細胞を活性化し、疾患予防や老化抑制に効果があると期待されるオートファジー。細胞自身が備えるこのメカニズムは、東京工業大学の大隅良典栄誉教授の論文と、同氏のノーベル賞受賞により大きな注目を集めた。今回はオートファジーをテーマに、これまでの記事から注目すべきポイントをピックアップする。

疾患予防やアンチエイジングに期待がかかる「オートファジー」

 オートファジーとは、生物の細胞が備えている「細胞内のタンパク質を分解する」仕組みのこと。自らの変性タンパク質や古くなったミトコンドリアを分解して作り替え、細胞を活性化することから、疾患予防やアンチエイジングの分野などで大きな注目を集めている。

 オートファジーの仕組みや働きについての研究が進んだのは比較的最近のことだ。東京工業大学の大隅良典栄誉教授がこの分野の第一人者で、同教授が1993年に発表した論文がオートファジー研究の礎を築いたとされる。この研究により、大隅教授は2016年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 この記事では過去に掲載したオートファジーに関する話題、および大隈教授のインタビューやその影響について振り返っていく。

オートファジーって何? 疾患とのかかわりは?

 オートファジーとは細胞が自身のタンパク質を分解する機能のこと。人間の場合、1日に作られるタンパク質の4分の3程度を体内でリサイクルしており、その意味でオートファジーは「命を支えている要素」とされている。

 オートファジー研究の第一人者は、東京工業大学の大隅良典栄誉教授だ。大隈教授は27年にわたりオートファジーの研究を続け、2016年にはノーベル生理学・医学賞の単独受賞を果たしている。

「老化しない」ことが夢物語でなくなった理由

 オートファジーに注目が集まる理由は、細胞に備わったこのメカニズムが「老化を緩やかにする」と考えられるためだ。

 オートファジーによって細胞は自らの「傷ついたミトコンドリア」を回収し、アルツハイマー病やパーキンソン病などの原因になる「凝集したタンパク質」や「細胞に侵入した病原体」などを除去することができる。これを強化すれば老化の抑制につながると期待されている。

若い創造力を伸ばす社会に

 オートファジー研究でノーベル賞を受賞した大隈教授によると、現在の大学は運営費を賄うために「研究費を稼げる研究者を求める」傾向があるという。サイエンスの質よりも「成果」が評価されるため、研究者たちも萎縮してしまっているという。

 しかし「サイエンスは効率で測れない」と大隈教授は語る。科学の進歩にとって重要なのは「一見、無駄に思われることを社会がどれだけ許すかだ」という。

研究者たちが集い、飲み、響き合う研究所を作る

 大隈教授の理念に共鳴し、基礎研究に力を入れる動きもある。サントリーホールディングスは2015年5月に「サントリーワールドリサーチセンター」を設立し、基礎研究や基盤研究の支援体制を強化した。

 京都府のけいはんな研究学園都市にある同施設には、約250人の社員研究員と、サポートスタッフを含め約400人が所属する。研究所の建物は開放的で明るく、研究成果の展示施設、個性的な会議室、共用の研究室、そして周囲にある130以上の研究所との交流などユニークな特徴を備えている。

最後に

 老化抑制につながると期待される細胞の機能「オートファジー」。研究の中心となった大隈教授のノーベル賞受賞からも、世界的な注目度の高さがうかがえる。オートファジーそのものの研究はもちろん、大隈教授が語る「基礎研究の重要性」を大学・企業の研究機関が重視して、さらに画期的な発見が行われていくことを期待したい。

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