日本を含めて世界中のアマゾンを束ねる米アマゾン・ドット・コムは、人手と機械を使ってやらせレビューを監視し、不正と判断すれば非公開とする措置を取っています。
王:アマゾンにやらせを検知されないように坂田地区の住人も日々腕を磨いています。例えばやらせレビューを掲載するタイミングです。ある日、突然レビューが増えたらアマゾンに不正を察知され、アカウントを凍結されかねません。そのため初日に10件、2日目に15件というように徐々に投稿するレビューの数を増やしていき、4日目に減らすといったことをやっています。初期の需要が一巡して、いったん販売が落ち着く状況を再現しています。
それと五つ星ばかりが並ぶのも不自然です。通常であれば、一般の購入者が三つ星をつけたり、不良品を手にした購入者が一つ星をつけたりするものですが、いくら待っても低評価がつかないことがあります。その場合、あえて一つ星や三つ星のやらせレビューを依頼することがあります。

口コミ代行業者との分業で嘘を量産
アマゾンの監視をかいくぐるのにも手間がかかりますね。王さんにはストア運営者としての通常業務もあるわけですよね。その傍らでやらせレビューを載せる作業は負担になりませんか。
王:はい。なので、最近は口コミ代行業者を利用することが増えました。私のようなストアの運営者に代わって、やらせに協力してくれるレビュアーを募集、運用する人たちです。商品を販売している国の個人が代行業を営んでいるケースが多いですね。代行手数料は日本の業者であればレビュー1件当たり35元(約560円)程度が相場となります。
ところで大勢の消費者をだましていることについてどう考えていますか?
王:罪悪感ですか? ありません。
日経BPから
『サイバーアンダーグラウンド/ネットの闇に巣喰う人々』
を刊行しました! アマゾン「やらせレビュー」の首謀者も登場!
本書は3年にわたり、追跡した人々の物語だ。ネットの闇に潜み、隙あらば罪なき者を脅し、たぶらかし、カネ、命、平穏を奪わんとする捕食者たちの記録である。
後ろ暗いテーマであるだけに、当然、取材は難航した。それでも張本人を突き止めるまで国内外を訪ね歩き、取材交渉を重ねて面会にこぎ着けた。
青年ハッカーは10代で悪事の限りを尽くし、英国人スパイは要人の殺害をはじめとする数々のサイバー作戦を成功させていた。老人から大金を巻き上げ続けた詐欺師、アマゾンにやらせの口コミをまん延させている中国の黒幕、北朝鮮で“サイバー戦士”を育てた脱北者、プーチンの懐刀……。取材活動が軌道に乗ると一癖も二癖もある者たちが暗闇から姿を現した。
本書では彼らの生態に迫る。ソフトバンクグループを率いる孫正義の立身出世物語、イノベーションの神様と評された米アップルの創業者スティーブ・ジョブスが駆け抜けた波瀾万丈の人生など、IT業界の華々しいサクセスストーリーがネットの正史だとすれば、これは秘史を紡ぎ出す作業だ。悪は善、嘘はまこと。世間の倫理観が通用しない、あべこべの地下世界に棲む、無名の者たちの懺悔である。
サイバー犯罪による経済損失はついに全世界で年間66兆円近くに達した。いつまでも無垢なままでいるわけにはいかない。
ネット社会の深淵へ、旅は始まる。
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