仕事のやりがいや働きがいを求める人が増えている。コロナ禍でリモートワークが推進される中、会社との関係や働き方を見直す機運が生まれていることも、その流れを後押ししている。どうすれば生きがいを見いだせるのか。ベストセラー『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』で紹介されているような強みと、幸せとの関係は? 幸福学研究の第一人者である慶応義塾大学大学院の前野隆司教授が解説する。

<span class="fontBold">前野隆司(まえの・たかし)</span><br>慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。東京工業大学修士課程修了後、キヤノン、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶応義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て現職。2017年より慶応義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任。幸福学研究の第一人者。著書に『脳はなぜ「心」を作ったのか』『錯覚する脳』(いずれも、ちくま文庫)、『幸せのメカニズム』(講談社現代新書)など。</a>
前野隆司(まえの・たかし)
慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。東京工業大学修士課程修了後、キヤノン、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶応義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て現職。2017年より慶応義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長を兼任。幸福学研究の第一人者。著書に『脳はなぜ「心」を作ったのか』『錯覚する脳』(いずれも、ちくま文庫)、『幸せのメカニズム』(講談社現代新書)など。

 私は幸せの研究を行っています。「どんな人が幸せであるか」についての心理学的な基礎的研究と、人々を幸せにする物づくり・サービスづくり・組織づくり・町づくりなどの応用研究です。

 そんな私から見て明らかなことの一つは、「自分の強みを明確に持っていて、それを生かせる人は、幸せな傾向がある」ということです。多くの研究者により、強みと幸せの関係についての研究が行われた結果として明らかにされた事実です。

 つまり、幸せになるためには、強みを磨くべきなのです。逆に言うと、「強みが見つかっていない人は、幸福度が低い傾向がある」ということでもあります。つまり、強みは見つけたほうがよいと言えます。では、どうやって見つければいいのでしょうか?

自分の強みを見つけるには

 「自分の強みが見つからない」という人がいます。まずは、それでいいのだと思います。強みはそう簡単に見つかるものではなく、人生をかけて探していくものなのではないでしょうか。

 強みを探すコツは、いろいろなことをやってみることです。やってみないで考えていても、強みは見つかりません。なぜなら、強みとは、長年かけて習熟していくものだからです。長年かけて根気よく続けるためには、「面白いこと」であることが重要です。面白ければ続きますから。

 「面白いと思うことが見つからない」という人もいます。こちらも、まずは、それでよいのだと思います。面白いことも、そう簡単に見つかるものではなく、人生をかけて探していくものなのではないでしょうか。

 面白いことを探すコツは、いろいろなことをやってみることです。やってみないで考えていても、面白いことは見つかりません。なぜなら、面白いこととは、長年かけて習熟していく中で、面白さが増していくものだからです。長年かけて根気よく続けるためには、強みであることが重要です。他の人に負けない強みになっていたら、続きますから。

 繰り返しになっていますね。つまり、「強み」と「面白いこと」は、鶏と卵の関係になっています。どちらかが見つからないと、他方も見つからない。逆に、どちらかが見つかり始めると、好循環の因果関係ループが回り始め、どんどん、より強い強みと、より楽しいやりがいになっていきます。

 つまり、「強み」や「面白いこと」は、やり続けないと深まらないのです。最初から強みだったり、最初から面白くてたまらなかったりは、しないのです。だから、最初は、ちょっとした強み、ちょっと面白いことから始めてみるしかないのです。しかも、始めないと深まらないのです。つまり、人は、いろいろなことにチャレンジしてみるべきなのです。

 それでも、自分の強みがうまく見つからない場合は、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』で紹介されている資質が参考になるでしょう。〈クリフトン・ストレングス〉で見いだされる資質は、あなたの強みの源泉です。

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