間伐材や農産物のかすなど、生物由来の有機性のエネルギー源をバイオマスという。大気中の二酸化炭素の増加を抑制できるエネルギー源として、地球温暖化防止の観点からも各国政府や企業から注目を集めている。この記事では、これまでに紹介したさまざまなバイオマスに関する取り組みを振り返ってみる。

再生可能で地球環境にも優しい「バイオマス」とは

 バイオマスとは、再生可能な生物由来のエネルギー源のことをいう。バイオマスの一例としては間伐材や廃材、古紙などの「林産資源」、もみがらやさとうきび、鶏ふんといった「農産加工残さ」が挙げられる。

 バイオマスの元となる生物(特に植物)が、大気中の二酸化炭素を光合成により吸収しているため、バイオマスを化石燃料の代替として使えば地球温暖化の防止にもつながると考えられている。また将来的に枯渇が予想される化石燃料に対し、バイオマスは再生や再利用が可能という点も大きなメリットだ。

 このようにバイオマスが持つ可能性は、企業にとって大きなビジネスチャンスになる。今回はバイオマスをめぐる企業の取り組みについて過去記事からピックアップする。

焼酎かす、うどん、豆腐で一石三鳥

 宮崎の霧島ホールディングスでは、焼酎の製造工程で発生するサツマイモのくずや焼酎かすといったバイオマスからメタンガスを発生させ、同じ敷地にあるバイオガスエンジン発電機の燃料として使用している。「バイオガス発電」は、食品廃棄物の削減・処理、リサイクル、再生可能エネルギー発電による売電という“一石三鳥”を期待できる画期的な取り組みだ。

 国内では他にも、年間推計6000tともいわれる「廃棄されたうどん」や「油揚げなどの製造工程から出る排水」をバイオガス発電に利用している事例があるという。

生物利用の物質生産、バイオエコノミーが急拡大

 バイオマスを原料とする繊維「セルロースナノファイバー」が注目を集めている。鋼鉄の5分の1程度の重量、鋼鉄の5倍ほどの強度、熱による変形は石英ガラス並みに少ないといった特徴を持つこの繊維の活用に取り組むのは、日本製紙や王子ホールディングス、中越パルプ工業、大王製紙など100社以上に上るという。

 藻類によるジェット燃料生産の研究も盛んだ。IHIを中心とするグループ、J パワー(電源開発)を中心とするグループ、デンソーを中心とするグループ、DICを中心とするグループ、そしてユーグレナなどが、すでに研究や実証実験に取り組んでいる。

16億枚が海へ! 深刻なマスクごみ、島精機が新興企業と組む理由

 コロナ禍でマスクの需要が増える一方、「推計15億6000万枚」のマスクが海に流出しているという。そのような状況下で注目を集めているのが、生物由来の「バイオプラスチック」を使ったマスクだ。

 このマスクを製造しているのは京都のバイオワークスという企業。同社が開発したポリ乳酸の繊維は100%植物由来で、しかも手術の縫合糸として使用されるほど安全性が高い。抗菌作用も高く、人にも環境にも優しいのが特徴だという。

バイオマス発電に“偽物狩り”の洗礼、日本で投資控えの痛恨

 一方、バイオマスの利用に水を差す動きもある。欧州委員会が2021年7月に公表した、再生可能エネルギー計画の改正案がそれだ。この改正案では、バイオマス発電の燃料として「燃料のための伐採」を禁止している。

 こうした背景には各国の森林戦略への懸念がある。国によっては建材や資材に使用できる木材まで燃料に利用しているとされ、これが事実なら持続可能というバイオマスの定義と矛盾しかねない。「Not all biomass is good biomass.(すべてのバイオマスが、良いバイオマスというわけではない)」というのが欧州委員会の見解だ。

 このような事態に日本でもバイオマス発電への投資を控える動きがあるといい、事業者に不安を与えている。

スプーンやハンガーも削減、「プラ循環法」で何が変わる?

 2022年4月に施行される「プラスチック資源循環促進法」。2020年のレジ袋有料化と同様に、プラスチックのスプーンやフォーク、歯ブラシ、ハンガーなどの利用削減が義務化されるという。

 すでに日本政府は「バイオマスプラスチック」の大幅な導入や、使用済みプラスチックの100%有効利用などを方針として掲げており、今後は小売業やサービス業を中心に、企業側の取り組みや努力が求められることになる。

最後に

 地球環境の維持や、資源枯渇を防ぐための一助として期待が集まるバイオマス。すでに民間企業では、生物由来の燃料やバイオプラスチックの開発や実用化が進められている。一方、ヨーロッパなど一部の地域ではバイオマス利用を厳格化する動きも見られる。今後のバイオマス活用がどのように進められていくのか、注意深く見守っていきたい。

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