社会が変化し、新たな常識が定着することを指す「ニューノーマル(New Normal)」。これまで主に経済分野で使われてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大による生活習慣の変化により、一般の人々の間でも広く知られるようになった。今回は最近の記事を通して、コロナ禍におけるニューノーマルに注目する。

社会の常識を一変させる「ニューノーマル」とは

 社会が大きな変化を遂げたあとに、新たな常識が定着することをニューノーマルという。この言葉が普及したのは2000年代以降のことで、当初はリーマン・ショックによる資本主義社会の混乱とその後の意識変化のように、経済分野を中心に使われていた。

 このように、ニューノーマルは一般にあまりなじみのない言葉だった。だが2020年に始まった新型コロナウイルス禍によって状況は一変する。マスク着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)の実施、巣ごもり消費やテレワークの常態化など、それまでとはまったく異なる生活習慣が多くの人々の「常識」になったことをニューノーマルと呼ぶようになった。

 現在、世界は多くの人を巻き込んだニューノーマルの真っ最中といえる。この記事ではコロナ禍を契機としたニューノーマルについて、最近の記事から振り返る。

ヤフー、副業人材100人採用の真意 オフィス前提の雇用は終わり

 ニューノーマルの典型といえるのが、働き方の変化だ。規模の大小にかかわらず多くの企業でテレワークや在宅勤務が普通のこととなり、オフィスに出社するのが当たり前、という常識が崩れた。こうした変化に、ヤフー執行役員の湯川高康氏は「もう働き方は以前には戻らない。デザインし直さなければ」と語る。

 20年10月、ヤフーではニューノーマルへの対応を念頭に「ギグパートナー制度」を導入した。事業プランアドバイザー、戦略アドバイザー、テクノロジースペシャリストの3領域で、104人の「副業人材(外部人材)」を受け入れている。

 ヤフーの親会社であるZホールディングスは21年3月、LINEと経営統合し新たなステージに入ることになっていた。ヤフーの藤門千明取締役常務執行役員CTOは「非連続成長を目指すなら積極的に異なる経験、異なるスキルを取り込まなければ」と導入の背景を語る。

「駐車場」を金の卵へと変えた米企業の着眼点

 新型コロナによるリモートワークの定着は、不動産価値にも大きな影響を与えると予想される。特に都市部では、駅前の価値が「間違いなく下がる」という。

 では、ニューノーマルで都市のランドスケープ(景観)はどう変化するだろうか。この問いに対する一つの解を提示しているのが米フロリダ州マイアミに本社を置くREEF Technology(リーフ・テクノロジー)だ。

 もともと駐車場管理サービスを手がけていたが、現在は「駐車場の一区画に大型トレーラーを駐車させ、中華料理からイタリアンまで4~6店舗を収容できる」サービスを進めている。敷地は駐車場なので、配送用のバイクや軽トラックを止めておくスペースに悩むこともない。「ゴーストキッチン」のようなデリバリーを専門としたキッチン設備と、配送拠点という2つの機能を併せ持つ新サービスは、まさに駐車場のニューノーマルといえる。

すっぴん力を磨く女性たち ヒット狙うなら「ナマケモノ」に学べ

 女性の生活習慣にも変化が起きている。テレワークや外出自粛の影響により外出の機会が減ったこと、またマスクの着用が一般化したことで、メイクの頻度や手法が変化しているのだ。

 こうした変化は化粧品メーカーにも大きな影響を与えている。口紅などの売り上げが減少する一方で、スキンケア商品が伸びているのだ。このような効率重視の消費傾向は「ナマケモノ消費」と呼ばれている。さらに、人に見せるための化粧より、自分のために必要なケアを行うなど、本質的な価値を重視する変化も起きているのだ。

出社率2割も当たり前、メリット次々に発見 新常態ワークスタイル

 新しいワークスタイルが常態化したことで、一部の企業は思わぬメリットを享受している。20年7月、カルビーは新しい働き方「カルビーニューワークスタイル」を開始。オフィス勤務の社員は原則テレワークとし、午前5時から午後10時の間で自由に働ける「フルフレックス」を導入した。

 時間にも場所にも縛られない働き方によって「あれも、これもテレワークでできる」という発見に結びつき、20年11月に始まった「オンライン工場見学」や「新卒採用の動画選考」につながっていった。

ロイヤルホールディングス黒須康宏社長「それでも外食は死なない」

 消費者が外出を控えるニューノーマルは外食産業に甚大なショックを与えた。外食大手のロイヤルホールディングスでは、20年12月期に275億円の最終赤字を計上している。同社の黒須康宏社長は今後について「各社がそれぞれ顧客を取り戻そうと躍起になっていますから、コロナ後の競争は激しさを増すでしょう」と厳しい見方をする。

 しかし同時に「ワクチンなど感染予防の対策が普及すれば、消費者が外食に戻ってくる動きも広がる」とする。その理由について、外食の機会が抑制されている分だけ「外食の楽しさや喜びを消費者は再認識しているはずです」と語る。

NTT、五輪無観客の大逆風 アピールの場失うこれだけの技術

 ニューノーマルによって影響を受けているのは「イベント」も同じだ。無観客で開催された東京五輪・パラリンピックをはじめ、今後は人が集まるイベントのあり方や観戦方法が多様化していくと考えられている。中でも注目が高まるのが映像配信などのリモート観戦だ。

 だが今回、通信分野での五輪ゴールドパートナーであるNTTが開発したのは、リアルな観戦体験の価値向上につながるものだった。多くの競技が無観客で開催されることになったため、その“新たな観戦体験”を享受できるのは、実際にイベント会場まで足を運べた一部の関係者だけになった。

 リアルな観戦体験の価値向上に注力した背景には、五輪の映像の配信権をNHKと民放テレビ局が握っていることも挙げられる。ニューノーマルを見据えると、イベント会場など人が集まる場所だけでなく、家庭などでも臨場感が高まるような技術の開発が求められている。

最後に

 大きな変化によって、新たな常識が定着するニューノーマル。現在、世界は新型コロナ禍の影響でまさにニューノーマルのただ中にある。これまでの生活習慣やビジネス習慣が一変したことで、企業にも「働き方」や「サービス」の変化が求められている。新型コロナ禍によるニューノーマルを生き残るための企業の取り組みに、今後も要注目だ。

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