全4305文字

 では100年後の気候はというと、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた報告書によれば、地球の平均気温は最も温暖化が進んだ場合、2.6~4.8度上昇する。

 これに伴って確実に発生するのが海面の上昇だ。地球温暖化が最も深刻化した場合、南極の氷が解けるなどして、海面が今世紀末までに最大1.1メートル上がるという(国連予測)。東京、上海、シンガポール、ムンバイ、ジャカルタ、ロッテルダム、ニューヨーク……。世界の巨大都市の多くがその影響をもろに受ける。

 110億人まで膨れ上がった地球の人口。このうち7割は都市に集中するが、現在の巨大都市の多くは水没に向かう。そんな世界で需要が急増する商品とは何か。

 2119年、赤道直下の太平洋上に円形の人工島がいくつも浮かんでいる。

 各島の中央にそびえ立つタワーは、上空から見るとまるでタンポポのようだが、近づいてみると、その大きさに圧倒される。タワーの高さは1㎞、花のように開いた上部の直径も1㎞。人工島の大きさも直径3㎞と巨大だ。ここは、清水建設が旧世紀に開発した海上都市「GREEN FLOAT」(グリーン・フロート)だ。

 2100年ごろ、20~21世紀に栄えた巨大都市の多くは水没で大ダメージを受けた。が、それを予見した各国政府は2080年、世界中の建設会社や国営企業などとの共同出資で「海上都市公社」(仮)を設立、世界各地でグリーン・フロートの建設を始めた。

 同時に創立されたNGO「海上引っ越し公社」(PCOT、Public Corporation of Ocean Transport、仮称)によって移動が急ピッチで進められ、多くの人類が移り住むことに成功。この新都市のその随所には、清水建設が100年前から研究を続けてきた様々な技術がちりばめられている――。

100年後、人類は海へ向かう?

 100年後にこんな物語を実現するため、清水建設(創業1804年)は今、海上都市の建設を本気で進めている。

 構想を打ち出したのは08年。「人口爆発と海面上昇は、100年後に確実に来る未来。そんな環境で人類に最も必要な建築物は海上都市しかない」。同社海洋開発部の竹内真幸・上席エンジニアはこう話す。

 タンポポ状の形状をしているのは、日照を最大限に活用するためだ。太陽の光が降り注ぐ「花びら」に当たる部分が、3万人が暮らす居住区とオフィスが並ぶ空中都市ゾーンだ。地上700~1000mであれば、気温は地上に比べて4度~6度低い。平均気温が最大4.7度上昇した世界であっても、冷房に頼らず快適な暮らしが維持できる。