星野リゾート代表の星野佳路代表は、ファミリービジネス(同族経営)の研究をライフワークとしている。その研究成果を『星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書』にまとめたのは、2019年のこと。しかし、その後も取材、研究は続いている。今回のテーマは「老舗の変革」。伝統工芸のブランド化を推進する創業206年の老舗、玉川堂を取材した。若い後継者だからこそ実行できた大胆な施策とは。そして先代のベテラン経営者が、若い後継者への大胆な権限委譲に踏み切れた理由とは?
(構成/小野田鶴)
玉川堂(ぎょくせんどう)は、新潟県燕市に本社を置く、創業206年の老舗。無形文化財に指定されている「玉川堂の鎚起(ついき)銅器」の製造・販売を手掛けています。
7代目の玉川基行社長は、大学卒業と同時に家業の会社に入社すると新しい販路を開拓し、ブランド化を推進。2017年には、東京・銀座の商業施設「GINZA SIX」に直営店を出店し、1995年の入社から、売上高をおよそ4倍に伸ばしました。
東京の直営店は海外から日本を訪れるインバウンドの観光客の間で人気を集め、500万円の湯沸かしが売れるほどでした。それだけに新型コロナウイルス禍で受けた打撃も大きかったと思いますが、いかがでしょうか。
玉川:やはり影響はあります。直営店は、銀座と新潟県燕市の本店の2店ですが、特に銀座が厳しいです。新潟の本店も、コロナ禍に入ったばかりの2020年初頭には大きく売り上げを落としました。しかし、秋頃から客足が戻りはじめ、客数はむしろコロナ前より増えたくらいです。
なぜでしょうか?
玉川:星野さんが提唱した、マイクロツーリズムのおかげです。
星野:それはうれしいですね。

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