ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」や「ヤフオク!」などのサービスで知られるヤフー。同社で社長、会長を務め、2019年に退社し現東京都副知事の宮坂学氏は、社長就任時に「爆速経営」というキーワードを掲げ、ショッピングポイントや簡易決済への参入、異業種企業の買収など積極的な経営拡大を推し進めた。この記事では宮坂氏が社長に就任した2012年以降の、ヤフーの主な動きを振り返る。

攻めの経営で拡大を続けるヤフー

 ヤフーは1996年、米ヤフーとソフトバンクの合弁によって設立された企業だ。当初は国内初となるポータルサイト「Yahoo! JAPAN」の運営が主な業務だったが、他のさまざまなIT企業との合併や子会社化を経てサービスの幅を広げている。その勢いは宮坂氏が社長に就任した2012年以降も衰えるどころかますます加速しており、LINEとの経営統合発表が世間の注目を集めたのも記憶に新しい。

 現在の主力事業はEC事業、会員サービス事業、インターネット上の広告事業などだ。特にインターネット競売の「ヤフオク!」は同社の中核事業のひとつとされている。一方で近年は「ビッグデータの活用」にも力を入れ、新たなイノベーションを模索している。

 それでは過去の記事をもとに、2012年以降のヤフーの動きを見てみよう。

16年間の井上体制刷新、ヤフー、若返りで活性化

 2012年4月、それまでの井上雅博氏に代わって宮坂氏が社長兼CEOに就任し、経営陣全体が刷新されて大幅に若返った。

 ヤフーが経営陣を入れ替えるのは創業以来はじめて。経営スピードのアップを考えての判断で、社員からは「社内は活気づいている」とのコメントも聞かれた。

ヤフー、ポイントで「禁じ手」

 新たな顧客層の獲得を目指すヤフーは、2013年に共通ポイントサービス「ポンタ」との連携を決める。この時点で同社はすでにカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共通ポイント「Tポイント」とも連携していた。競合する2つのポイントサービス陣営に相乗りすることは「禁じ手」ともいえ、業界に大きなインパクトを与えた。

 きっかけはローソンとの提携。ネットによる食品・日用品の宅配サービス「スマートキッチン」の開始にあたり、既存店舗のオーナーたちからの理解を得るためローソンが加盟する「ポンタ」を採用したというわけだ。

ヤフー、ECで「背水の陣」

 就任より1年が過ぎ、2013年3月期の連結決算では6年ぶりの2ケタ成長を実現させた宮坂氏。しかしEC事業は伸び悩み、特に楽天など強力なライバルが存在するショッピング関連事業では前年同月比でマイナスになっていた。

 事態打開の切り札として同社が取り入れた施策は、「Yahoo! ショッピング」「ヤフオク!」出店料の無料化。Yahoo! ショッピングではロイヤルティーも無料にし、ヤフオクでは個人の出品システム利用料も原則無料にするなど「背水の陣」ともいえる策だ。

簡易決済の競争 ヤフー参入で激化

 2014年春、ヤフーは試験サービス中だった簡易決済サービス「Yahoo!ウォレットFastPay」を正式導入した。数行のコードをサイト内に埋め込むだけで決済機能を追加できるサービスで、ウェブペイ・ホールディングス株式会社やベリトランス株式会社、米アマゾン・ドット・コムなどがそれぞれ独自サービスを提供している。ヤフーの参入はこの分野での競争を一層激化させるものだった。

ヤフー通信参入、4つの裏事情

 2014年3月、ヤフーの宮坂氏は通信会社イー・アクセスの買収を発表。社名をワイモバイルに変更し、宮坂氏が社長に就任することも明かされた。背景にあるのは、ドコモの通信網を利用するMVNOの増加だ。ソフトバンクグループとして顧客を囲い込むためにも「ヤフーが手掛ける低価格スマホ会社」という看板が必要だったのだ。

 しかし市場からはヤフーに対し「不可解な点があまりにも多すぎる」という疑問の声も上がっていた。

ヤフー、“爆速破談”の代償

 そのわずか2カ月後、イー・アクセス買収の中止が突如発表された。「自らインフラを手掛けるよりも、ヤフーはサービス、新会社はインフラというそれぞれの強みを生かした協業が望ましい」というのがその理由だ。

 しかし別の理由を指摘する声もある。ひとつは株主や投資家からの想像以上の反発、もうひとつはイオンやビックカメラなどの企業が格安スマホ販売に乗り出してきたことだという。

ヤフー「リユース革命」の画餅

 2014年4月、ヤフーの宮坂氏はブックオフコーポレーションへの出資を発表した。その額、約98億円。ブックオフが店頭で買い取った商品をヤフオク!で販売するという「リユース革命」を目指す。2016年中には首都圏に大規模な物流センターを設置し、梱包や発送作業を集中管理する、という内容だった。

一休・森社長がヤフーを選んだ理由

 ヤフーは高級ホテルやレストランの予約サイト「一休」を約1000億円で買収した。独自路線で圧倒的な存在感を持つ一休だが、今回の買収は「一休という会社を未来永劫(えいごう)、残していきたい」という創業者・森正文氏みずからの希望によるものだ。「ヤフーさんの方が資金も人材もトラフィックもある。会社の未来を冷静に考えると、そっちの方が生き残る確率が高まると考えたんです」(森氏)。

ヤフー21年目の覚醒 技術で日本をアップデート

 2016年、宮坂氏が掲げたビジョンは「UPDATE JAPAN」。「次の20年」に向け、生まれ変わろうとする決意を込めた標語だ。かつて業界のトップにあった各種サービスと一線を画し、これまでに蓄積した膨大なビッグデータを活用して新しい価値を創造しようとしている。公には認めていないものの、2018年には独自のスーパーコンピューターを稼働させる計画まである、と囁かれた。

大企業病に抵抗、タイムマシンはもう不要

 ヤフーがビッグデータを活用したイノベーションに乗り出したのは、社員数がグループ全体で1万人という規模に膨れ上がった結果生まれた「大企業病」に対処するためだった。宮坂氏は「過去20年で何か新しいものを生み出せたか。まだまだ足りない。このままでは成長の頂を目指せず、踊り場で止まってしまう」と危機感を隠さなかった。

 GAFAや中国勢などとのグローバル競争に生き残るためにも、テクノロジーやそれを扱う人材への投資に力を入れていく、とした。

ヤフー、レシピ動画クラシル子会社化の先

 もちろんヤフーではこれまで同様、M&Aや提携による経営拡大も続けている。2018年7月にはレシピ動画サービス「クラシル」の運営会社delyへの出資を発表。約93億円を投じ連結子会社化した。食や料理領域の検索ニーズを拾い上げることで、「Yahoo!検索」などの魅力を高めることが狙いだった。

鬼門の個人向けでヤフーと対立 アスクルに明日は来るか

 しかし、M&Aや提携戦略のすべてが順調に進んでいったわけではない。2019年7月には個人向けEC事業「LOHACO」を巡り、LOHACOの運営会社であるアスクルとヤフーとの間で対立が激化。アスクルの社長、岩田彰一郎氏の退任を求める事態にまで発展した。

 ヤフーがアスクルの筆頭株主となったのは2012年のことで、当初は友好的な関係が続いていた。今回のトラブルについて岩田氏は「あまりにも唐突で不可解」と不快感を隠さなかった。

最後に

 積極的な経営拡大を続けているヤフー。IT業界の激しいグローバル競争の中で、イノベーションを起こし続けていくのは容易なことではない。

 さまざまな施策を立案・実施しているヤフーから、今後も目を離すことができない。

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