材だったといえるでしょう。

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