中国が台湾に軍事侵攻する「台湾有事」。中国はこれまで台湾に対したびたび軍事的な圧力をかけており、「武力行使を放棄しない」と明言している。日本政府も台湾有事の具体的なシナリオを想定するなど、台湾有事は決して絵空事ではない。今回は台湾有事の可能性と日本への影響について、これまでの記事からピックアップする。
現実の脅威となりうる「台湾有事」

台湾有事とは中国が台湾に軍事侵攻すること。台湾を「不可分の領土」「核心的利益」と位置づける中国共産党はこれまでにも数度にわたり台湾に軍事的な圧力をかけており、台湾有事の可能性はたびたび指摘されている。
軍事的圧力の主なものとしては、1995年から1996年にかけて発生した「第3次台湾海峡危機」、2005年の「反国家分裂法」制定、13年に主要新聞に掲載された「六場戦争計画」などが挙げられる。また22年8月には米国のペロシ下院議長の訪台に反発して、台湾を包囲する形で軍事演習が行われた。
習近平(シー・ジンピン)国家主席は22年の中国共産党大会で(台湾統一に向けた)「武力行使を放棄しない」と明言しており、日本政府も22年の防衛白書の中で①中国が演習名目で軍を沿岸に集結させる、②軍事施設にミサイル・サイバー攻撃を行う、③艦船や航空機による上陸作戦に踏み切るという3段階のシナリオを想定。専門家の間でも、台湾有事の可能性を指摘する声は少なくない。
この記事では、台湾有事に関する注目すべき過去記事を振り返っていく。
ミサイル発射で台湾有事の現実味増す? そのとき日本は? 米国は?
22年8月、ペロシ米下院議長の訪台をきっかけに中国と台湾の間で緊張が高まった。中国は対抗措置として台湾を取り巻く6カ所の海空域で軍事演習を展開。これが台湾有事に直結するかどうかは不透明だが、政治家や専門家の中には「可能性は高くない」という意見がある一方、「ウクライナで起きた危機が東アジアにも波及する」という見方もある。
日本にとっての台湾有事、尖閣防衛はすなわち台湾有事抑止
台湾有事の抑止策として、米軍による「太平洋抑止イニシアチブ(PDI)」が注目されている。PDIは中国人民解放軍を「第1列島線内(日本列島および日本の南西諸島から台湾、フィリピンを経て南シナ海にかかるライン)」の内側に押しとどめるという構想だ。PDIの実現可能性について、専門家の中には自衛隊との連携が必要という見方もある。
台湾有事は日本企業の有事
もし台湾有事が発生した場合、日本人や日本企業への影響も少なくない。台湾には2万人を超える日本人が生活しており、台湾からの脱出をめぐる混乱が予想される。またフィリピンと台湾の間のバシー海峡は日本と中東をつなぐ海上交通路となっており、有事で封鎖されれば日本国内のエネルギー危機を招きかねない。
日本人が見落としがち、「台湾有事は韓国有事」であることの意味
一方、台湾有事は「韓国有事」という指摘もある。米軍の介入を防ぐため、在韓米軍の基地を中国軍が攻撃・破壊しようとする可能性があるためだ。中国のミサイルはすでに韓国全土を射程に収めており、韓国にとって大きな脅威となっている。
台湾めぐる現状変更を導きかねない米国、日本は追随でよいのか?
台湾をめぐる米国の姿勢に危機感を持つ専門家もいる。キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之氏は「台湾の民主主義にとって最善なのは現状維持」と指摘したうえで、それを変更しかねない米国の行動が台湾有事を誘発する可能性を指摘する。
中国新体制は「習天下」、脅威は力で「封じ込める」
22年の中国共産党大会で、異例となる3期目に入った習近平国家主席。権力基盤を固めた習氏は「武力行使の放棄を約束せず、あらゆる必要な措置をとるという選択肢を残す」と宣言しており、今後の台湾有事に含みを持たせている。
最後に
台湾有事の当事者である習近平氏は、課題の解決に向けて「武力行使を放棄しない」と明言する。台湾周辺での軍事演習が頻繁に行われ、日本政府も台湾有事のシナリオを構想するなど、台湾有事は現実に起こりうる危機といえる。今後の台湾有事の可能性と日本への影響について、引き続き注目していきたい。
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