「貯蓄から投資へ」は、国民の資産所得倍増を目指す政府のスローガンだ。岸田文雄政権ではその実現に向けて、少額投資非課税制度(NISA)の抜本的拡充や金融教育の普及、金融事業者による顧客本位の業務運営という3つの柱を掲げる。今回は「貯蓄から投資へ」の3つの柱それぞれに関連する内容を過去記事から振り返ってみる。

国民の資産所得倍増を目指す「貯蓄から投資へ」

 「貯蓄から投資へ」とは、国民の資産所得倍増を目的とする政府のスローガンだ。歴代政権も同様のスローガンをしばしば掲げてきたが、「新しい資本主義」を旗印とする岸田政権は「3つの柱」のもとで「貯蓄から投資へ」を体現する資産所得倍増計画に取り組んでいる。

 その3つとは、①NISAの抜本的拡充、②金融教育の普及、③金融事業者による顧客本位の業務運営を指す。特に①については、日本の家計金融資産約2000兆円のうち「現預金」が50%を超えていることを問題視し、株式、投資信託の割合を増やすことで「持続的な企業価値向上」と、「個人の資産所得倍増」という好循環をつくり出すことを目的とする。

 この記事では「貯蓄から投資へ」の3つの柱について、関連する過去記事をピックアップしていく。

岸田政権の「資産所得倍増プラン」 2000兆円活用、円安加速の懸念

 政府が発表した「資産所得倍増プラン」によると、家計金融資産を貯蓄から投資に回すためにNISAやiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の拡充・改革を目指すという。これが実現すれば約2000兆円と言われる個人資産が株式市場に向かうことになり、企業の投資意欲が高まり経済成長につながるイノベーションも起こりやすくなると期待されている。

NISA、1000万口座突破「フツーの個人」が株主に

 そもそもNISAとは、株や投信への投資の利益に対する約2割の課税を免除することで「普通の個人」が投資を行いやすくする制度だ。特に投資未経験者や20~40代の若年層による投資を促すことで、これまで貯蓄に回されてきた個人資産の有効活用と、その結果としての「資産所得倍増」を目指している。

棚上げの「金融所得課税強化」案が再浮上 NISA拡充と抱き合わせで

 これまで「一般NISA」「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3つに分かれていたNISA。このNISAを「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」にするため、政府は2023年度税制改正要望で、NISAの大幅拡充を打ち出している。具体的な内容は「制度の恒久化や非課税保有期間の無期限化」「つみたてNISAをベースにした制度への一本化」などだ。

高校の金融教育必修化、「生きる力」高めるきっかけに

 岸田政権が掲げる資産所得倍増計画の2本目の柱は金融教育だ。NISAのような制度を有効活用するには、金融に対する十分なリテラシーを身に付ける必要がある。その一環として、22年度から高校の家庭科の授業で「投資や資産形成にまで踏み込んだ金融経済教育」が必修となった。

脱・リテラシー貧国へ 金融経済教育、銀行・証券の新たな使命

 金融教育を担うのは教育機関ばかりではない。野村ホールディングス(HD)を筆頭に、証券会社や銀行なども子どもを対象とした講座開催や小中学校向けの出張授業などに取り組んでいる。とはいえ日本人の金融リテラシーは、米国などと比べて大きく遅れている。

「貯蓄から投資へ」を実現するため、顧客本位迫る

 「貯蓄から投資へ」のシフトを実現するには、制度の拡充や国民の金融リテラシー向上だけでなく、金融事業者による取り組み強化も必要だ。金融庁は銀行や証券会社などに対して「7つの基本原則」を打ち出し、顧客の利益を第一に考える営業姿勢を強く求めている。

最後に

 岸田政権は「貯蓄から投資へ」というスローガンの実現に向けて、国の制度(NISAの抜本的拡充)、国民の理解(金融教育)、金融事業者の努力(顧客本位の業務運営)という3つの取り組みに力を入れている。歴代政権の方針を引き継ぎ、「貯蓄から投資へ」による国民の資産所得所得倍増を達成することができるのか、政策実現への動きに注目していきたい。

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