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この2019年、長野県軽井沢で最初の旅館を開業し手から、105年目を迎えた星野リゾート。旅産業は「世界で最も大切な平和維持産業」と謳う同社が、なぜ注目を集めるのか。星野リゾートが企業として持つ強さの秘密を、過去の記事を参考に探っていく。

星野リゾートとは? その沿革を追う

 星野リゾート(ほしのリゾート)は、長野県に本社を置く総合リゾート運営会社で、1914年に軽井沢にて創業した老舗の日本企業だ。

 ラグジュアリーホテル「星のや」、温泉旅館「界」、リゾートホテル「リゾナーレ」、都市観光ホテル「OMO」、ルーズなホテル「BEB」といったブランドを多数展開しており、2020年には運営施設数が45施設に達する見込みだという。なお、2019年4月期の営業利益は前期比増益の約32億4300万円だった。

「同族だから強い」星野リゾートに学ぶ変革力

 1915年から続く軽井沢の老舗旅館、星野リゾート。今や全国規模の一大リゾートグループになっている。

 日本社会の全体に「世襲批判」がはびこる中、その成長は同族経営だからこそだったという。しかし、星野佳路代表は今後の星野リゾートについて、同族以外の社員が社長になる可能性もある、と話す。重要なのは、その人にしっかりとしたビジョンがあるかどうか。同族でもそういったものがなく、公私混同に陥ってしまうようであれば、社長にふさわしいとは言えないという。

深化する星野リゾートの「教科書通り」経営

 また、星野代表は経営学の教科書を実際の経営にフル活用する「教科書経営」を実践していることでも知られる。なかには「ビジネスは実践で学ぶもの」と考える経営者もいるだろう。しかし教科書に載っている理論やケーススタディーは、すでに正しいと証明されたものだ。そこを参考にしない手はない。

星野 佳路(よしはる)[星野リゾート社長]

 ここまでを見てもわかる通り、星野リゾートは、星野社長の独自な考え方やカリスマ性がその成長に関係している。かつて観光庁長官の溝畑 宏氏も同氏を高く評価。星野氏が素晴らしいのは、観光業を総合的戦略産業と捉えているところだと述べている。

 観光業というと、ホテルや旅館、航空会社、鉄道など狭い範囲で語られることが多い。しかし日本を見れば、映画やアニメといったコンテンツだけでなく、自然環境や食文化など世界でも屈指の幅広い観光資源がある。こうした資源を生かすためには、観光業を総合的な戦略産業として考える必要があるが、星野氏はそうした姿勢や考え方を貫き続けている。

星野リゾート代表の“強気”なストレス軽減策

 そんな星野氏だが、普段実施しているストレス軽減策も独特だ。

 同氏はストレスを減らすために「3ない主義」を重視しているという。それは「出たくない会議には出ない」「会いたくない人には会わない」「行きたくない会食には行かない」の3つ。特に会食は、自分が楽しいと思えるもの以外は、断るようにしているという。変わった人、と思われることもあるというが、何かを犠牲にしないと、健康は得られないと星野氏は強調する。

実践!1日1食主義【星野リゾート・星野氏】

 また、星野氏が健康のために実践している食事法もユニークで、ここ数年「1日1食主義」を貫いているという。30代、40代になってくると、高血圧や高コレステロール、不整脈といった不調が表れるようになったと同氏は語る。そこで、「食事」「睡眠」「運動」「ストレスコントロール」のそれぞれに目標を設定し、健康管理を実践している。1日1食の制限は、その取り組みのひとつなのだ。なお現在は、数値も改善。心身の状態が良好になっているという。

スキーは年間65日!【星野リゾート・星野氏】

 このように、星野氏が健康維持を心がけて実践しているのは、決して仕事のためだけではない。実は同氏、長野県の軽井沢出身ということもあり、幼い頃から大のスキー好き。年間65日のスキー滑走を死守するため、冬の出張を雪のある場所にするほどなのだという。スキーを長く続けるためにも、健康管理は欠かせないと考えているという。だがなぜスキーなのか。その理由を、スキーは旅と結びついているからだと星野氏は語る。

星野リゾート、都心の日本旅館は世界への試金石

 そんな星野氏が代表を務める星野リゾートは、国内のみならずグローバル展開も視野に入れている。2016年7月には、観光地ではなく都心に日本旅館「星のや東京」を設立。都内には外資系の高級ホテルなどが多数あり、世界展開を成功させるためには、彼らに「日本旅館」で勝利しなければならないと、星野氏は意気込んでいた。その勝ち筋は、都内の多くのホテルが均質化、コモディティー化する中、新しいマーケットを作り出すことにあるという。

星野リゾート、バリから始める世界展開

 国内市場で勝つことが、世界展開につながると話す星野氏だが、もちろん、海外への展開にも余念がない。2017年に「星のやバリ」をオープン。バリにはフォーシーズンズ、ザ・リッツ・カールトン、アマンがそれぞれ2カ所あるなど、世界の一流リゾートがずらりとそろう。同社はトラブルに見舞われつつも、星野リゾート流のフラットな関係を重視する経営スタイルで、現地スタッフをうまく巻き込み、運営を軌道に乗せた。バリのような競合がひしめく環境では、いかに現地スタッフの協力を得ることができるかが非常に重要なのだ。

星野リゾートが英断?「宿泊料金が常に同じホテル」開業

 海外展開だけではなく、星野リゾートのユニークなサービスにも注目する必要があるだろう。その良い例が、2019年2月に開業した「BEB5(ベブファイブ)軽井沢」だ。宿泊者全員が35歳以下であれば、シーズンや曜日に関係なく、2~3人用の部屋に1室1万6000円で泊まれるようにしたのだ。一般的に、航空や宿泊業界では、収益力を高めるため、多くの企業がサービスの提供料金を細かく変える施策を取り入れている。

星野リゾート、「ディープ大阪」の次は「奈良の監獄」

 もうひとつユニークな施設が、2021年から運営が予定されている。奈良市の「旧奈良監獄」をホテルとして活用する取り組みだ。この旧奈良監獄は、明治時代に造られた「五大監獄」のひとつ。この刑務所をホテルにするという、奇抜なアイデアで、日本の歴史や文化の要素を、宿泊者に感じ取ってもらうのが狙いだという。

最後に

 ここまで、星野リゾートの強さの秘密や取り組みを、過去の記事を参考に探ってきた。同社の同族経営であるからこその強みやフラットな組織作り、そして星野氏のカリスマ性がここまで星野リゾートを成長させた背景にあった。

 今後同社は、国内をはじめ、グローバルへの展開をさらに推し進めていくだろう。今後も星野リゾートの展開から目が離せない。

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