中島さんがSlackの話をされました(関連記事「『生産性が最も低い国』との不名誉なタイトルを返上するには」)。私が社長をしているドワンゴはSlackを積極的に利用している会社の一つです。社員全員がアカウントを持っているだけでなく、極めて活発にコミュニケーションしています。仕事上のコミュニケーションは言うまでもなく、趣味やプライベートなコミュニケーションもSlackを通じて行っているようです。

 先日、「Attuned」というモチベーションサーベイ(仕事に取り組む動機として何の要素を重視しているか、社員の一人ひとりに尋ねる調査)を全社的に実施しました。社員がアンケートに答えるとその人の動機要素が「見える化」できます。社員各人の仕事の志向が分かれば、組織運営に役立つと思ってやってみました。

 すると、社員の中から、自分の調査結果をSlack上に上げて仲間の社員とシェアし、「当たってる」とか「○○を目標に設定すればいいんじゃないか」と議論し始める人が出てきました。本来、調査結果は社員本人と上司しかシェアしないのですが、あえてSlack上に公開してみんなで議論していたわけです。

 Slackは極めて気軽に自分の意見や情報をシェアできます。かつ、トピックごとにスレッドが立てられるので、途中から参加した人も内容をフォローしやすい。社員にとってとても使いやすいようです。

 ドワンゴが設立したネット上の通信制高校「N高等学校」でも、全校生徒にSlackのアカウントを持ってもらい、担任およびクラスメートとのコミュニケーションをSlackベースで行っています。こちらも活発です。

 ドワンゴは新しいテクノロジーに貪欲な文化を持っています。もちろんすべての新しいテクノロジーが成功するわけではありません。実際、数年前に少しはやった「マストドン」というサービスをいちはやく採用して使ってみましたが、あまり浸透しませんでした。

 でも新しいテクノロジーは必ず何かを解決してくれます。開発者は何かを解決したくて、新しいイノベーションを起こすわけですから。少なくともそのポイントが解決されるという便益はあるはずです。それが自分の組織にとって大きな意味を持つのであれば、強制してでも全員に使わせるべきでしょう。

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