何が会社にとって重要なのかを見極める

 拙著『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』に書いた「最初の2割の時間で8割がた作ってしまう」というロケットスタート型の仕事のスタイルも、その頃に身に付いたものです。締め切り間際に頑張っても、決して良いものは作れません。何が会社にとって重要なのかを見極め、スタートダッシュで誰よりも早く目に見える形にしてしまう。身に付けた働き方こそが、イノベーションを起こすには必要なのです。

 私はその後、Windows 95/98と Internet Explorer 3.0/4.0(編集部注:Webブラウザー)のソフトウエア・アーキテクトを務めることになりました。どちらも、そんな仕事の仕方が評価された結果です。

 Windows 95は、前述の「次世代OSプロジェクト」が後に社内で肥大化してしまい、「このままでは世の中に出せない」という危機感を持った私が、Windows 3.1を作っていたチームに直接かけあって、少人数で作らせてもらったものです。私のこの行動を「ずいぶん勝手なやつだ」と批判した人が大勢いました。しかし、最終的にはビル・ゲイツ氏が私の仕事を評価してくれましたし、市場でも大成功を収めました。

 Internet Explorerとの関わりも同じです。Windows 95を出した直後に「これからはインターネットの時代だ」というゲイツ氏のメッセージを受け取った私は、Windowsチームの一員でありながら、Internet Explorerプロジェクトの手伝いを勝手に始めてしまいました。Internet ExplorerとWindowsの統合も、誰にも頼まれていないのに自分で良かれと思って作ったものが、Windows 98の主要な機能として世の中に出たものです。

当事者意識の欠如が問題

 日本の会社には、「無駄なミーティングばかりで、仕事がはかどらない」「今、やっている仕事の意味が分からない」「長時間労働で疲弊している」と悩んでいる人がたくさんいます。そんな時は、一歩下がって「何が会社にとって大切なのか」を考えてみてください。そして、無駄な仕事は排除し、会社にとって本当に必要なことだけに時間が割けるような環境を、自分自身のため、そして、自分の周りの人たちのために作る労力を惜しまないでください。

 日本は、先進国の中でも、労働生産性の低い国です。そして、それがいつまでたっても改善されない理由の1つが、無駄だと思いながらも、それが「昔からのやり方だ」とか「上司から命じられた」という理由だけで深く考えることなく従ってしまう、当事者意識の欠如にあります。常に「最小限の労力で最大の効果を得る」という姿勢で仕事に取り組んでください。

この記事はシリーズ「シンギュラーな技術を生み出せ!~「未来の作り手たち」へ」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。