移民政策は採らないものの、外国人労働者の増加は止まらない。深刻な人手不足は経済の底上げを阻害しているが、外国人労働者の受け入れには反発の声が多い。財政的問題を解決しつつ、外国人労働者の受け入れには反対というのは「良いとこ取り」かもしれない。今回は、外国人労働者の受け入れに対する意見と、外国人労働者や留学生を受け入れる現場について解説する。

「なし崩し」で増え続ける外国人労働者

 日本における外国人労働者は、労働市場の変化とともに、さまざまな影響を及ぼす存在となった。外国人労働者受け入れに反対する声はあるものの、いわば「なし崩し」的に外国人労働者が増えているという。ではなぜ、外国人労働者が増えているのだろうか。理由のひとつに深刻な人手不足が挙げられる。

 2018年2月の経済財政諮問会議において、安倍首相は外国人労働者の受け入れ拡大に向けた検討を指示した。圧倒的な人手不足と経済の底上げに外国人労働者を活用しようという狙いである。そして入国管理法における「専門的・技術的分野」の在留資格を拡大する方針がとりまとめられた。ただし国籍取得を前提とした移民ではなく、数年間の在留期間が終了した段階で帰国させることを想定している。

 外国人労働者は2017年10月末時点で前年比18%増加している。大手企業を除いた中小零細企業は依然として人手不足の状況が続いていることから、この傾向は今後も収まるとは考えにくい。では、外国人労働者を景気の底入れに使う方針について、どのような声が上がっているのだろうか。

外国人労働者受け入れ拡大、自民内にも反対の声

 2018年の臨時国会では「外国人技能実習生」の失踪問題が取りあげられた。2017年は7089人と過去最多の数に上り、2018年10月末時点でも4297人と失踪者は後を絶たない。さらに、失踪者の追跡調査が行われていないことも問題だとされている。

 失踪者の多くは、技能実習という辛い労働から逃れ、軽作業などの仕事に就いていると考えられるものの、追跡調査が行われていない以上、失踪者がどこで何をしているのか分からない状況は、不安を呼ぶ大きな問題である。

 そして、外国人労働者受け入れ拡大は「移民政策」につながるのではないかという懸念がある。安倍首相は移民政策をとることはないと発言したものの、与野党ともに移民政策には過敏に反応する。こうした問題は日本だけでなく、英国のEU離脱の理由のひとつは移民や難民の流入であった。以上のように、外国人労働者の受け入れには大きな抵抗があるものの、外国人労働者を受け入れようという意見もある。

「真正面」から外国人労働者を受け入れよう

 2018年の東京23区の成人式では、8人に1人が外国人であった。その理由として、留学生の急増が挙げられる。日本語学校や専門学校、大学が集中している23区内、特に新宿区では新成人の45.7%が外国人であった。こうした傾向は都心部にとどまらず、工場や農業の現場でも「労働力」として外国人を受け入れ、外国人新成人が増えており、なし崩し的な外国人労働者の増加を象徴する。

 2017年末、朝日新聞に掲載されたインタビューによると、外国人技能実習生の対象に「コンビニ店員」を加えたいと、コンビニの業界団体である日本フランチャイズチェーン協会が要望しているという。

 理由としては、あくまでも小売業のノウハウを身に付けてもらおうというものだ。この意見には猛烈な批判が上がったものの、東京都心部のローソンでは、コンビニスタッフの3割が外国人留学生だという現実もある。

 本来留学生には労働する資格はなく、コンビニで働くことは「資格外活動」に当たる。しかしコンビニで働くことを技能実習にすれば、資格外活動ではなくなる。日本フランチャイズチェーン協会は、留学生がコンビニで働くことを資格外活動に当たらない、制限のない活動としたい思惑があるようだ。

増加する外国人労働者 広がる受け入れビジネス

 外国人労働者の受け入れには反発の声が多くあるものの、外国人労働者を現場は必要としているのが現実である。反発の強い中で、外国人労働者を受け入れるビジネスが展開されている。「北海道海鮮市場寿司 とっぴ~」を運営するHIRホールディングスは、関東エリアの1号店で、店内スタッフの大半を外国人留学生から採ることにした。

 同社はオープニングスタッフが集まらないと頭を抱えていたが、彼らを救ったのが「カタコトバイト」だ。これは外国人と外国人労働者を必要とする企業をマッチングさせる求人サイトで、コストが安い点が魅力とされている。

 結果、オープニングスタッフ34人のうち23人が外国人で占められることとなり、中には来日して3カ月にも満たない留学生もいた。外国人留学生の資格外活動や外国人労働者が増えていく一方、このままの状況で良いのか、「なし崩し」的に増えていって良いのか。日本は選択と政策の転換を求められているのかもしれない。

外国人労働者受け入れで 財政問題は解決できるか

 外国労働者の受け入れは、日本の財政問題に帰着する。この議論は以前からあり、さまざまな声が上がっている。労働人口の減少が止まらない上に、少子化問題は日本の労働人口の減少や財政に影を落とす。人口減少が1人当たりの経済的豊かさには影響しないとされるものの、社会保障支出が増え、税収が減ることは大きな問題だ。

 外国人労働者を受け入れる政策を取った場合、税収にどの程度の影響を及ぼすのかを調査した結果がある。調査によれば外国人労働者を受け入れることで税収の増加などは期待できるが、大規模な税収増加には米国規模の労働者受け入れを実施しない限り期待できないという結果だった。

 さらに現在、資本の流動性は高まりつつある。中国の経済的台頭はもとより、日本人労働者の海外流出も問題となり得る。

最後に

 外国人労働者を受け入れることに反発は大きいものの、財政や深刻な人手不足の問題は依然として解決されていない。日本はこれらの問題をどうやって解決するのか。今後の政策を注視する必要があるだろう。

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