「働き方改革」の一環として、企業が取り組みはじめているのが、「副業」の解禁だ。働く側も、もはや大手企業に勤めることが「安泰」とは言い難い昨今、自分のスキルを磨いたり、収入向上を狙って副業を行なう人が増えてきている。本記事では副業を巡る現状と課題を、過去の記事を紹介しながら探っていく。

政府を中心として副業を推進

 2017年、政府が「働き方改革実行計画」を発表。副業・兼業の普及促進を図ってきた。

 その背景には日本型の終身雇用制度の崩壊や人手不足など、さまざまな背景があるが、日本における働き方は、これまでの「ひとつの企業に勤め上げる」というものから大きく変化してきている。

副業が壊す、もう1つの「戦艦大和」

 また、昭和女子大の八代尚宏特命教授は、戦後の日本的雇用慣行を「戦艦大和」に例え、「副業が広まることによって、戦艦大和が良い意味で崩壊するだろう」と語っている。

 日露戦争の戦艦対決で勝ち過ぎて、空母の時代の太平洋戦争でも、その成功体験にしがみついた海軍のように、日本は、日本型雇用にしがみついてきた、というわけだ。

 同氏は、1980年代まで、日本型雇用は機能していたとした上で、今後の低成長の時代に機能するとは言えないと強調。副業の広まりは、企業内の働き方を「ジョブ型」の雇用へと変える大きなステップになると語った。

「副業OK」の企業がじわりと増えている

 これまで、日本の多くの企業は「専業」がメインだった。

 これまでも、一部の若い企業やベンチャー企業で積極的に副業を推奨しているケースが見られた。しかしここ数年、大手企業の間でも副業解禁の動きが出始めている。

 その一つがロート製薬である。2016年の4月から、社員の副業を全面的に解禁した。

 本業に支障がない範囲で、週末や終業後に他社やNPO(非営利組織)などで勤務できると言う。

 クラウドソーシング大手のクラウドワークスも、2016年の6月から就業規則を改定し副業制度を解禁。ロート製薬同様、本業に支障をきたさない範囲で自由に副業をしてもいいとのことだ。

みずほFGが副業解禁 メガバンクで初めて容認

 2019年5月には、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)がが今年度中に副業・兼業を解禁する方針を明らかに。

 「堅実な日本企業」のイメージが強い銀行なだけに、この決断は驚きだ。坂井辰史社長は、副業を容認する狙いについて、終身雇用制が崩壊するいま、みずほFGを卒業したあとも、みずほで働いたキャリアが生きる仕組みを作ることが大事だと強調している。

副業解禁こそ成長のチャンス

 では、現場で働く社員はこうした動きについてどう考えているのだろうか。

 副業を積極的に推奨しているサイボウズで働く中村龍太さんは現在、サイボウズの他に2社、合計3社で働いている。副業を通じ、本業とは違う分野の人と話すことで、自分の頭の中でオープンイノベーションが起きやすい環境を作ることができると話す。

「1桁残業」で副業も可能に

 社員の成長に繋がる副業だが、サイボウズのように、理想的な環境を作るのは、多くの企業にとって簡単なことではない。そこで期待を集めるのが、テクノロジーによる業務の自動化。試作・製造受託の米プロトラブズの日本法人では、受注してから試作や委託製造を完了するまでの間、人の知恵を必要としない部分は、可能な限りシステムで自動化することで、月の平均残業時間を4時間にまで抑えているという。空き時間を利用して副業を行う社員もいるという。

 さて、副業解禁はメリットだけなのだろうか。副業解禁における課題についても見ていこう。

“副業解禁”に潜む労使双方の法的リスク

 副業が世の中に受け入れられている一方、法的なリスクも存在する。現状、副業を禁止する直接的な法規制は、実は存在しない。厚生労働省が示している、モデル就業規則が「抑止」の役割を果たしているだけだという。ここには「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」との規定があり、企業が運用している就業規則の多くは、これをベースに作成されている。これは飽くまでモデル例なので、法的拘束力は持たないが、結果的に副業・兼業に対する“ブレーキ”として機能してしまっているという。

副業・兼業だけで生産性は高まらない

 また、副業について議論する上で考えなければならないのが、非正規社員の教育だ。

 以下の記事で述べられている通り、副業・兼業だけでは、企業や国全体の生産性は高まらない。飲食や旅行業界などでは、繁忙期になると一時的に雇われる非正規社員が出てくる。一部のいわゆる彼らに対して、現場でスキルが身につくような研修が行われることなどはほとんどない。最近は副業というと、先端企業の正社員が行なっているような印象もあるが、現実はそうではないのだ。

「副業解禁」で壊れる日本の「カイシャ」

 副業の解禁は、良くも悪くも従来の日本企業のあり方を変えていくだろう。

 もともと副業が解禁された背景には終身雇用制の崩壊がある。これまで、日本社会では「自分のスキルは全て所属している企業に捧げるべき」という認識が一般的な認識だった。しかし、政府が副業を容認し、それに企業も賛同することで、今後はフリーランスや請負に近い感覚を兼業社員は持つようになるだろう。その人を丸ごと「雇用」して「就業規則」で縛るという従来の「会社と社員」の概念は徐々になくなり、会社と個人が個別に業務契約を結ぶ。そんな関係が増えていくと考えられる。

全員が「副業」を持つ時代になります

 Mistletoe株式会社 代表取締役社長兼CEOの孫 泰蔵氏も、いずれ、全員が「副業」を持つ時代が到来すると強調。さらに、副業を禁止するというのは、基本的人権の侵害だと思うとも語る。AIの発達で、ひとつひとつの仕事の負担は減り、それに応じて給料も下がる。そうした社会においては、ひとつの企業で仕事をするのではなく、いろいろな仕事をしなければ、満足な生活が送れなくなる可能性がある。

優秀な人が副業でも自分のスキルを生かし、 さらに稼ぐという傾向は、 今後さらに強まる可能性がある。

 リクルートワークス研究所・主任研究員の萩原 牧子氏も、今後は優秀な人が副業でも自分のスキルを生かし、さらに稼ぐという傾向は、 今後さらに強まる可能性があると語る。事実、比較的本業の年収が高く、副業でも稼げている人の中には、単なる収入増加を目的とするのではなく、自分のスキルを十分に活用したいと考える、人が多いからだという。

最後に

 ここまで、副業を巡る現状と課題を、過去の記事を参照しながら紹介してきた。国も推奨し、大手企業も推奨するなるなど、副業が一般的になるのも時間の問題と言える。

 しかしながら、副業に対応していない企業は依然多く、引き続き動向をチェックする必要があるだろう。

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