昨年刊行の書籍『世界最高峰の経営教室』のスピンアウト企画。前回に引き続き、米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院教授デビッド・ティース教授のロングインタビューをお届けする。「ダイナミック・ケイパビリティ」の提唱者として知られる、経営学の世界的権威だ(ダイナミック・ケイパビリティにご興味のある方は、書籍をご参照ください)。

 大きな反響があった、前回の記事<ドラッカーの警告、「正しくやる」から日本は変革できない>。ティース教授は、日本の問題点は「次にくる大きなうねりを見つけ出す能力」の不足にあるとした。

 では、ティース教授自身は目下、テクノロジーの進化における「次にくる大きなうねり」は何だと考えているのか。今回は、そこから説き起こす。

 5GやIoT(モノのインターネット)など、いくつかのキーワードがあるが、破壊的な影響力を持つのは、何といってもAI(人工知能)だ。この論点については、今晩、ウェビナーを開催する。書籍にも登場した、「AIが人間の仕事の47%を奪う」という趣旨の論文で知られる、マイケル・オズボーン氏(英オックスフォード大学機械学習教授)が、ロンドンからライブ出演する。合わせてお楽しみいただきたい。

ティース教授は前回、日本からGAFAのような企業が生まれない理由について、「次に来る大きなうねりを見つけ出す能力が足りない」と指摘されました。

 では、2021年の現在において、「次にくる大きなうねり」とは、何なのでしょうか。ティース教授が「今後10年の人間社会を大きく変化させる」と考える、注目の技術を教えてください。

ティース教授:5GとIoT(モノのインターネット)は今後、多くのことを完璧に変化させるだろう。要するに、あらゆるモノとモノがすべてつながるということだ。

 何もかもが変わるにはまだ10~15年ほどかかるが、社会の利便性は増す。それと同時に、監視も強化される。もちろん、個人の自由に関わる懸案は多くある。誰もが居場所を常に万人に知られることになり、それを良しとする人もいれば、好ましく思わない人もいる。

 ここで私が目下、抱いている懸念を表明しておきたい。中国についてだ。

デビッド・ティース(David J.Teece)
米カリフォルニア大学バークレー校経営大学院教授
1948年生まれ。75年米ペンシルベニア大学で経済学の博士号を取得(Ph.D.)。米スタンフォード大学、英オックスフォード大学を経て82年から現職。産業組織論、技術変革研究の世界的権威で、200本以上の論文を発表。特に1997年発表の論文で提唱した「ダイナミック・ケイパビリティ」の概念は大きな反響を呼び、今も数多くの研究者が理論化に取り組んでいる。
続きを読む 2/5 中国と「倫理観」を共有できるか?

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