特に親しくない相手とも、間を持たずに会話を交わせる「雑談力」。対話力やコミュニケーション能力と違い特定の目的やゴールは存在しないが、雑談力を身に付けることは商談の成功など、ビジネス上のメリットにつながる。今回は過去記事を通して、雑談力の重要性と身に付け方を紹介する。

相手との距離を縮める「雑談力」

 雑談力とは、文字通り「雑談する力」のことを指す。より具体的には、ビジネスの場などで特に親しくない人とも間を持たずに会話を交わし、相手との距離を縮めることのできる能力のことをいう。

 雑談力には、相手との合意を目指す対話力や、他者との意思疎通や情報共有を目的とするコミュニケーションと異なり、目指すべき目的やゴールは存在しない。しかし何気ない会話は「アイスブレイク」の役割を果たし、雑談の中で交わされる言葉が共感を生むこともあるため、結果としてビジネスにおける信頼関係の構築や、商談の成功に役立つことが多い。

 近年は相手と直接対面しないオンライン会議やオンライン商談が増えていることから、適切なタイミングで意図的に雑談を交える雑談力の重要性は一層高まっているといえる。

 この記事では雑談力を重視する企業や経営者の取り組みや雑談力を高めるためのヒントを過去記事からピックアップして紹介する。

栃木最強!サトーカメラの不思議な経営

 雑談力で成功している企業の一つが栃木県の「サトーカメラ」だ。栃木県内でのカメラ販売シェア17年連続首位で粗利率が44%という同社だが、人気の秘密は「1人のお客様に1時間接客は当たり前」という店員たちが身に付けている雑談力だ。

「ハーバードもケンブリッジも超える」 永守氏の果てなき夢

 日本電産会長CEOで京都先端科学大学の理事長を務める永守重信氏。私費100億円余りを投じて京都先端科学大学の改革を進める同氏の目標は、京都大学を抜き、米ハーバード大や英ケンブリッジ大を超える学校を作ること。それに向けた改革の一つとして取り入れたのが、雑談力や協調性を養う体育の必修化だ。

日本電産永守氏×MS&AD柄澤氏「頑張った人が報われる社会つくる」

 永守氏は「仕事のときは仕事の話をしていても、仕事後の食事の場では黙っているような人材は世界に通用しない」と語り、雑談力の重要性を強調する。一方、この雑談力について、MS&ADインシュアランスグループホールディングス会長の柄澤康喜氏は「人間的魅力みたいなもの」と表現する。

成果主義、非正規化、SNS時代…… すれ違う上司と部下 孤独を増やした真因

 日本の組織で増え続けるパワハラの背景には、「成果と生産性が厳しく問われる中、オフィスで雑談すらしにくくなった」という企業の現状がある。上司と部下、さらには同僚同士でも指示・報告・評価に関わる話のみが行われ、お互いを深く知り合うような会話が減っていることが問題の一因になっているという。

リモート全盛時代、新入社員の離職を防ぐには

 コロナ禍の影響で会議や商談のオンライン化が一般的となった2020年以降、働き方への価値観が大きく変わってきたという。従来は職場でのちょっとした雑談などで意思の擦りあわせができていたのに対し、オンライン化で雑談の機会が失われ、相互理解が難しくなっていることも原因の一つだ。

たった2つの質問で改善 “伝説の家庭教師”が語る雑談力アップ術

 リーダー向けのスピーチ・コーチを務める岡本純子氏によると、雑談力を向上させるコツは「最近どうですか?」などの「とっかかり質問」と、「どんなことがあったの?」などの「追い質問」をすることだという。どちらも、相手が聞きたくもないかもしれない話ではなく、相手が「聞いて欲しい」と思っていることを引き出すためのポイントだ。

最後に

 人間関係の距離を縮め、ビジネスをスムーズにする雑談力。多くの企業や経営者がこの雑談力に注目し、それぞれの取り組みを通してビジネスや人材育成に生かしている。テレワークの常態化など職場のコミュニケーションが大きく変化する中、雑談力を伸ばすことを目指してみてはいかがだろうか。

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