多くの課題を抱える日本の公的年金制度。その課題を解消し、制度への国民の信頼を取り戻そうとするのが年金改革だ。政府はこれまで数度にわたり年金改革を実施してきたが、課題解消には至っていない。今回は年金改革のあゆみと課題について取り上げた過去記事をピックアップする。

年金制度の課題解消を目指す「年金改革」

 年金改革とは、公的年金制度が抱える課題や問題を解消し、国民がより安心できる制度に変えることを指す。現在の年金制度が抱える課題の中で深刻なのは、予想を超えた少子高齢化により、年金受給者と制度の担い手世代のバランスが崩れていること。若い世代の負担が増える一方、財源が確保されていないことも問題で、年金制度への信頼を損なう原因となっている。

 2000年には年金支給額の引き下げと保険料の据え置きを重視し、2004年には段階的な保険料の引き上げと国庫負担の拡大などを決定した。とはいえ成果がもたらされたとは言い難い。

 この記事では年金改革をめぐる近年の話題について、過去の記事から振り返っていく。

日経ビジネスが見た50年 遅れ続けた年金改革

 少子高齢化を受けて実施された2000年の年金改革。支給額の減額などが主な内容だが、年金制度の持続性を目指すために行われたのが2004年の年金改革だ。

 この改革では(1)マクロ経済スライドの導入、(2)保険料の段階的な引き上げ、(3)国庫負担費率を3分の1から2分の1へ引き上げることなどが主な柱とされ、当時の厚労相も「100年安心の年金制度」と自賛する内容だった。

今が山場の年金、「百年安心」は本当か

 2016年11月、国会で国民年金法改正案の審議が始まった。注目されたのは、年金給付を抑えるルールが盛り込まれたこと。「マクロ経済スライドの強化」と「受給資格期間の短縮」が柱で、世代間の公平性を確保するとともに、将来年金を受け取れない人を減らすセーフティーネット(安全網)の拡充という狙いがあった。

自己責任の時代

 公的年金への期待がしぼむ中、老後の資金を自分で用意する個人型確定拠出年金に注目が集まる。2017年1月に始まった「イデコ(iDeCo)」は、会社員や公務員、主婦といった個人の年金積み立てを可能にするもの。積立時に受けられる所得控除、投資信託による売却益の非課税扱い、運用利益を一時金として受け取るかどうか選択できるなど、さまざまなメリットがある。

年金崩壊カウントダウン

 政府が「100年後も安心」と自賛する現在の年金制度。だが日本総合研究所主席研究員の西沢和彦氏と、創価大学准教授の中田大悟氏の計算によると「100年先はおろか、50年も持たない」という。物価上昇率や賃金上昇率、積立金の運用利回りなど、政府の試算が楽観的な前提に基づいているからだ。

年金減額は「小幅」で済むのか

 2021年1月、厚生労働省が公的年金の受給額を前年度比で0.1%下げると公表した。厚生年金では夫婦2人のモデル世帯で前年度比月額228円減、国民年金は満額受給の人で66円減といずれも小幅だが、高齢者からは「これからも年金は下がるのか」と不安の声が上がる。実際、基礎年金は現在から半減するだろうという声もあり、見通しは不透明だ。

年金改革はプーチン氏の鬼門か

 最後に海外の年金制度をめぐる話題を紹介する。日本と同様に少子高齢化が進むロシアでは、プーチン大統領が年金改革について国民に呼びかけた。年金の受給開始年齢の引き上げが骨子だが、これに国民が猛反発。大統領の支持率が60%台に落ち込む事態を招いた。ロシアは年金制度改革への取り組みが遅れているとされるだけに、今後の改革をスムーズに進められるかに注目が集まる。

最後に

 開始から約60年が経過した日本の年金制度は、さまざまな課題を抱える。高齢者からは不安の声、若者世代からは不満の声が聞かれる。政府は2004年の改革で「100年安心の制度になった」と自信を見せる。だがその見立てには異論も多く、今後もさらなる年金改革が求められる。

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