社会人になってから仕事に関する新しい専門知識やスキルを身に付ける「学び直し」が改めて注目されている。国は学び直しの必要性を重視し、予算を割いて費用支援を含む制度を整備している。今回は学び直しに関する過去記事から、それが必要とされる理由と実際の取り組みについて振り返ってみる。
国も積極的に支援する、大人の「学び直し」

学校を卒業して就職し、社会人になって一通り仕事を身に付けてから、改めて仕事に関する新しい専門知識やスキルを勉強する「学び直し」が、いま注目されている。「リスキリング」、「リカレント教育」とも呼ばれる。国は厚生労働省や経済産業省、文部科学省などを通してキャリア相談や学びにかかる費用の支援を行うなど、学び直しを積極的に推進している。
学び直しの目的は、仕事で必要とされる能力を磨き続けることだ。どのような能力が必要とされるかは仕事の種類や内容、本人がすでに身に付けている能力によって異なるため、学び直しのタイミングにも特に決まりはない。また技術の進歩や社会の変化によって新たな知識やスキルが必要となることもあるため、学び直しに終わりはない。
この記事ではこれまでに掲載したリスキリングやリカレント教育など「学び直し」に関する記事から、注目すべきものをピックアップしていく。
臨時国会「防戦」の岸田政権、主要政策への影響は?
学び直しは国にとって重要政策のひとつだ。2022年10月に招集された第210臨時国会では、岸田政権が掲げる重要政策のひとつとして「リスキリング支援」が挙げられた。その目的は、「成長のための投資と改革」の一環として成長産業への労働移動を促すことだ。
開示が企業を強くする 「人的資本投資拡大を」 一橋大の伊藤氏
学び直しをした社会人は企業にとって無形の財産だ。これと関連して、2022年8月には内閣官房の「非財務情報可視化研究会」で人的資本開示の指針が公表された。今後は上場企業を対象に、非財務情報として「人的資本」の開示を義務付ける方針だという。
リスキリングで最前線に 社内外で学び・気付き 中高年活性化の起点
国はあらゆる角度から、学び直しの支援に取り組む。岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の実行計画によると、2024年度までの3年間で4000億円を投じて「社会人のリスキリングや成長分野への労働移動、兼業・副業の促進、生涯教育の環境整備」を行っていく予定だ。
日立、DXのカギ握るデジタル人材10万人へ 独自資格で育成
民間企業の間でも学び直しの支援が始まっている。日立製作所では業務上必要とされるデジタルスキルを細分化し、12の「独自資格」として整備。2019年に設立した「日立アカデミー」(東京・台東)を通して社員の学び直しを支援することで、社内のデジタル人材を今後3年で約10万人に増やす考えだ。
ブリヂストンやみずほ、ミドルを磨く 越境学習や兼業で経験開花
複数の会社が共同で学び直し支援を行っている事例もある。2022年8月にはソニーグループ、キリンホールディングス、SOMPOホールディングスなどが連携して協議会を設置し、それぞれの社員が相互に兼業・副業したり、共同で学び直しの場を提供したりするシステムを構築している。
ボッシュ、EV時代へのリスキリング
最後に海外の事例を紹介する。自動車部品世界最大手のボッシュ(ドイツ)は、世界中に配置されている約40万人の従業員を対象にしたトレーニング制度を用意。すでに21年までの5年間で10億ユーロ(約1400億円)を投じ、今後5年間でさらに10億ユーロを投資してEVエンジニアなどを養成する予定だという。こうした動きの背景にあるのは、EVシフトに伴い自動車業界の雇用が減るという悲観的な見通しだ。
最後に
国や企業が注目する大人の学び直し。新たなスキルを身に付けた人材は企業にとって無形の資産となり、そのような人材を多数抱える企業は国の経済にも良い影響を与える。しかし学び直しによって一番メリットを受けるのは「本人」だ。時代の変化に合わせ自分の活躍の場を広げていくためにも、学び直しのチャンスを積極的に活用していきたい。
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