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契約期間の満了にともない、契約社員を事実上解雇する「雇い止め」。法律上はグレーな取り扱いだが、リーマン・ショックや新型コロナの感染拡大といった非常事態では決して珍しくない光景だ。ここでは雇い止めの事例や問題点について、過去記事から振り返る。

雇い止めとは?

 「雇い止め」とは、有期契約の契約社員の契約期間が切れた際に契約を更新せず、事実上の解雇を行うことをいう。「契約期間満了=契約終了」となることは必ずしも違法ではないが、正社員と同じような働きをしている契約社員や、数度にわたり契約更新してきた契約社員の雇い止めは法律上認められない場合がある。

 とはいえ景気が極端に悪化した際に、そのしわ寄せが契約社員など非正規社員に向かうことは珍しくない。世界中がリーマン・ショックに揺れた2008年、そして新型コロナの感染が拡大している2020年はその最たる例だろう。

 今回の記事では雇い止めに関連する過去のトピックから、契約社員たちを取り巻く厳しい現状とその影響、逆に不景気を逆手にとって評価を上げている企業の事例を紹介していく。

進む雇用の多様化、派遣労働者に新たな“区分”

 リーマン・ショックが世界中を襲った2008年、日本でも派遣労働者の契約打ち切り、「派遣切り」が社会問題となった。その背景には「日本からの輸出数量は、ショック発生から半年で約4割も急落した」というほどの不景気がある。

 2008年当時140万人いたと言われる派遣労働者は、翌年2009年には108万人、2012年には90万人にまで落ち込んだ。こうした混乱の結果として発生したのが、「正社員と派遣社員という従来型の仕組み」の崩壊だ。短時間のパートタイム労働や女性・高齢者・外国人の活用など、労働環境そのものが多様化しつつあるという。

シャープ「3000人切り」の深層 幻想の優しい国

 「単純労働では受け入れない」という建前を掲げながらも、現実には外国人労働者に依存している日本経済。とはいえその実態は、外国人労働者を「雇用の調整弁」として使い捨てる悪しき慣習だ。特に製造業の現場などに、こうした「雇用のゆがみ」が見られている。

 こうした事態を受けて、政府も新たな在留資格を設けるなどの施策を提示するものの、外国人を受け入れ支援する国内の体制は不十分だ。こうした日本の労働環境は、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する投資や「エシカル消費」の分野で、日本企業にとって大きなリスクと考えられている。

外国人労働者から“切られる”日本

 新型コロナの感染拡大で急速に悪化する日本経済。一部の業界では「深刻な人手不足」が顕在化しているものの、それでも(すでに国内に在留している)外国人労働者の活用は進んでいない。政府は「特定技能の在留資格を持つ人を5年で最大34万人余りにする」計画だが、2020年6月末時点の在留資格者は約6000人程度だという。

 外国人労働者の雇用が進まない背景にあるのは、彼らに対する差別的な待遇や、外国人労働者を「雇用の調整弁」として、簡単に雇い止めする企業の姿勢だ。こうした態度は日本に対する「悪評」となり、すでに一部の国では日本を敬遠する動きもあるという。

新型コロナで解雇、倒産……蒸発する仕事

 とはいえ、新型コロナの感染拡大は日本人労働者にも深刻な影響を与えている。IMFが「世界恐慌以来最悪の状況」と呼ぶほどの世界的な不景気を受け、自動車メーカーをはじめとする輸出産業は大きなダメージを受けた。その結果急増しているのが、期間労働者たちの「派遣切り」だ。

 ほかにもサービス業、外食産業などでも営業自粛や廃業が増え、職を失う労働者が増えると予想されている。コロナ以前は約2.5%だった失業率が「21年第1四半期までに4%程度まで上昇する可能性がある」との予想もあり、今後の日本経済は予断を許さない状況だ。

「失業率2割」の足音 世界で格差を再生産

 新型コロナの世界的な拡大により、深刻な不況は世界共通の光景となっている。国際労働機関(ILO)が6月に発表したデータでは世界の4~6月期の就労時間が2019年10~12月期に比べ14%減ったという。

 「雇い止め」などにより職を失った人も多い。日本では5月の完全失業率が2.9%となり、完全失業者数は前月より9万人多い198万人となった。ユーロ圏でも、イギリス、イタリア、オランダ、スペインといった国々で危機が叫ばれている。アメリカも同様だ。

今どき「廃業百景」 延命意欲砕く環境激変

 新型コロナは影響は、企業の存続をも危うくしている。これまでインバウンドに頼ってきた観光産業、特に地方のホテルの中には外国人観光客の「98.7%減」という事態を受けて、廃業を決断するところも出てきた。

 ほかにも創業135年の伝統ある食品メーカー、長年の職人技を持つ大工など、廃業や事業縮小に追いやられている事業者は少なくない。

コロナ禍で「評価」を上げた企業

 そのような中で、新型コロナによるピンチを逆手にとるような経営方針で「評価を上げている」企業もあるという。

 そのひとつが新潟の三幸製菓だ。リスクを承知で80人を新たに雇用、しかもそのうち50〜60人は正社員だという。地域の経済が大きく落ち込む中で、雇い止めとは真逆の「雇用を増やす」という戦略だ。

 ほかにも、正社員、パート・アルバイトの全職種を対象に総額3億円の「感謝金」を配ったライフコーポレーション(小売業)、1人の人員整理も行わずに「ペヤング」の製造を続けるまるか食品(食品製造業)など、コロナ危機を労働者に転嫁させない企業の取り組みは世間の注目を集めている。

最後に

 リーマン・ショック、新型コロナなど、深刻な経済危機を背景に行われてきた「派遣切り」。不況のしわ寄せが契約社員など立場の弱い労働者に向かう傾向は、いまもなお続いている。

 新型コロナの終息時期は依然として見通せないものの、厳しい環境の中で労働者を守ろうとする企業もある。これからの日本経済や、日本企業の取り組みに要注目だ。

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