「自分たちがこの世にいない100年後の予測なんて何の意味もない」。連載を読んできてこう思う人もいるかもしれない。

 だが意味は、ある。経営者と社員が明日のことばかり汲々(きゅうきゅう)と考えて仕事に取り組むよりも、未来に目を向けて業務に向き合った方が会社は間違いなく「楽しい場所」となるからだ。

日本企業が失った「長期視点」

 1990年代以降、日本企業が失ったことの1つに「長期的視点」がある。米国型の株主至上主義が上陸し、93年には訴訟費用の改正で株主代表訴訟が容易になった。2000年代に入ると、全上場企業に四半期決算が義務化された。

 大事なのは、10年先、20年先の未来でなく、次の四半期――。結果として、80年代まで17~18%だった実質GDP(国内総生産)に占める日本企業の国内設備投資比率は、90年代から急落し、2000年代以降は12~13%まで落ち込んだ(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調べ)。それに伴い、国内の設備は間違いなく老いた。多くの企業が未来への展望を諦めて“明日の利益の確保”に躍起になり、マザー工場や基礎研究といった「事業の永続に不可欠な体幹」にカネを流さなくなった証拠である。

 これでは、未来を切り開くビジネスも技術も生まれにくい。反対に、国内外を問わず「本当に強い企業」の中には、驚くほどの長期視点で経営に取り組む会社が少なくない。

仏食品大手のダノンは「次の100年」を強く意識し、成長を狙う(写真:AP/アフロ)
仏食品大手のダノンは「次の100年」を強く意識し、成長を狙う(写真:AP/アフロ)

 例えば、「次の100年」を強く意識して10%以上の営業利益率を確保し続けるのは、創業100周年を迎えた仏食品大手のダノンだ。過去100年で乳牛から乳製品を生産し、世界120カ国・地域に展開するグローバル企業となった同社。次の100年は『動物から植物へ』をスローガンに一層の成長を狙う。25年までには早くも、ヨーグルトやミルクに占める植物由来食品の比率を現在の15%から45%まで引き上げる計画だ。

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