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180部隊の任務について詳しく知りたいです。

金興光:外貨稼ぎです(筆者注:米国、イスラエル、中国、ロシアなどの主要国は情報の窃取や破壊工作を担うサイバー部隊をのきなみ運用している。そんな中、北朝鮮の180部隊に付与された「外貨獲得」という任務はあまりにも特異だ。この部隊について詳しく聞くことこそが、今回の訪韓の目的であった)。

なぜそのような部隊が必要とされたのでしょうか。

金興光:金正日氏の死去に伴い金正恩氏が2011年に独裁体制を引き継いでから、核・ミサイル開発のペースが加速しました。国際社会による経済制裁が強まり、国に入ってくる外貨が細りました。そこで金正恩氏は13年、党中央軍事委員会の会議で外貨獲得を専門とする部隊の設立を宣言しました。これが180部隊です。部隊番号は自身の誕生日とされる1月8日にちなんでいます。主要任務は金融機関や仮想通貨交換会社のシステムをハッキングして外貨を盗み出すことです。

兵器開発の金づるは日本

まるで強盗団です。獲得した外貨は何に使おうというのでしょう。

金興光:「五大核打撃力」と呼ぶ5種類の強力な兵器の開発費に充てています。具体的には核爆弾、長距離ミサイル、潜水艦発射ミサイル(SLBM)、可搬型の超小型核爆弾、サイバー兵器の5種類です。金正恩氏は祖国統一の切り札に位置づけています。ところで、180部隊はソフトウエアの開発にも乗り出していますよ。

えっ、どういうことでしょう。

金興光:外貨を稼げるのであれば、その手段をサイバー攻撃に限定する必要はありません。180部隊の隊員たちはIT分野の専門知識を生かして、外国企業からソフト開発を請け負っています。180部隊を設立した当初は、むしろこちらが任務の中心でした。自覚していますか? 180部隊は日本でもソフト開発を受注していますよ。日本を主要市場に位置づけています(筆者注:米連邦捜査局=FBIも北朝鮮には外貨獲得を目的にサイバー攻撃とソフト開発を手掛けるサイバー部隊が存在すると分析している。2018年には隊員の1人を特定し、指名手配した)。

日本でソフト開発ですか?

金興光:はい。180部隊を設立した当時、市場規模が大きく、地理的にも文化的にも近いことから中国市場と並び、日本市場への参入を決めました。文法が韓国語と似通っており、日本語を習得した隊員が多いことも決め手です。

北朝鮮とのつながりが明らかになれば、日本では誰もソフト開発を依頼しないと思うのですが。

金興光:そのために180部隊は日本に立ち上げたソフト開発会社を受注窓口にしています。北朝鮮との関係を隠したフロント企業です。親北団体の在日同胞や日本人の協力者が経営しています。ソフト開発会社といっても人員は1人か2人しかおらず、実際の開発業務は北朝鮮や中国に散らばった180部隊の隊員が引き継いでいます。納期厳守と低価格を武器に日本で次々と受注に成功しています。

 2015年ごろからは受注に日本の「受発注仲介サイト」も活用しています。