組織を健全化することで、社員の質や能力を向上させる「組織開発」。市場や経済構造が変化する中で企業が生き残るために必要なプロセスだ。今回は組織開発に関する話題や事例を扱った過去の記事をピックアップして紹介していく。

企業組織を健全化する「組織開発」

 「組織開発」とは、企業組織で働く人たちが自らの組織を改善していくプロセスのことを指す。組織開発の目的は組織を健全化し、社員一人ひとりのやる気や満足度、他の社員とのコミュニケーションやリーダーシップなどを向上させることだ。同じような目的で行われるプロセスに「人材開発」があるが、人材開発が社員個人に働きかけるのに対し、組織開発は社員同士や社員と組織との関係性に働きかける点が異なる。

 組織開発が求められるのは企業をとりまく環境の変化だ。消費者の嗜好やトレンドの変化だけでなく、近年では地球温暖化や新型コロナウイルス禍の影響などによって世界規模で市場や経済構造が変化している。企業が生き残りを図るには、組織開発を通して健全な変化を遂げることが必要だ。

 この記事では組織開発の必要性と事例について、過去の記事から振り返っていく。

1人のリーダーに頼る限界

 人材開発・組織開発の分野で世界最大の非営利団体・ASTD(米国人材開発機構)。そのASTDが2012年に開催した大会で日本企業の組織力の低さが話題になった。社員のエンゲージメント(自身の仕事と組織に誇りと満足感を持ち、責任感を持って現在の仕事を続け、組織を支持すること)指数が31%と調査対象国中最低だった。このような社員のエンゲージメントの低さとそれに影響を与える組織のリーダーシップ力の低さが、日本企業が低迷する理由の1つだという。

縦割りは若手が壊す

 大手ガラスメーカーのAGCは、組織開発によって「縦割り組織」から脱却した企業だ。同社では2011年に立ち上げた「事業開拓部」が新規事業を既存組織に組み込む役割を担い、先端技術や商品開発などを手掛ける研究所で育った新規ビジネスを引き取る。

 さらにそれぞれの組織の若手同士が積極的に交流する場を設けることで、組織の縦割り構造を破壊した。若手同士が交流できることで、部署を横断して意見を聞けたり、あらかじめ実験場所を借りて必要なデータを取得できたりする。若手の中には「4足のわらじ」を履く社員もいる。こうした「変革の当事者」が増えることで、主力事業で稼いだキャッシュを生かし、新規事業を育てる「両利き経営」を実践することにつながっている。

マスク氏がいない日本の宇宙ベンチャー、目指す「グレートニッチ」

 市場のチャンスが開けているにもかかわらず、組織開発の遅れが足を引っ張りかねないという危機感を抱いているのが宇宙航空研究開発機構(JAXA)だ。現在、世界の宇宙ビジネスでは「官から民」と「技術変革」という2つのゲームチェンジが起きている。このため海外ではイーロン・マスク氏の米スペースX社だけでなく中小規模の宇宙ベンチャーが注目を浴びている。

 だが日本の宇宙機器産業は、JAXAや政府の発注を、大企業が受けてサプライヤーに行き渡らせる「ピラミッド構造」だ。旧態依然とした組織、開発スタイルでは日本の産業のためにならず、「新しい発想や技術を持つ民間企業と一緒に取り組まなければ、世の中の流れに追いつけなくなる」とJAXAの危機感は強い。

売り上げ急増も社員のモチベは急低下、社風の「掘り起こし」が解に

 食品開発・製造のデルタインターナショナル(東京・品川)は、組織開発で会社の危機に立ち向かっている。創業者の強烈なトップダウン型経営で売り上げが急増した同社だが、創業者が経営の一線から退いた際に社員が「空っぽ」になってしまった。社員が仕事の意義を見失ったことで、事業の伸びも鈍化したという。そこで同社は外部の人事アドバイザーを利用し、制度の根底にある企業理念を練り直すことを決めた。

最後に

 従来のような「強力なリーダーシップ」だけでは、企業が社会や市場の変化についていくことはできない。企業の生き残りや成長には、組織開発による会社組織の健全化も必要だ。日本の会社組織は、依然として「縦割り」や「ピラミッド型」が多いとされる。世界から後れをとらない企業に生まれ変わるため、組織開発に取り組む企業が増えることが必要となっている。

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