競合相手が低評価のやらせレビューを投稿してきたときに助けになるのが弁護士などが手がける削除代行業だ。ただ正当なレビュアーによる正当な低評価の削除を引き受けているケースも少なくないようだ。
英知法律事務所の森亮二弁護士はサイト運営会社の側に立ち、削除依頼に抵抗してきた。
「以前、ささいな批判でも次々と削除を求めてくるクリニックと対決したことがあります。最終的に高評価のレビューしか残らないように印象を操作していました。正当な低評価には、本来ほかの消費者に注意を促す役割があるはずです。それらが削除されていくことで、本来防げたはずの消費者被害が発生するリスクが高まってしまいます」
不利益を被るのは消費者ということになるはずだが、話はそう単純ではない。
口止め料が目当ての悪評まで
削除代行業者の中には、レビュアーに口止め料を支払って低評価を取り下げさせているところがある。さらに口止め料を目当てに、あえて低評価のレビューを書き込むずぶとい消費者まで存在するのだ。レビューの世界は闇が深く、話題は尽きない。詳しくは拙著『サイバーアンダーグラウンド/ネットの闇に巣喰う人々』に譲りたい。
最後にどれだけの人が他人のレビューを参考にしているのか、明らかにしよう。三菱UFJリサーチ&コンサルティングがSNSの利用者を対象に実施したアンケート調査によれば、ほぼ全員が商品やサービスの購入時にレビューを参考にしている。他人のレビューを「とても参考にしている」もしくは「ある程度参考にしている」と回答した比率は合わせて95%に上る。
だが「口止め料が目的の悪評」から「ライバルをおとしめる中傷」「うわべを取り繕う美辞麗句」まで、千差万別のやらせレビューがネットにあふれている。これが95%の人々が頼りにするレビューの現実だということを知っておく必要がある。

やらせレビューなどネット社会の闇を徹底解説!
日経BPから『サイバーアンダーグラウンド/ネットの闇に巣喰う人々』を刊行しました!
本書は3年にわたり追跡した人々の物語だ。ネットの闇に潜み、隙あらば罪なき者を脅し、たぶらかし、カネ、命、平穏を奪わんとする捕食者たちの記録である。
後ろ暗いテーマであるだけに、当然、取材は難航した。それでも張本人を突き止めるまで国内外を訪ね歩き、取材交渉を重ねて面会にこぎ着けた。
青年ハッカーは10代で悪事の限りを尽くし、英国人スパイは要人の殺害をはじめとする数々のサイバー作戦を成功させていた。老人から大金を巻き上げ続けた詐欺師、アマゾンにやらせの口コミをまん延させている中国の黒幕、北朝鮮で“サイバー戦士”を育てた脱北者、プーチンの懐刀……。取材活動が軌道に乗ると一癖も二癖もある者たちが暗闇から姿を現した。
本書では彼らの生態に迫る。ソフトバンクグループを率いる孫正義の立身出世物語、イノベーションの神様と評された米アップルの創業者スティーブ・ジョブスが駆け抜けた波瀾万丈の人生など、IT業界の華々しいサクセスストーリーがネットの正史だとすれば、これは秘史を紡ぎ出す作業だ。悪は善、嘘はまこと。世間の倫理観が通用しない、あべこべの地下世界に棲む、無名の者たちの懺悔である。
サイバー犯罪による経済損失はついに全世界で年間66兆円近くに達した。いつまでも無垢なままでいるわけにはいかない。
ネット社会の深淵へ、旅は始まる。
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