リーダーとはその名の通り、先頭に立ち組織をけん引していく存在である。企業においてリーダーシップのとれる人材は、非常に重宝されている。しかし優れたリーダーシップは決して生まれつきのものではなく、後天的に身につけることが可能なスキルだ。だからこそ世間では、リーダーシップに関する自己啓発本やセミナーが絶えない。今回は過去記事を辿り、優れたリーダーに求められる素質や、優れたリーダーへの成り方について理解を深めていこう。

優れたリーダーとは

 リーダーとは、常に優れた実績を求められる難しい立場にある。それは上層部からは売り上げに関する優れた実績はもちろん、メンバー・部下からの優れたマネジメントの実績も含まれる。

 「名選手、名将にあらず」という言葉の通り、プレーヤーとして優秀だからといって、必ずしも優れたリーダーになるとは限らないのだ。もちろんリーダーとしての説得力のひとつとして、プレーヤーとして優秀であるに越したことはない。

 だが、むしろプレーヤーとしての実績が大きくなくとも、リーダーとしてチームをけん引して、大きな利益・実績をもたらす人材さえいるだろう。では大きな利益・実績をもたらすリーダーとは、どのように仕事をしていくのだろうか。

リーダーは「言うことを聞かせる」ことが適切とは限らない

 スーパーホテルの会長であり、25歳から実家の繊維問屋の経営をする山本梁介氏は、このように語る。

 25歳で父を亡くすまで、商社の衣料品を担当していた山本氏は、実家の経営状況を杜撰(ずさん)だと評価した。商社でヒット商品を生み出した名プレーヤーの目には、直すべき点が散見したようだ。

 その感覚に従い、厳しい計数管理と効率的な働き方を社員に求めた。しかし結果として軌道に乗るどころか、社員に見放され、工場を売却することになってしまったのだ。このときの山本氏は、自分のことを「言うことを聞かせることがリーダーシップだと履き違えた、傲慢な状態だった」と語る。自らを翻って姿勢を改め、社員の立場になって傾聴を心がけた結果、会社の業績は伸びていったようだ。

仕組みづくりこそリーダーの仕事

 漫画「ドラゴン桜」でもおなじみであり、近年ではビジネスパーソン向けに「Vtuber」をしている人気キャラ、桜木建二はリーダーの仕事についてこう解説する。

 発端は「マネジメントに興味はないし、育成もできてない」というリーダーが、はたしてどうすべきかという悩み相談だ。

 これに対して桜木建二は、「リーダーはスーパーマンではなくていい。リーダーが何もしないで良い状態こそ、マネジメントの理想像」と語った。育成というと1から10まですべてを教えなければいけない、といった苦労を想像するが、そんなこともないようだ。

 リーダーは情報を共有し、メンバー自身が考えられるようにすべきだという。そこでリーダーは、一緒に課題と問題を考えていくべきだという。たしかにすべてを教えていては、それはリーダーというよりもマニュアルといえるだろう。マニュアルがなくとも問題解決が図れる環境こそ、理想的な状況なのかもしれない。

 それではチームではなく、リーダー個人が持つ課題についても見ていこう。

リーダーは答えのない問題を解く存在

 日経ビジネスのフォーラムにて、富士フイルムHDの古森会長、LIXILグループの藤森社長、ファミリーマートの中山社長が鼎談(ていだん)した。3人は「リーダーの条件は変革を促すもの」と語った。この大物3人の名前があると、社会に大きな影響を与える変革と考えがちだが、意外と変革は身近に存在する。新しくリーダーに就任した際など、まさにチームへの変革を求められていると考えてよいだろう。

 チームにおける変革とは、まさに売り上げや環境のことと考えてよいだろう。そしてそれをより高いところへ持っていくことこそ、リーダーが促すべき変革だ。そのためにリーダーはビジョンを明確にし、メンバーとの共感を生み、コミットを得る必要がある。そのためのプロセスこそ、リーダーに求められている仕事。

 明確な答えが存在しない、解くべき問題なのだろう。リーダーはこのようにけん引する存在でありながら、組織とともにある存在でなければならない。

リーダーは苦言を呈するメンバーを重宝すべき

 リーダーの方針・業務指示に対して苦言を呈するメンバーは、リーダー個人としては非常に厄介な存在といえるだろう。しかしライフネット生命の会長であり、慶應ビジネススクールで教べんをとった出口治明氏は、そんなメンバーこそ重宝すべきだと語った。

 出口氏はこのとき、唐の時代に編さんされた太宗の言行録「貞観政要」を参考にした。リーダーが持つべき、3つの鏡の話だ。いつも自分の顔を確かめるための鏡と、学びある歴史という鏡、そして周囲の人間という鏡である。

 周囲の人間として、間違いの指摘や苦言を呈してくれる人間を、身近に置くべきだというのだ。しかし自分を悪く言う人間を身近に置くのは、非常に難しいことだろう。リーダーに抜てきされる人間とはいえ、自分の耳にしたくない言葉のひとつやふたつはある。

 しかし周囲からしてみると、誰しもリーダーにそんな態度はとりたくない。評価する立場のリーダーからは、気に入られたいものだ。んな中で苦言を呈してくれる人材は、まさに常に確認しておくべき鏡ともいえる。リーダーの周囲、そしてリーダー自身がこのように本音をぶつけあえば、チームの信頼関係が深まることが期待できる。

信頼を得るリーダーは本音をさらけ出す

 元早稲田大学ラグビー蹴球部監督であり、株式会社チームボックスの代表である中竹竜二氏は、このように語った。メンバーに対するヒアリング・面談によって信頼関係を築くこともできるが、それと同じようにメンバーに対して「してほしいこと」を本音でぶつけるのだという。

 たしかにヒアリングをするだけでは、リーダーが聞きたいと思っているであろうことばかり話して、メンバーの本音が引き出せているとは限らない。中竹氏はリーダー自身の本音をさらけ出すことによって、「必要とされている」と意識させられるのだという。

 相手に本音をさらけ出してほしいのであれば、まずはこちらが本音をさらけ出す必要があるといえば、納得できるだろう。このようにチーム全体で「したいこと」「思っていること」「できないこと」をさらけ出しあえば、健全な信頼関係が築けるのかもしれない。

 このようにリーダーとしてあるべき姿は多数あるが、いずれも意識せねばできないことばかりだ。つまり、リーダーは育てるべくして育てなければならないのである。

リーダーは育てなければ生まれない

 四谷大塚やアイエスエスなどをグループに持つ、イトマンスイミングスクール代表取締役の永瀬昭幸氏は、このように語る。「リーダーを育てる意識なくして、偶然(優秀なリーダーが)出てくるのを待つのは難しい」リーダーは育てなければ、生まれ得ないというのだ。

 確かに日本では独裁者を出さないために、かなり民主的な教育をしている。それが原因なのか「リーダーを育てる」という概念に乏しいのだ。永瀬氏はリーダーシップとは、目的を達成するために断固としてやり抜く精神力や覚悟を指すという。リーダーに求められる要素はさまざまなものがあるが、目標達成という大前提がある以上、非常に重要な要素と言えるだろう。

 実際永瀬氏の東進ハイスクールでは、リーダー教育の一環としてOBが後輩の指導をする「担任助手制度」があるという。実際にリーダーとなってみなければ、リーダーは育たないという永瀬氏らしい方針だ。

 だがリーダーの理想像が見えていても、実際に理想的なリーダーになるためには、多大な勉強を要する。ときにビジネスの世界を超えて、リーダーへの理解を深める必要があるだろう。

リーダーが意識すべき「無常の精神」

 無常とは、仏教の用語で「何物も常に変わり続け、そのままの状態で有り続けることはない」という教えだ。浄土真宗本願寺派総長であり武蔵野大学、龍谷大学の理事長を務める石上智康は、リーダーは「無常の精神」を持つべきであると語る。実際ビジネスの世界において、現状維持をしていればほぼ100%、業績といった数値が下がっていくだろう。ビジネスこそ、無常そのものだ。

 しかし多くのビジネスパーソンは、そんな変化に追いつこう、変化を巻き起こそうと必死に対応していく。もちろんそれは、健全な競争社会の一環と言えるだろう。だが変化が起こることに対して、毎回もがき苦しむ必要はない。それは広いビジネスの世界においても言えるし、チーム内の話でもある。

 昨日まで予定通りだった進捗が、メンバー1人の病欠によって滞ることがある。ただこんなことに毎回悩んでいては、リーダーとして身が持たないだろう。状態は常に変化し続けるということを意識するのは、健全なリーダーシップの発揮に必要な意識といえるかもしれない。

最後に

 一口にリーダーといっても、さまざまな形のリーダーがいるだろう。何百人もの社員をけん引しなければいけない経営者という形のリーダーもいれば、2-3人のチームを率いるリーダーもいる。しかしいずれの場合であっても、あるべきリーダー像は大きく変わらない。そしてリーダーリップは必ずしも天性の才ではなく、勉強することで身につけることも可能なのだ。

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