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家庭内の取り組みだけでは完結しないため、国・地域・職場など、様々なコミュニティの理解や協力が求められる育児。昨今取りざたされている働き方改革や家庭と仕事の両立という文脈からも、育児に対する関心はますます高まっているだろう。本記事では、現代の育児に関するトピックスをまとめてご紹介する。

世界で標準化が進む男性の育児休暇

 まずは育児の世界基準から確認していこう。他国は国民の育児をどのように支援しているのだろうか。

 ドイツは2007年を節目に、父親の育児休暇取得を促す仕組みを導入した。当時、ドイツは日本同様に出生率低迷に苦しんでおり、男性の育児休暇取得によって出生率が回復したスウェーデンを参考にしたといわれている。

 新しい制度は男女合計で育児休暇に14カ月分の受給期間を設けたが、1人が最大12カ月分しか取れない点が特徴的だ。例えば母親が12カ月育児休暇を取った後、父親が育児休業を取得しなければ残り2カ月分の権利が「自然消滅」する。要するに父親が育児に参加しないと、国から得られる給付金が単純に減るわけだ。

 このようにして男性を育児に駆り立てているドイツをはじめ、男性の育児休暇取得は世界で標準化が進んでおり、取得期間も長くなっている。

育児休暇支援には管理職の意識改革が必要

 続いて民間企業の動向を見てみよう。

 従業員の育児休暇取得や短時間勤務を支援するためには、管理職の理解が必要不可欠だ。そこで、各社で“イクボス”を増やす動きが見られる。

 イクボスという言葉が生まれたのは2012年ごろといわれているが、その背景には、育児に対する管理職の意識が低いという実態があった。

 スイスの金融大手UBSグループは、イクボス養成の社内講座を金融業界で初めて開催。

 ほかにも大手製薬会社や会計事務所などの外資系企業、セブン&アイ・ホールディングスやコクヨ、日立ソリューションズといった日系企業もイクボス普及への取り組みを進めている。

資生堂が目指す「育児と仕事の両立支援」の次のステージ

 資生堂は1991年に通常の勤務時間を短縮できる制度を導入。

 その後も、2007年には時短勤務の美容部員に代わって社員が顧客対応などを行う「カンガルースタッフ制度」を設け、2008年には子どもが小学校3年生を終えるまで時短勤務で働ける体制を整えた。

 成果はすぐに上がったものの、時短勤務の美容部員と独身の美容部員などの間でシフトに偏りが生まれ、現場にはひずみが出てきた。

 そこで人事部が出した結論が、時短勤務を選択する社員も原則として全員、遅番や土日勤務のシフトに組み込むことだった。当時否定的な意見も出たが、この改革を機に退職したのは、約1200人いる時短勤務取得中の美容部員のうち30人ほどにとどまった。

 単に育児や時短勤務を支援するだけではない資生堂の動きからは、女性活躍推進の流れの先に生じ得る壁と、その打開策のヒントを垣間見ることができる。

母親の育児ワンオペを防ぐ方法

 では次に、各家庭で育児にどう向き合っているか事例をベースに追っていこう。

 ピクスタ代表取締役社長の古俣大介氏の例から見る。

 古俣氏は以前は会食などで帰宅が遅い日が続いていたという。しかし妻の入院を機に働き方を抜本的に変えた。

 以来、できるだけ家にいるようにして妻の育児ワンオペを防いでいる。そのために会食も、なるべく夜ではなく昼で調整する。

 そして、ベビーシッターやテークアウトなど、外部のサポートを積極的に活用する工夫も忘れない。その際、妻が「自分は働いていないのに外部に頼っていいのか」といった責任感や罪悪感を抱かぬよう、自ら提案することを心がけている。

 「『子ども3人育てるのは大変なんだから、どんどん頼ろうよ』と事あるごとに言っています」

これからの時代の育児で大切なこと

 続いて、早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄教授(記事掲載当時は准教授)の例を見る。

 子どもには好きなことを自由にやらせるべきか、それとも規律を重視させるべきか……。

 これは「子どもを預ける保育園や幼稚園、学校はどのように選べばいいのか」という点とあわせて、育児方針をめぐる議論の中でも重要なテーマであろう。

 入山教授は、自身の子育て経験と経営学的観点を交えながら、以下のように語る。

  • 人が成長するためには自己肯定感を高めることが重要。
  • ダイバーシティ経験を積むためには、同質性の高い教育カリキュラムは逆効果。

育児を助け合うSNSサービス「AsMama」

 各家庭の育児を支援するサービスも生まれている。

 2009年設立のAsMama(アズママ、横浜市)は、顔見知り同士が育児を助け合うSNSを提供する。

 住所や子どもが通う保育園などから特定のグループに振り分けられ、そのグループ内で助け合う仕組みだ。1時間500円の謝礼を支払うことで、預ける側の心理的ハードルが下がるよう工夫がされた(その後、謝礼は「気持ちだけ」も選択できるようになった)。

 また、独自に損害保険会社と契約し、子育てシェア利用時の事故に対して最大5000万円を支払う仕組みを構築。「他人の子を預かって事故が起きたら不安」という預かる側の心理的なハードルも下げている。

最後に

 現代の育児を取り巻く環境やサービスについてご紹介した。

 各個人の価値観に基づいた育児方針を模索していくことももちろんだが、国や地域、企業、家庭など各コミュニティーでどのような仕組みをつくれるのかを検討していくことが重要だろう。

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