少子高齢化により生産年齢人口の負担が増し、経済成長が阻害される人口オーナス。日本を含む先進国や、中国・韓国などの新興国が直面している課題だ。今回は各国が抱える人口オーナスの課題と、日本の経済成長に向けた識者の提言などを過去記事から紹介する。

少子高齢化が経済成長の停滞を招く「人口オーナス」

 人口オーナスとは、生産年齢人口に対して従属人口(14歳以下と65歳以上)の割合が上昇して経済成長が阻害されている状態のこと。反対に生産年齢人口の割合が上昇することを人口ボーナスという。どちらも米ハーバード大学教授のデビッド・ブルームが21世紀初めに提唱した概念だ。

 従属人口の増加は社会保障費の増大につながる。人口オーナス期には社会保障費を負担する生産年齢人口が相対的に減少するため、1人当たりの負担が増えて消費が低迷し、貯蓄率も減るため経済成長が阻害されるという仕組みだ。

 1990年代後半から少子高齢化が進む日本を筆頭に、多くの先進国はすでに人口オーナス期に入っている。また高度成長が続いていた中国や韓国なども人口オーナス期に入っており、世界経済への影響も懸念されている。

 この記事では人口オーナスをめぐる日本と世界の現状と、課題解決に向けた提言を過去記事から振り返っていく。

少子高齢化が世界を低成長に導く

 エコノミストの河野龍太郎氏によると、日本は90年代初頭に人口ボーナス期を終え、人口オーナス期に移行したという。原因となったのは「豊かさ」だ。日本をはじめとする先進国では社会保障の充実により、「老後のために子供をつくり、面倒を見てもらう」必要がなくなったため、少子高齢化が進んでいるという。

なぜ中国の若者はその「家族写真」を恐れたのか

 人口オーナスは先進国だけの課題ではない。長年にわたり高度成長を続けてきた中国も2013年までに人口ボーナスから人口オーナスへ転換した。人口の老齢化は徐々に速度を増しており、この傾向は少なくとも今後25年は続くと予想されている。そんな中で、1人の若者と数人の高齢家族が写った1枚の写真が議論を巻き起こした。

韓国、通貨危機以来の低成長予測

 韓国も17年から人口オーナス期に入った。韓国政府の企画財政部は17年の実質経済成長率を2.6%と展望したが、2%台という予想は1999年の外貨危機以来だ。メディアでも「人口オーナスの先輩」である日本の事例を盛んに取り上げており、日本に学ぼうという動きも出ているという。

2100年 日本はこうなる

 人生100年時代の日本について、「2100年には『無子高齢化社会』が到来する」という指摘がある。生産年齢人口は現在の半分以下の4000万人を割り込むという予想だ。しかし適切な政策やテクノロジーの活用を推し進めることで、人口オーナスによる課題の多くは克服できるという。

75歳まで働く社会の現実味、「年齢不問社会」をどうつくる?

 人口オーナスによる課題に対処するため、65歳から74歳までを生産年齢人口に加えるという考え方もある。例えば2040年の生産年齢人口は約5900万人になると予想されているが、ここに上記の年齢層を加えると約7600万人となり、2020年時点の生産年齢人口の約7400万人を上回る。とはいえこのプランを実現するには「75歳までを現役世代とする社会構造の大転換を、国民全体で前向きに受け止め」「社会通念を変える」ことが必要だ。

飲食・サービス・流通業の幹部領域では移民がもう常態化している

 日本の生産年齢人口を増やす現実的な手段として挙げられるのが「移民」の受け入れだ。すでに飲食・サービス・流通業の分野では移民が活躍しているケースも多く、全就業者の3%に相当する200万人近くに上っている。

「人口増加=経済成長」からの決別

 「人口増加と経済成長はリンクする」という意識からの脱却を提唱する声もある。人工知能(AI)やロボティクスを活用すれば、人口を増やさなくても経済成長は可能という考え方だ。これを実現するためには、日本企業がGAFAをはじめとする海外プラットフォーム勢の脅威を認識し、情報収集と事実に基づいた将来予測をすることが欠かせないという。

最後に

 日本や欧米の先進国、そして中国や韓国など、多くの主要国が人口オーナス期に入っている。だが先頭を走る日本にとっては、他の国にさきがけて知見を積み上げるチャンスだ。創意工夫や技術革新、国民の意識改革によって、再び経済成長の道筋を描ける日が来ることを期待したい。

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