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2010年2月に、コミュニティ型ワークスペースを提供・運営する企業として創業された「ウィーカンパニー(旧ウィーワーク)」。2019年第3四半期時点で、世界33カ国127都市の625カ所で展開し、会員数は50万人以上に及ぶ。ウィーカンパニーとは一体どのような企業なのか、これまでのニュースを振り返りながら紹介する。

ウィーワークの創業からこれまで

 ウィーカンパニーの原型は、ニューマン氏とミゲル・マッケルビー氏が2008年5月に創業した企業「グリーン・デスク(Green Desk)」だ。

 主な事業内容は「地球に優しい」をコンセプトにしたコワーキングスペースの提供。ニューマン氏とマッケルビー氏は、2010年2月には同社を売却し、ウィーワークを創業。2017年には、ソフトバンクグループ(以下、SBG)から3億ドル(約340億円)を調達し、同社と合弁でウィーワークジャパンを設立。

 翌年2月には日本進出を果たすと、2019年1月に再度SBGから20億ドル(約2170億円)の調達とウィーカンパニーへのリブランディングを実施。そのときの時価総額は470億ドル(約5兆1300億円)にまで達した。

 しかし2019年、株式上場のための情報開示で公開された事業内容が酷評されたことなどをきっかけに、同社は米国証券取引委員会に提出していた上場申請を9月末に撤回。創業者のアダム・ニューマン氏も、CEOを退くこととなった。

ウィーワークのビジネスモデル

 ウィーカンパニーは、単なるシェアオフィス事業を展開するのではなく、パートナー企業と協力し、さまざまなITサービスや研修、教育や福利厚生、社会保険を提供する会員制のビジネスプラットフォームを目指している。ウィーカンパニーの出資者の1社で、主幹事として上場準備を進めていたJPモルガンは、決済サービスを低価格で同社に提供。

 また、マイクロソフトやアマゾンといったテック企業も、早くから割引で製品やサービスをウィーカンパニーに提供している。

 ウィーカンパニーのこうしたアプローチは、リモートワークを推奨する企業が増えたり、フリーランス人口が今後増えたりしていくことが予想される昨今、既存の働き方にイノベーションをもたらすものとして、ウーバーテクノロジーズやリフト同様、多くの投資家を魅了した。

 しかし一方で、そのビジネスモデルは、実質的には既存のレンタルオフィスやシェアオフィス事業と変わらないという見方もできる。事実、同社の現在のビジネスモデルには、テクノロジーを活用した要素はほとんど見られない。

9年間赤字が続く、ウィーワークの業績

 また、ウィーカンパニーは創業から9年間、黒字に転じたことがない。

 11月13日に発表された第3四半期決算は、純損失が12億5000万ドル(約1358億円)。前年同期の4億9700万ドル(約540億円)から大きく拡大。会員収入やサービス収入からの粗利益は8億800万ドル(約878億円)と、前年の4億5400万ドル(約493億円)から伸びが見られるが、共有オフィスの急速な増設により発生したコストを抑えられなかったことが主な要因だという。こうした事業拡大路線は創業時から続いており、ウィーカンパニーは、これまで黒字に転じたことがない。

 また、取り消しに終わった上場の直前、2019年7月には当時CEOだったのニューマン氏が、同社株式の売却や株式を担保にした借入金などで、7億ドル以上の資金を手にしていたことが明らかに。通常、上場直前にスタートアップ企業の経営者が株式売却することは、投資家たちにとっては好まれることではない。経営者がその会社の将来に自信がない証拠と見られてしまうためだ。

ウィーワークに対する投資家の見方

 こうした逆風もあってか、2019年8月には、多くの投資家たちは2000年にロンドン株式市場に上場した同社のライバル企業、スイスのIWG(旧Regus)に着目していたという。同社はスイスに本社を置き、ロンドン証券取引所に上場している、世界最大のワークスペースプロバイダー。「Regus」や「Open Office」「SPACES」といった、多様なブランドを有する。現在は世界110カ国超、1100都市超、3300拠点超に展開し、2018年12月時点での会員数は250万人を超えるという。

 IWGはここ日本にも進出しており、2019年3月現在、全国約37都市、139拠点以上のレンタルオフィスを展開しているが、2003年には米国事業の破綻を申請している。投資家が同社に着目するのは、ウィーカンパニーの将来性を考えるうえで、IWGの事例を参考にしようという思惑があったのかもしれない。

上場撤回、ニューマン氏退任の背景

 2019年8月、株式上場のための情報開示で公開された事業内容は、投資家やメディアから酷評を集めることになった。また、性差別や人種差別など、ニューマン氏への個人的な疑惑が、さまざまなメディアで報じられ、ついには孫正義氏も同氏に対してCEO退任を要求。結果的にニューマン氏は、経営的役割のない、非業務の執行会長となった。なお、同社は現在、新CEOとしてTモバイルのCEO、ジョン・レジャー氏の招聘(しょうへい)を検討している。

最後に

 ここまでウィーカンパニー(旧ウィーワーク)の動向について紹介した。シェアオフィスのプラットフォーマーを目指す同社は多くの期待を集めたが、現在その行方には暗雲が漂っていると言わざるを得ないだろう。

 上場撤回やニューマン氏のCEO退任といった逆風下で、同社はどう巻き返していくのだろうか。今後もウィーカンパニーから目が離せない。

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