電気モーターで自走する電動キックボード。公道で走行するには免許等が必要だが、MaaS(次世代移動サービス)を支える交通手段の1つとして国や自治体、関係者の注目を集めている。この記事では電動キックボードの課題や可能性、本格導入に向けた動きなどをこれまでの記事から振り返っていく。

MaaSの目玉として期待される「電動キックボード」

 電動キックボードとは、モーターを搭載して自走可能なキックボードのこと。日本の道路交通法では電動キックボードを「車両」に分類しており、公道で走行するには運転免許の取得やヘルメットの着用、自賠責保険の契約、ナンバープレートの取り付け、車道の通行(歩道の通行不可)などが義務付けられてきた。

 公道上には基準を満たさない電動キックボードが数多く出回っており、道路交通法違反の事例も少なくない。合法的に普及させるためには、取扱業者や利用者など関係者全員の努力が必要だ。

 電動キックボードはMaaS(mobility as a service:すべての移動手段をITでつなぎ、1つのサービスとして利用する考え方)の目玉としても期待されている。このため国や自治体は電動キックボードのシェアリングサービスなどの実証実験を進めてきた。

 この実証実験を受けて、警察庁は2023年7月から最高速度や大きさなどの基準を満たしたものは、自転車と同様の交通ルールを適用する方針を決めた。これにより今後、電動キックボードの活用シーンが広がることが考えられる。

 今回は電動キックボードへの関係者の期待や普及に向けた動きなどを、これまでの記事から紹介する。

MaaSより大きい?「移動なき社会」と「超小商圏化」のインパクト

 新型コロナウイルス禍をきっかけとしたテレワークの普及や高齢化で、半径数百メートルから数キロメートルの狭い生活圏をカバーする交通手段に注目が集まっている。従来は「自転車」がその役目を担っていたが、今注目されているのは電動キックボード(電動キックスケーター)だ。

増える電動モビリティー、次に来るのはキックボードか

 海外で人気を集める電動キックボード。「好きな場所で乗り捨てできる気軽さ」を背景に、17年ごろから各国でシェアリングサービスが開始されている。一方、これまで日本では道路交通法の規制により利用できる人や利用形態が厳しく制限され、普及への大きな障害となっていた。

 ただし、23年7月からは最高時速など、基準を満たせば「特定小型原動機付自転車」として分類されることとなった。原則として車道を走行しなくてはいけないものの、ヘルメットの着用は努力義務となり、運転免許も不要になる(16歳未満の運転は禁止)。

電動キックボードは原付き?自転車? 政府認可の実験スタート

 20年10月、東京都内で電動キックボードの実証実験が始まった。モビリティーポートと呼ばれる機体の駐輪場所が用意され、国の特例制度を活用したことで従来は禁止されていた自転車レーンの走行が可能になるなど利便性が高められている。実験に加わる関係者からは「将来、電動小型モビリティーは不可欠な存在になる」という声も出るなど、電動キックボードにかける期待は大きい。

ついに公道でシェアリング、電動キックボードは普及の正念場に

 Luup(東京・渋谷)による電動キックボードのシェアリングサービスが始まった。まだ実験段階ではあるものの、公道で、しかもヘルメットなしでの走行が可能となっている(認可区間のみ)。実験期間は2021年4月下旬から半年程度の予定だ(記事掲載当時)。

福岡市に三重県6町、自治体が描く街の未来

 「スタートアップの街」を自認する福岡市でも、電動キックボードのシェアリングを含む実証実験を始めた。参加しているのは電動キックボードのスタートアップ、mobby ride(東京・港)で、バス路線が通っていない場所で「ラストワンマイル」を担う交通機関としてキックボードの活用が期待された。

ファミマ、電動キックボードで「軒先ビジネス」本格展開

 大手コンビニエンスストアのファミリーマートがLuupと資本業務提携契約を結び、コンビニの店頭を利用した「電動キックボードのポート」設置を行う。この取り組みは電動キックボードの普及を後押しするだけでなく、ファミマにとっては店舗のデッドスペースを「集客ツール」と「(場所代による)収入源」に変えるものとなる。

最後に

 超小型モビリティーとして世界中で人気を集める電動キックボード。海外では急速に普及が進むが、日本では道路交通法の規制により普及に時間がかかっている。とはいえ東京都内ではベンチャー企業と大手コンビニチェーンがタッグを組むなど、普及に向けた動きは活発だ。また、23年7月からは特定小型原動機付自転車としての運用も始まりそうだ。21世紀の新たな交通手段として、電動キックボードが持つ可能性と魅力にこれからも注目していきたい。

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