「1人で行ける焼肉屋」をキャッチフレーズに人気を集める焼肉ライク。2018年8月に1号店をオープンした後、新型コロナウイルス禍にもかかわらず店舗数を拡大し続けている。この記事では焼肉ライクを支える「おひとり様」需要をはじめ、同チェーン拡大の秘密と新たなチャレンジについて過去記事からピックアップする。

おひとり様に支持される「焼肉ライク」

 焼肉ライクはダイニングイノベーションが展開する焼き肉チェーン。創業したのは「炭火焼肉酒家 牛角」などを展開するレインズインターナショナルの創業者である西山知義氏だ。焼肉ライク1号店の開店は2018年8月だが、「1人で行ける焼肉屋」というキャッチフレーズと「おひとり様」をターゲットとした経営戦略がヒットし、22年11月時点で東京都内を中心に92店舗まで拡大中だ。

 同チェーンの特徴は、一人焼き肉に対応した「1人1台ロースター」や「焼き肉とご飯、わかめスープ、キムチのみ」というシンプルなメニュー。注文を受けてから3分以内に提供できること、そして他社よりもリーズナブルな価格設定も人気の秘密だ。

 この記事では焼肉ライクのヒットを支える「おひとり様」需要の現状や、新型コロナウイルス禍が同チェーンや焼き肉業界に与えている影響、そして焼肉ライク運営会社の新たな取り組みについて最近の記事から振り返る。

「おひとり様」、ファミレスでも欠かせぬ客層に

 焼肉ライクはおひとり様需要を巧みに捉えたことでヒットした。背景にあるのが単独世帯の増加だ。飲食店情報サイト「ぐるなび」による調査でも「晩ご飯を1人で食べる回数が増えた」という回答が増えており、これまで家族連れをメインターゲットにしてきたファミリーレストランなどでも1人用の座席を設置するなどおひとり様対応に力を入れている。

きんぐやワタミ、郊外で焼き肉戦争 コロナで店舗が進化中

 コロナ禍は外食産業に大きなダメージを与えたが、焼肉ライクをはじめとする焼き肉業界は少し様子が違う。20年には居酒屋などが前年比49.5%減、喫茶店が31%減、ファミレスが22.4%減となる中、焼き肉店は10.9%にとどまった。その理由とされるのが「家で同じ味を出しにくい」などといった焼き肉ならではの特徴だ。

肉のフードテック最新プレーヤーマップ公開 新市場を獲るのは?

 世界中で開発や利用が進む「植物肉」や「培養肉」などの新世代ミート。20年の世界市場規模は2572億6300万円だったが、7年後には7倍以上になると見込まれるという。国内でもドトールコーヒーやフレッシュネスバーガー、バーガーキングなどと並んで、焼肉ライクの「NEXTカルビ」「NEXTハラミ」(いずれも大豆原料)が注目を集めている。

1人焼き肉「焼肉ライク」が挑むすし市場、5日間で握り手を養成

 焼肉ライクを展開するダイニングイノベーションが、焼き肉以外の業態にもチャレンジしている。その1つが19年12月に開店した「寿司 あおい」(横浜市青葉区)だ。「回転ずしと高級なすし屋の中間」にあるニーズをターゲットとする同店は、今後5年で直営20店、FC(フランチャイズチェーン)80店の計100店舗展開を目指すという。

牛角創業者の西山氏、「接客しない」ハンバーガー店に照準

 もう一つの挑戦がハンバーガーショップだ。ダイニングイノベーションの子会社ブルースターバーガージャパンが運営する「ブルースターバーガー」は、「ロッカーで商品を受け渡し、注文・会計をアプリやセルフレジで行う」という、極限まで効率化した店舗オペレーションで高い原価率を実現している。

[新連載]切れた「モルヒネ」 外食に真の危機が訪れる

 国内2000店舗を目指すとしていたブルースターバーガー。しかし「出店希望者を増やすため、店のにぎわいを見せた方がいい」という声に押され、自らの強みだった「究極の効率化」と矛盾する客席の設置や高価格帯のメニューを追加したことにより客足が遠のき、1号店の開店から2年足らずで閉業となってしまった。

最後に

 焼肉ライクは、おひとり様需要をタイムリーにつかんだことと、焼き肉というジャンルがコロナ禍でも消費者に支持されたことで成功を収めた。コロナ禍が続く現在も店舗拡大を続ける焼肉ライクだが、同じ運営会社が手がけるブルースターバーガーは、コンセプトのぶれが原因で失敗した。焼肉ライクが今後も好調を維持できるかどうか、見守っていきたい。

 さらに詳しい記事や、会員限定のコンテンツがすべて読める有料会員のお申し込みはこちら

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「テーマ別まとめ記事」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。