「老害」という言葉が使われ始めて久しい。今回は本誌がこれまで取り上げた「老害」に関する記事を通じて、老害たる経営者やカリスマとの違い、老害予備軍であるミドル社員について解説した。また老害とは切っても切れない、世代間不公平や高齢者優遇の社会保障制度にも踏み込んでいる。

老害とは

 特定の業界などで実権を握る年配者を揶揄(やゆ)して「老害」と表現される。

 いつの時代においても生まれる世代間衝突の一種であるが、少子高齢化社会ゆえに逆三角形型の人口ピラミッドである現代において、特に言及されるようになった。

 また、年齢それ自体ではなく、保身のような態度を取ることを指して「老害」と表現されることもある。

老獪が老害に 企業価値下げる

 老害とは、SNS(交流サイト)や若者の間で使われる言葉だけではない。ビジネスの現場でも老害がささやかれる事態が起きていた。

 日本電産の有価証券報告書には「事業等のリスク」に「社長への依存」というあまり見られない項目があり、注目を浴びた。似たような表現はファーストリテイリングやソフトバンクなどにもある。

 どの企業も社長が強い力で企業をけん引する、いわば老獪さ頼みの企業と言えるかもしれない。

 企業価値と取締役の平均年齢を調べたデータによると、取締役の平均年齢が上がるにつれて、企業価値が下がるという相関関係も見られる。

 果たして老害とは何か。ビジネスに与える影響にはどのようなものが挙げられるだろうか。

トップの老害を悪化させるミドルの“初老害”

 保身とは、老害と呼ばれても仕方のない社長がその権力にしがみつくことを指す。

 企業のトップが権力を長く握り続けることは、企業にとって老害と言えるかもしれない。その老害の被害者はミドル社員だろう。しかし、ミドル社員も「保身」という形で企業に悪影響を与える、いわゆる初老害社員になるという。

 老害と呼ばれるもののうち、もっとも厄介なことが「自己認識のなさ」である。

 自ら害を発しているという認識がなく、部下や業務の足を引っ張っているとは思っていない。さらにミドル社員は保身に走り、老害と呼ばれる長期政権の社長を時にはおだて、時に非難する。

カリスマと老害 何が両者を分かつのか

 老害と呼ばれる年齢を迎えた人々の中にも、カリスマと呼ばれる人は多くいる。またカリスマと呼ばれる一方、老害と揶揄される人も少なくない。老害とカリスマとは紙一重のものではないだろうか。

 老害とは呼ばれず、むしろカリスマと呼ばれる経営者たちは、リーダーシップを強く発揮する。一貫性のある発言や経営行動、そして合理性など、周囲の人間が忖度(そんたく)を必要とせず、あくまでも企業のために行動するのだ。

 ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役(掲載時)の上田準二氏は、トップダウン・ボトムアップ双方の情報の流れがスムーズであることが重要だと語る。

 老害には「私欲」もつきものである。経営者は業績によって評価されるが、業績が悪化しても権力の座を手放さず、ポストにしがみつき、会社を私物化してしまう経営者は老害と呼ばれても仕方ないだろう。

 本記事ではカリスマと老害の差、そして老害にならないためにはどうすれば良いのかを解説している。

特集 さらば「老害」ニッポン 10の提言

 老害は経営だけの問題ではない。若い世代が抱く、高齢者世代との格差や政策への不満は老害という言葉で表される。日本にとって老害とは何だろうか。世間を騒がせる老人たち。少子高齢化が進む中、社会保障の負担ははっきりしないまま。若者が「老害」という言葉を使うのも無理はないかもしれない。

 本誌では老害ニッポンを変えるための10の提言を行った。人生前半の社会保障を充実させることや働き方改革を推進することなどの政策への提言を中心に、高齢者活用や死生観にまで踏み込んでいる。

世代間不公平への不満続出

 「老害」ニッポンから脱するには、世代間不公平の不満から目をそらすわけにはいかない。本誌独自アンケートによると、「公的制度は高齢者を優遇しすぎか?」という質問に対して、「そう思う」と答えた20代、30代は4割を超えた。また「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」まで含めると8割を超える結果となった。

 不満の理由には、高齢者の年金などをまかなうための借金のツケを若い世代が負っていることなどが挙げられた。

 一方、70歳以上の回答では「そう思わない」、「どちらかといえばそう思わない」が49.6%という結果で拮抗している。

高齢者優遇の是正へ、社会の「原則」を変える

 世代間不公平の原因には、高齢者を優遇する政策や施策が挙げられる。

 2015年末、高齢者に臨時給付金として3万円を配布する議論が持ち上がった。その一方、少子化対策への予算がないという国に対し、若手議員からは不満や疑問の声が上がった。政治が伝えるべきメッセージ、本当に必要な施策とは何だろうか。

 高度経済成長期から進めてきたさまざまな施策はバブル経済の崩壊とともに、時代とかみ合わなくなってきたはずだ。しかしながら高度経済成長期を歩んできた人々、つまり高齢者に合わせた施策が続いていることは否めない。

 政治は何度も、高齢者を優遇した社会保障制度にメスを入れようとしてきたものの、うまくいくことはほとんどなかった。高齢者優遇を是正するには、社会保障制度を表面だけを変えるのではなく、根本的に変えることが必要ではないかと考える。

 小泉進次郎氏、小林史明氏、村井英樹氏の3名が、高齢者優遇のニッポンと社会保障制度の根本的な改革について激論を交わした。

最後に

 「老害」は経営、ビジネスの現場だけでなく、日本の社会問題にも発展している。

 少子高齢化が進み、高齢者が増え続けることは目に見えている。そのなかで「老害」という問題に、私たちはどのように向き合えば良いのだろうか。

 「老害」ニッポンはこれからどうなるのか。私たちひとりひとりのあり方、行動にかかっているといっても過言ではない。

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