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マーケティングは信念を実現するための道具

 しかし企業では、何か根拠がないと、新しい商品やサービスの企画を組織として承認することはありません。そのジレンマをどう突破したらいいのでしょうか。

 それは、開発者、企画者の信念です。

 「これ」が実現されればこんなメリットがある、という確信。この確信は、「これ」を懐疑的に思っている人にとっては開発者の主観にしか聞こえません。そこで、理屈をつけるためにマーケティング理論にのっとった説明を加える。手法には実に様々なものがあり、人の言うことを容易に信じない人を説得するにはうってつけです。しかも、どんなデータを使うかによって、正反対の結論を導くことすらできます。ですから信念のある人ほどマーケティングを学んでおいてください。自分が主観で正しいと思ったことに、(少なくとも外形的には)客観性を付けられます。

 そこまでしてでも企画を通そうとする執念、これが信念です。「自分の企画は絶対に会社のためになる」「社会のためになる」という信念があってこそ理論武装できるのです。

ユーザーのあら探しに耐える信念

 ただし、企画を通すのは単なる出発点です。商品やサービスの企画が了承されてから市場に投入されるまでには時間がかかります。いったん開発にGOサインが出されたなら、そこからは、開発が成功する確率をあらゆる手段を駆使して上げていくことが重要になります。

 ここでも信念が必要になります。ユーザーは、新しいサービスのあら探しが得意です。そして「あら」のない新商品はありません。新商品はあらよりも大きなメリットを持っていなければなりません。そのメリットを信じ切れるかどうかは開発者の信念によります。

 また、ユーザーは使ったこともないものに値段は付けられません。「適正な」価格ポイントを見つけ出すためにも信念が必要です。市場調査の結果に左右されて開発が中止になったり、価格が不当に安く設定されて利益が出なかったり、とはよく聞く話ですね。こうしたケースは、信念がないがゆえにそうなるケースが少なからずあります。

 イノベーティブな商品やサービスが生まれないのは、開発の全工程に責任を持つ、信念を持ったリーダーが存在していないためだと僕は考えています。