幸福度を高める4つの要素

 これは、幸福学研究から見ても理にかなっています。強みが幸福度に影響することは冒頭で述べましたが、他の3つも同様です。

 あなたが好きで面白くて仕方がないこと(What you love)に熱中するとき、幸福度が高いことが知られています。たとえば、物事を満喫している人は幸福度が高いことが知られています。また、強い熱中・集中状態のことを「エンゲージメント」または「フロー」「ゾーン」と言います。ポジティブ心理学(幸福感についての心理学)の創始者であるセリグマン教授によると、エンゲージメント(フロー、ゾーン)は幸福感を形成する5つの要素(PERMA:Pleasant emotion, Engagement, Relationship, Meaning, Accomplishment)のうちの一つです。

 また、社会が必要とすること(What the world needs)を行っている状態は、利他的で、親切で、思いやりのある状態ですが、このような利他的な行動が幸福度を高めることは、さまざまな研究により検証されています。

 さらに、一定の収入(What you can be paid for)が幸福度を高めることも知られています。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授によると、年収が7万5000ドルになるまでは、年収と感情的幸福は比例する傾向があるのに対し、年収が7万5000ドルを超えると、もはや年収と感情的幸福の間に有意な相関は見られなかったそうです。つまり、一定の収入になるまでは、収入が増加するほど人は幸せになっていきます。

 〈ikigaiベン図〉に描かれた4つの円は、いずれも幸福度を高めるための要素なのです。なかでも、4つの円が重なった部分は、幸福度に寄与する4つの要因が重なっているのですから、特に幸福度の高い領域と言えるでしょう。生きがいを感じるわけです。強みを生かし、楽しくて仕方がなく、しかも社会に貢献し、お金までもらえるというのですから、幸せでないわけがありません。

4つの円が重なるところを探す

 「仕事で給料をもらっているが、別に好きな仕事ではないし、強みを生かせていないし、社会に貢献している実感もない」という場合は、一番下の部分でしょう。「趣味のゴルフは楽しいが、別にうまくないし、もちろんお金を稼いでいない」という場合は、一番上の部分でしょう。

 2つの円が重なっている部分にも名称が書かれています。

 強みで、好きだが、社会貢献しておらず、お金ももらっていない部分が「Passion(情熱)」。好きで、社会貢献にもなっているが、お金をもらっておらず、強みでもない部分が「Mission(使命)」。社会に貢献していて、お金をもらっているが、強みでも好きでもないところが「Vocation(天職、職業、生業)」。お金をもらっていて、強みでもあるが、好きではないし、社会に貢献していない場合が「Profession(専門職)」です。

 ちなみに、リクルートホールディングスが提唱している「Will、Can、Must」も、〈ikigaiベン図〉にある3つの要素に近いですね。Will(やりたいこと)は「What you love」、Can(できること)は「What you are good at」、Must(しなければならないこと)は「What the world needs」にあたります。〈ikigaiベン図〉は、「Will、Can、Must、Moneyの4つが重なるところを探しましょう」というスローガンを図にしたもの、と言い換えることもできるでしょう。

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