縦割り組織や事なかれ主義など、非効率で保守的な風潮が企業を侵食する「大企業病」。ひとたび大企業病に感染すると、新しいチャレンジを避けようとする一方で既存のルールに固執したり、意思決定に時間がかかったらりといった弊害が発生する。大企業を含め、あらゆる企業にとって危険な大企業病から組織を守る方策を、これまでの記事からまとめて紹介する。

大企業病とは

 大企業病とは、縦割り組織(セクショナリズム)、事なかれ主義、社内政治など旧態依然とした大企業に見られがちな企業体質のことだ。自分の業務しか見ようとしない視野狭窄(きょうさく)、従来の仕事のやり方を疑いもせずに踏襲する保守的な態度、時間のかかる意思決定、不必要な定例会議、そして顧客より上司の顔色を気にする姿勢など、大企業病に感染した企業やその社員には共通した特徴が見られる。

 ひとたび 大企業病を患った企業は、時代の変化から取り残され、市場での競争力を失う危険がつきまとう。この先も企業を存続させるためには、経営者の意識改革をはじめ、人事制度、社内コミュニケーションなどの面から対策が必要だ。

 以下、大企業病と闘う経営者や企業の取り組みについて見ていこう。

信賞必罰を徹底し 大企業病に打ち勝つ

 2001年、大和ハウス工業の社長に就任した樋口武男氏(現会長)。当時の役職員たちは企業の豊かさに甘え、形式ばかりの業務姿勢に甘んじていたという。大企業病に陥っていた大和ハウス工業を「戦う組織」へと生まれ変わらせるため、樋口氏が取り組んだのが「信賞必罰と多様な育成策を軸にした人財活用」だ。

 具体的には、まず会社の問題点や営業のアイデアについて社員が社長に直接意見できる「提案BOX」を設置。そこで挙がったアイデアを経営に生かすことで、社内にまん延していた風通しの悪さを改善していった。

大企業病に陥りかけている。グローバル競争の中でもう一段上を目指すには、従来の延長ではダメだ。

 化粧品やケミカルなど、5つのセグメントで事業を拡大する花王。2016年12月期の時点では7期連続増収増益、27期連続増配を見込むなど「手堅い」成長を続けていた。一方で投資家の中には「大胆さに欠ける」という見方もあり、社長の澤田道隆氏はこれを「大企業病に陥りかけている」と表現した。

 大企業病から企業を守るためには「従来の延長ではダメだ」と語る澤田氏。具体的な競合会社や10年以上先の数値を示しつつ、世界市場の伸びを上回る強気の目標を公表していた。

大企業病はこう治す

 パナソニック傘下の子会社だった三洋DIソリューションズ(現・ザクティ)は、2013年にパナソニックから離れ投資ファンドの傘下に入った。もとは旧三洋電機のデジタルカメラ部門として始まり、その後もパナソニックという大企業の下にいた同社。組織内にはコスト意識の欠如やルーズな顧客対応など「大企業病」の症状が見られ、生き残りが危ぶまれる事態に。

 当時社長だった西山隆男氏は「リストラだけは絶対にしたくない」という思いの中、事態打開に向けて「計器飛行経営」と名付けた取り組みを始める。すべての業務を社内でオープンにするとともに厳しいコスト管理を徹底した結果、新規受注も上昇カーブを描くようになった。

大企業病に抗うヤフー、タイムマシンはもう不要

 米国流の成功モデルをいち早く日本に導入する「タイムマシン経営」で大きく成長したヤフー。一方で2015年3月期に46.0%だった売上高営業利益率は2017年3月期には22.5%に低下するなど、その成長には陰りが見られた。その根底にあるのは「メルカリ」や「LINE NEWS」といった強力なライバルの出現と社内にまん延する大企業病。当時社長だった宮坂学氏は「過去20年で何か新しいものを生み出せたか。まだまだ足りない。このままでは成長の頂きを目指せず、踊り場で止まってしまう」と危機感を隠さなかった。

 大企業病に抗いつつ、新たなイノベーションを起こすため宮坂氏は2012年に「201X年に営業利益を現在の2倍に上げる」という大胆な目標を掲げた。加えて積極的なMA戦略や「各種サービスの膨大な利用履歴、ビッグデータの活用技術の開発」に経営資源を集中するなどタイムマシン経営に頼らない施策を次々に打ち出し、「ライバルとの競争に打ち勝つ」ための人材採用にも積極的だった。

親族経営に「大企業病」を持ち込むな

 大企業を経て親族が経営する会社に入社した若手社員。将来の跡取りとして期待される一方、大企業勤務で染み付いた「大企業病」的な思考から抜けることができないでいる。

 寄せられた相談に対し、ご意見番の上田準二氏(ユニー・ファミリーマートHD元相談役)は「親族経営に大企業病を持ち込むな」と一喝。大企業で学んだことは一回忘れ、会社の実態に合った組織の在り方について社長との対話の中から考えてほしいと語る。

最後に

 会社の規模にかかわらず大企業病がまん延する中、経営者たちがどのように大企業病と闘っているかを紹介してきた。いずれのケースにも共通するのは、大企業病に打ち勝つには経営者や次期経営者といった企業トップの意識改革が必要であるということ。

 グローバルな競争がますます加速する中、企業の生き残りを図るためにもぜひ大企業病を克服してほしい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。