正社員、派遣社員、パートなど、いかなる雇用形態においても理不尽な目に遭うことは避けられない。職場だけでなく、家族から理不尽なことを言われることもある。人との付き合いだけではなく、理不尽な制度もある。本誌過去記事をだどりつつ、理不尽な状況との付き合い方を見ていこう。

理不尽とは

 「理不尽」とは物事の筋道が通らないこと。道理にあわないことやそのさまを指す。

 SNSなどでは、日々の理不尽な出来事についての多くの声が挙がっている。その内容はジェンダー、労働問題、社会制度など多種多様である。理不尽な状況をどのように考え、そしてどのように対処していくべきだろうか。

上司の理不尽な指摘はあなたへの高評価の証かも?

 会社における理不尽の中で、「言われたとおりにしたのに叱責を受ける」が挙げられる。しかしファミリーマートの元相談役、上田準二氏は「理不尽は評価の証」とも考えられると言う。

 上田氏が伊藤忠商事に入社してすぐの頃、課長の指示で動いたものの、部長からそれについて詰問をされることがあったそうだ。部長が異動になるまでの3年間、それは続いたが、意外なことにこの部長は上田氏を評価していたらしい。上流の役職にある部長にとって、役職がない社員に直接目を向けるのは難しい。チームリーダーや課長など、直下の部下に目を向けた方が簡単だ。

 だが直下の部下でない人を叱責している場合、期待をかけていると考えることもできるという。理不尽な仕打ちを受けても捉え方を変えて、「この人は私に期待をかけているから、わざわざ理不尽なことを言うために時間を割いているんだな」と考えることもできる。

米国で受けた理不尽が耐える力に

 海外出張はもちろん、留学・旅行で米国に行くことになったら、ある程度の理不尽を覚悟しておいた方がよいのかもしれない。経営コンサルタントの岡俊子氏が米国に留学したとき、語学の壁による差別を受けたという。お店で注文を後回しにされたり、注文をわざと聞き取れなかったふりをされたりするなど、ずいぶんつらい思いをしたそうだ。

 岡氏は、日本で社会人になってからずっと差別される側にいたのであまり大きなショックは感じなかったというが、差別のない世の中はないことを、しみじみと実感したそうだ。そこで思ったのは、世の中を恨んでいる場合じゃない、いかに心地よく生きていくかを考えた方が生産的ということ。岡氏は米国ならではの理不尽さを通じて、耐える精神力が培われたようです。

理不尽に増えていく税負担

 自分が支払っている税金について、すべてを把握できている人は、ほとんどいないだろう。消費税、所得税、住民税など分かりやすいものもあれば、見えづらい負担もある。例えば「社会保障と税の一体改革」により、いつの間にか増えた税負担もあるのだ。

 パート・アルバイトといった短時間労働者は、以前まで厚生年金や社会保険の加入義務はなかった。しかし17年の加入条件の拡大により、厚生年金や社会保険の保険料を払うことになった人もいるはずだ。労働者本人だけでなく、企業もその半分を負担しなければならない。

 健康保険でも負担は増えている。健保組合や共済組合などは、後期高齢者のための資金負担が増え、組合を解散したところも出てきた。社会保障維持のための場当たり的制度改正が、個人だけでなく、企業や団体に厳しい負担増をもたらしているのだ。

理不尽な見解は国の借金1000兆円超えのせい?

 17年4月、ヒット商品、第3のビール「極ゼロ」を発売していたサッポロビールは、国税当局の理不尽な要求によって納税した115億円の返還を求めた訴訟を起こした。同社が極ゼロを発売後、極ゼロが第3のビールに該当しないと国税当局が指摘したのがことの発端だった(裁判では1審、2審ともサッポロビールの訴えは棄却され、同社は最高裁に上告している)。

 税務訴訟に詳しいマリタックス法律事務所の山下清兵衛弁護士は、「ビール業界に限らず他の産業でも、当局の理不尽な要求が増えている印象が強い」と話す。その理由について「国の借金が1000兆円を超え、財政が本格的に逼迫してきたことが大きい」とする。

 理不尽な見解で企業を追い詰める当局は税務署だけではない。労働基準監督署もその一つだ。17年、神奈川労働局が、三菱電機と労務担当社員1人を労働基準法違反の疑いで横浜地検に書類送検した件がその例。横浜地検が下した判断は、「三菱電機、担当社員共に嫌疑不十分で不起訴」だった。政府主導による残業撲滅を多少強引にでも推し進めようとする当局の勇み足だったという声が多い。

 法の順守は経営の基本。しかし理不尽な見解ばかりを押し付けられては、経営は成り立たない。

理不尽を受け入れ成長の機会に

 WBAミドル級王者である村田諒太は、17年5月のフランスのアッサン・エンダムとのタイトルマッチで理不尽な判定負けを喫する。村田自身も驚いたが、WBA会長がその後、エンダム有利の採点をしたジャッジを処分したことからも、この判定がいかに不可解だったかが分かるだろう。

 しかし、村田は試合後、帰国の途に就くエンダムと会い、「判定は僕らの問題ではない。素晴らしい経験をありがとう。昨日は敵だったけど、今日は友だ」と語った。村田がすごいのは、どんな理不尽な環境に置かれても受ける仕打ちをすべて自分を成長させる機会に変えてしまうことだろう。

最後に…

 どんな立場であっても、なかなか理不尽は避けられない。サラリーマンであれば上司からの理不尽、個人事業主であれば顧客からの理不尽、プライベートでも色々な理不尽に出くわすことがある。経営者になったとしても、国税当局が理不尽な要求をしてくる可能性がある。理不尽を目の前にしても動じず、それを糧にする力が求められている。

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