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 官公庁に強かった影響もあり、好調な時代を知る関係者は「服飾業界内では頭一つ抜けた存在だった」と語る。最盛期の売上高は1992年9月期の約79億円。創業者で同社会長だった小池俊二氏は大阪商工会議所の副会頭を4期務め、りそな銀行の社外取締役にも就任。「関西経済界の顔」としての役割を担うまでに成長した。

 ただ、バブルが崩壊と人口減少に伴う日本経済の低空飛行が本格的になると、その影響は制服業界にも及んでいく。経費削減の波は企業にも財政難の自治体にも押し寄せ、更新需要が減少。「制服廃止→カジュアル化」の流れも進み、銀行さえ制服廃止に動く時代となった。

奏功しなかった“制服一筋戦略”

 そこでサンリット産業が採った長寿策が、虎屋の「和菓子一筋」ならぬ「制服一筋」を貫くことだった。自社の最大の強みである伝統は、これまで培ってきた制服市場での販路、技術力、ブランド力と判断。企業向けの制服はもっと仕事をしやすく、警察向けの制服はもっと強靭(きょうじん)に、と徹底的に高機能化することで利幅を取り、市場全体が縮小する中でも生き残る戦略を選択したのだ(老舗の法則②-2)。

 しかし、制服市場の縮小は想定以上の速度で進み、2018年9月期の売上高は最盛期の8分の1以下の9億円にまで激減。九州2工場の投資負担などもかさみ、19年秋、自己破産した。負債総額は約32億円だった。

 生き残ってきた虎屋と、倒産した花園万頭やサンリット産業。いずれも「伝統を守り磨く戦略」を選びながら、明暗は真っ二つに分かれたというわけだ。

 同じような事例は、まだまだある。今年2月に破産した横浜市の履物製造「マルチウ産業」もその1つだ。1968年創業の同社の主力は、アニメや映画のキャラクターで彩った子供向けのサンダルやビーチサンダル。サンリオなどとライセンス契約を結び、成長期にあった2002年3月期の売上高は約54億円。直近の4倍以上あった。

「制服一筋」「サンダル一筋」というビジネスモデルは結局、奏功しなかった(写真:PIXTA)

 当然のことながら、そのビジネスモデルは少子化が始まると行き詰まりに近づいていく。ここで同社が選択した戦略もやはり、「伝統を守り磨き抜く」だった。

 業界で同社が最も競争力を発揮できるのはキャラクタービジネス。そこで2015年、当時のブームだったアニメ「妖怪ウォッチ」のキャラクターをあしらったサンダルを大量生産・販売した。その結果、15年度の売上高は前年度比4割増の23億円にまで増えたが、翌年は14億円へ再び減少。昨夏、民事再生法の適用を申請したが、スポンサーが現れず。破産の道を余儀なくされた。