リカレント教育とは、社会人になった後も必要に応じて学び直すことだ。生涯現役が望まれる現代において、リカレント教育はその時々に必要な能力を身に付けるために欠かすことができない。一方、企業にとっては学び直した人材の受け皿がなければ、優秀な人材の流出につながる可能性もあるという。今回はこれまでの記事の中から、リカレント教育に関する話題をピックアップして紹介する。

官民が注目する「リカレント教育」とは

 リカレント教育とは、社会人になった後もそれぞれのタイミングで学び直し、仕事に役立つ能力を身に付ける「社会人の学び」のことだ。平均寿命が延び、生涯現役が望まれる現代において、何歳でも学び直せるリカレント教育には大きな期待が寄せられている。実際、厚生労働省や経済産業省、文部科学省など国の機関も連携して、リカレント教育の支援に乗り出している。

 リカレント教育の取り組みに積極的なのは行政ばかりではない。民間企業にも、社員のリカレント教育に関心を持つところが少なくない。とはいえ企業内に教育の成果を生かせる受け皿がなければ学び直した社員の流出につながってしまう。今後はより一層、人材の流動化が進むと考えられている。

 なお企業によっては、リカレント教育と絡めた早期退職制度や45歳定年制などを導入するところもあるが、これらを評価する声もある一方で、不要な人材の切り捨てにつながりかねないとの指摘もなされている。

 この記事では、リカレント教育をめぐる最近の話題について過去記事から振り返る。

リカレント教育が再就職のカギ

 女性の活躍を推進するためにもリカレント教育が大きな役割を果たしそうだ。女性が働くには出産・育児によって一時中断した仕事上のキャリアを再び継続させることが求められる。しかし、出産や育児によるブランクが長ければ長いほど、復帰のハードルは心理的にも能力的にも大きくなる。

 リカレント教育は、そのブランクを埋めるカギとなる。独学では難しいスキルや知識を「学び直せる場」として拡充できれば、仕事に必要な能力を身に付けられ、再就職への心理的な負担も少なくなる。

「日本人に40歳定年の選択肢を」

 「100年人生」という言葉とともに、働き方やキャリア形成を再考する動きが広がっている。東京大学大学院の柳川範之教授が提唱する「40歳定年制」もそのひとつだ。

 柳川教授によると、現在の社会では「20年や30年ごとに、大きなスキルアップをする必要」があり、そのために「ある時期に改めて立ち止まって、皆がスキルアップに時間をかけられるような制度を作るべきだ」という。そこで、いったん40歳で定年退職すれば、次のキャリアに向けた準備を始めることができるというわけだ。

 しかし、リカレント教育について「何を学んだら自分のステップアップにつながるのかが分からない」とする声も少なくない。学び直し人材を受け入れる企業においては、役職ごとに必要なスキルを明確に示すことが重要になるという。

「世界に打って出る」日立、給与を変えないと無理だった

 2013年から14年にかけ、日本では前例が少ない「職務給」という給与制度を管理職に導入した日立製作所。ポストによって金額が決まる給与制度は、欧米では広く浸透している。外部コンサルタントを使えば、あるポストの評価を他社の同じ仕事内容のポストと比較できる。それにより、適正な給与水準で、優秀な人材を外部から確保しやすくなる。

 日立の職務給導入には「世界に打って出る」という狙いに加え、「社風の転換につなげたい」という願いも込められている。年功の要素が大きく、安心しきっている社員の気風を変えることも狙いのひとつだ。

 同社では、リカレント教育の場としてグループの研修機関の再編成も行った。就きたい地位に必要なスキルを学び、経験を積むことで「管理職は自らポジションを取りに行ってほしい」というメッセージだ。平等にチャンスを与え、ついて来ない社員は相応の処遇にする。

リカレント教育、副業、出向……外に出てキャリア再考

 テルモでは、2018年から「50歳になる社員を対象とする1日半の研修」を始めている。19年度は約200人を対象とし、年6回に分けて実施するという。

 研修の目的は、これまでのキャリアを棚卸しして「自身の価値観や能力、可能性」に気づいてもらうことだ。会社から与えられてきたキャリアを自ら切り開くものとして再定義し、社外でのリカレント教育に取り組んでもらいたいとの願いが、この取り組みに込められている。

日本の復活に欠かせないリカレント教育

 リカレント教育が「日本の復活に欠かせない」とみるのは、昭和女子大学 副学長・特命教授の八代尚宏氏。70歳まで働くとして、20歳くらいまでに受けた教育を50年間持たせることは「無理な話」と同氏は指摘する。

 新たなスキルを身に付け、能力アップするために必要なのが、40代ぐらいのタイミングで、大学・大学院などで学ぶリカレント教育だ。日本経済の「失われた30年」を取り戻すためには、社会人の学び直しと、そのための働き方改革が必要だという。

最後に

 社会人が「学び直し」をするリカレント教育。新たなスキルを身に付け、キャリアアップしていくためにリカレント教育は必要不可欠だ。国はもちろん民間企業や大学なども、その重要さを認識している。ここで紹介した事例をもとに、自分自身の学び直しのタイミングについても考えてみてはいかがだろう。

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