製品や企業が互いに連動、補完し合い、生態系のような相乗効果を生み出す「エコシステム」。IT大手の米アップルなどの事例が有名だが、国内外にはIT関連企業をはじめ独自のエコシステムを持つ企業や業界は少なくない。そうした事例を取り上げた過去記事を紹介する。

ビジネス用語として用いられる「エコシステム」

 英語で「生態系」を意味するエコシステム(Ecosystem)。本来は自然界の状態を指す言葉だが、近年は「業界や製品が互いに連携、影響し合うことで収益の仕組みを生み出す」様子を示す言葉として、ビジネスの世界でも使われている。

 エコシステムの代表例としてしばしば挙げられるのは米アップルだ。同社の主力製品であるiPhoneやiPad、Apple Watch、Macなどの製品は互いに密接に連動しており、ユーザーにとっての付加価値や同社製品を購入し続ける動機づけになっている。またファブレス企業である同社の周囲はさまざまな部品メーカーや組み立て企業などが取り巻いており、これも一つのエコシステムといえる。

 この記事ではビジネス界のエコシステムについて、国内外の事例を過去記事から紹介していく。

プライバシー保護やプラットフォーム規制、Google Playは社会的責任に応えられるか

 アップルと並ぶ大手IT企業、米グーグルにも独自のエコシステムがある。同社のスマートフォン向けOSのAndroidで利用されるアプリストア「Google Play」がそれだ。

 Android端末は世界で25億台を超え(月間アクティブデバイス数)、アクティブユーザーも約20億人。これらの端末・ユーザー向けのアプリケーションは基本的にGoogle Play上で提供されており、アプリ開発者(デベロッパー)の売り上げは800億ドル(約8.8兆円)に上るという。いかにGoogle Playが大規模なエコシステムを構築しているかが分かる(いずれも2021年当時)。

 それだけに、エコシステムの参加者を保護することが大事になる。ユーザーやアプリ開発者が安心して利用できる環境の提供だ。

全てをのみ込む小宇宙

 同じく巨大なエコシステムを構築しているのが米アマゾン・ドット・コムだ。同社のエコシステムは、ECプラットフォームの「マーケットプレイス」とクラウドコンピューティングサービスの「AWS(Amazon Web Services)」。

 特に前者は高度な販売ノウハウと高効率の流通システムを活用し、「軒先を貸して、繁盛店を作る」ビジネスを展開している。実際に日本でも、アマゾンのエコシステムに加わることで急成長を遂げた企業は少なくない。

 この20年でアマゾンは他に類を見ない複雑な生態系を作り上げた。オープンで誰もが暮らしやすい世界だからこそ、あらゆる起業家が「成長の土台」として活用している。生物が地球を必要とするように、マーケットプレイスは不可欠な大地となりつつある。

「宇宙産業のアップル」になるために必要なこと

 「宇宙産業のアップル」を目指し、宇宙ビジネスのエコシステムを構築しようとしているのが、東大発のベンチャー企業、アクセルスペース(東京・中央)だ。自社開発の超小型衛星を多数打ち上げ、地球観測Webプラットフォーム「AxelGlobe(アクセルグローブ)」を提供する。22年1月の時点で、5基の衛星を使って地球観測データを提供している。22年中にはさらに4基打ち上げる予定だ。

 現在は、農業や防災、報道、地図製作、大規模精密農業などさまざまな分野で利用されている。アクセルスペースが目指すのは「“宇宙ビジネスにおけるアップル”のような存在」。アップルは自社のプラットフォームの上でたくさんのアプリ開発者が、独自のサービスをつくってエンドユーザーに販売している。同様に「アクセルスペースが宇宙から得たデータに付加価値を付けて販売してほしい。そういうエコシステムを宇宙ビジネスにおいてつくっていきたいと思っている」と同社の中村友哉代表取締役は語る。

シリコンバレー2.0「広域・分散」という進化

 ビジネスの世界でエコシステムを構築しているのは「企業」ばかりではない。企業を生み出す社会にも独自のエコシステムがある。例えばシリコンバレーもその一つだ。

 グーグルやアップルをはじめ数々のIT企業を生み出してきたシリコンバレーには、ベンチャーキャピタル(VC)、個人投資家、さらには弁護士などの専門家からなる企業支援のエコシステムが構築されており、数々の成長企業やイノベーションを生み出し続けている。この世界屈指のエコシステムには、コロナ禍においても膨張し続けるマネーが流れ込んできている。世界のVC投資のおよそ半分が米国、そしてその4割がシリコンバレーという状況は変わっていない。

深センはなぜ「ハードウエアのシリコンバレー」になったのか

 「ハードウエアのシリコンバレー」と呼ばれているのが中国の深センだ。数多くの工場が集中し、1990年代から「世界の工場」と呼ばれた同エリアでは、近年ハードウエアの受諾製造サービス(EMS)だけでなくデザインハウスと呼ばれる小規模設計業者も成長しており、さまざまな中小企業が連携して「スピーディーに設計・量産する」エコシステムが進化しているという。

最後に

 企業や製品が互いに連携し、相乗効果で企業の成長や製品の売り上げに貢献するエコシステム。アップルをはじめとするIT企業を中心に、さまざまな企業や業界、地域に独自のエコシステムが存在している。すでに独自のエコシステムを持っていたり、エコシステムの構築を目指したりしている企業は日本にも存在する。ビジネス界の生態系がどのように進化し発展していくか、気になるところだ。

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