コト消費とは、モノの所有ではなく体験や経験を重視した消費者行動のことを指す言葉だ。2000年以降はさまざまな業界でコト消費をターゲットにした商品・サービスが登場してきたが、新型コロナに伴う外出自粛で、その多くが重大なダメージを受けている。ここではコト消費をめぐるそうした動向について、これまでの記事からピックアップする。

コト消費とは?

 コト消費とは、体験や経験を重視した消費行動のことをいう。たとえば旅行や演劇鑑賞などが典型例だ。これと対になる言葉はモノ消費で、高度成長期の「三種の神器(冷蔵庫・洗濯機・掃除機)」に象徴されるような、モノの所有を重視した消費行動を指している。

 コト消費という言葉が一般に使われるようになったのは2000年ごろからだ。消費者の価値観やお金の使い方がモノ消費からコト消費へと大きく変化し、体験型の商品やサービスを扱う企業や店舗が数多く登場するようになった。しかし20年からの新型コロナウイルス禍で多くの人々が外出を控え、コト消費を扱う一部の業界、たとえば旅行業や宿泊業は致命的なダメージを受けているという。

 この記事ではコト消費をめぐる近年の動向について、過去記事から振り返っていく。

地方百貨店、大量閉店時代の救世主は?

 大阪府枚方市で、百貨店が退店した跡地に「枚方T-SITE」が進出した。地方の百貨店が売り上げ減少に苦しむ中、T-SITEは「平日なのに地元の人々でごった返している」ほどの大盛況だ(16年10月当時)。

 人気の秘密はコト消費。蔦谷書店とTSUTAYAを核に、カフェなどの飲食店、雑貨・衣類・化粧品などを扱うショップ、英会話教室、子供が無料で遊べる室内遊具スペースなどがそろい、親子連れでも楽しめるのが特徴だという。

男性アイドルブームがやってきた!

 コト消費の典型例ともいえるのが「アイドル」だ。メジャーなアイドルだけでなく地方発のアイドルにも熱心なファンが付き、毎週末のように各地でライブが行われている。

 こうしたアイドルブームの背景には「ネットの活用」があるという。歌番組の減少などでプロモーションの機会が減ったアイドルたちが、SNSなどのインターネットサービスで積極的に情報発信を行い、それが幅広いファン層を引き寄せているのだ。

カラオケ店からカラオケ消える?

 同じコト消費を扱う業界でも、明暗が分かれている。その典型がカラオケだ。かつては多数のカラオケ店舗を運営していたシダックスは、「ひとりカラオケ」の需要増など消費者の変化に対応しきれず事業売却を余儀なくされた。

 これとは対照的に成功を収めているのが、AOKIホールディングス傘下の快活フロンティアが運営するカラオケチェーン「コート・ダジュール」。店舗の特徴は映像観賞をするシアタールームや楽器の練習ができるステージルーム、高級感あふれるVIPルームなどで、「歌わない」需要を取り込んだ結果、10年間で約70店舗もの規模拡大を達成している。

旅行レジャーの新興企業は大打撃、売り上げ9割減を耐え忍ぶ

 新型コロナにより苦境に立たされるコト消費。特に旅行業界では「今回は次元が違う」というほど危機感を募らせている。レジャー・体験予約サイト「アソビュー!」を運営するアソビューも、そうした企業の1つだ。

 2019年6月にはIPO(新規上場)を見据えるまで成長していたアソビューだが、21年3月時点で予約サイトの流通総額は計画の95%減。いつまで続くか分からない状況の中、「今は1円でも多く利益を上げて、1円でも多く販管費を下げるしかない」という。

 同社では人件費や広告費などを6割減らす一方で、4月から新たにコンサルティングサービスを開始した。ウェブサイトの構築、サービスの計画立案、人材採用のコンサルという「異業種」に進出することで、コロナ禍を乗り切ろうとしている。

串カツ田中の非常識戦略 フライヤー・串カツセットが人気の理由

 人気飲食店「串カツ田中」が、冷凍串カツと「フライヤー」のセットを販売している。特にフライヤーは「既製品の見た目にアレンジを加えただけの商品」であるにもかかわらず、発売からわずか5分足らずで完売するほどの人気を集めた。

 人気の秘密は、やはり「コト消費」だ。卓上で使える小型の焼き鳥焼き器に子供たちが夢中になる様子を見て、「この『コト消費』は串カツにも応用できるのではないか」と考えたのが商品開発のきっかけになったという。

目指すはオンリーワン。業態見直し、SNS発信は不可欠

 コロナ禍で「みんな集まってワイワイやるイベント」が消滅した結果、これまでイベントによる集客に頼ってきた企業の多くが「メルマガ、ブログ、SNS、動画」などに注目している。飲食店はもちろん物販店でも、オンラインで情報をどう流すか、SNSをどうやるか、どう動画を作るかに力を注いでいるという。

 新たな時代のコト消費にどのように対応していくか、知恵と工夫と行動力が求められている。

最後に

 モノの所有より体験や経験を重視するコト消費。特に2000年以降、旅行業界やイベント産業などはもちろん、さまざまな業界でコト消費のニーズが拡大してきた。しかし2020年に発生した新型コロナの影響で、コト消費を扱ってきた多くの業界が壊滅的なダメージを受けている。これらの企業が今後どのように生き残っていくか、それぞれの創意工夫に注目していきたい。

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