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 ホンダは2021年に英国・スウィンドンにある工場を閉鎖する。低迷が続く欧州販売などと並ぶ理由の1つが「電動化への対応」だ。製造業の街として栄えたスウィンドンも「CASE」の波には太刀打ちはできなかった。その地を歩いて見えてきたのは、産業構造の転換に戸惑い、翻弄される都市のあり様だ。それは、自動車を基幹産業とする日本にとっても対岸の火事ではない。

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 「工場ではみんな次の仕事について話をするよ。でも、大丈夫さ。私は、クリーニング屋でもやろうかと思うよ」。インドのゴアからの移民というゲリィさん(44)は現在、英国南部のスウィンドンにあるホンダ工場のバックヤード部門で働いている。ゲリィさんが仕事を終えたのは夕方の17時。といっても辺りは真っ暗で、寒い風が吹き付ける。「先行きの不安はあるが、そればかり言っても仕方ないから」。ゲリィさんはそう言い残して、街を走る2階建ての町営バスに飛び乗った。

21年にも閉鎖される英スィンドン工場。3500人が働くほか周辺には関連企業も多い

 ホンダは2019年2月、欧州で唯一のこのスウィンドン工場を21年にも閉鎖すると発表した。表向きの主な理由は「電動車の生産に向けた対応」で、混乱が続く英国の欧州連合(EU)離脱とは直接関係ないとする。ただ欧州では販売不振が続いており、今後の環境規制の厳格化への対応も余儀なくされる。量と質の両面で工場が競争力を維持することは難しくなっていた。

 スウィンドンはロンドンから鉄道で1時間ほどの距離にある。人口は約18万人。30分ほど車を走らせれば羊が飼われた牧草地が広がり、豊かな自然の広がるコッツウォルズ地方にも近い。ただ、あくまでもスウィンドンは工業都市としての色合いの方が強い。

 南西部最大の港湾都市ブリストルに近く、地の利のよさもあったスウィンドンは1900年代中ごろから鉄道の町として発展し、多くの労働者やエンジニアが集まった。だが、80年代半ばから徐々に鉄道産業は衰退し、代わりにスウィンドンの主役となったのが自動車産業、そしてホンダだ。ホンダは85年にスウィンドンに工場を作り、現在はGSユアサなど日系企業も含めた関連サプライヤー、自動車では独BMWなどが工場を有する。