世界中で深刻化する水不足。降水量の少ない国や地域はもちろん、降水量が比較的多い日本でも渇水被害が発生することがある。今回は近年の水不足の様子に加え、水不足解消に向けたさまざまな取り組みを過去記事から振り返ってみる。
国内外で深刻化する「水不足」

水不足とは、飲料水や灌漑(かんがい)用水など暮らしや産業にとって必要な水が十分に調達できない状況のこと。日本は世界的に見て「水が豊かな国」とされるが、1970年ごろより少雨の年が増えており、それに伴い渇水被害が発生するケースもある。
一方、海外にははるかに深刻な水不足に苦しむ国々も多い。世界人口の4割以上に相当する約36億人が水不足に悩まされており、2050年にはその割合が世界人口の半分に達するという予測もある。
世界中で見られる水不足の原因はさまざまだ。人口増加や産業発展に伴う水不足もあれば、気候変動による水不足、さらには開発による水源破壊が水不足を引き起こすケースもある。
この記事では国内外の水不足の事例に加え、水不足の課題解決を目指す企業の取り組みについて過去記事から紹介していく。
水不足はサプライチェーン変革で乗り切れ
1955年以降、「渇水」が発生しなかった年はない。特に水不足の傾向が高いのは首都圏だ。水不足は、水のサプライチェーン(供給網)が直面する大きな環境変化が影響している。1つは地球温暖化の影響による気候や天候の変化だ。もう1つは、社会の変化だ。人口減少によって、水道利用者が減少する中で、設備の維持と更新に必要な費用をどう工面するかが大きな課題になっている。
トヨタも生産停止 水不足が世界で深刻化、「勝ち組」企業選び活発に
資産運用業界では水に関わる事業を手掛ける企業に投資する「水関連株ファンド」も相次いで立ち上げられている。背景には世界の実情を踏まえた投資家の危機意識と、解決策を求める動きがある。
例えば2022年8月、トヨタ自動車は干ばつが原因の電力不足を理由に、中国・四川省の工場で操業を停止した。また国連によると、現在23億人が切迫した水不足にある諸国に暮らしている。水に絡んだリスクはもはや遠い世界の出来事ではなく、足元で起きている現実なのだ。
世界を襲う水不足と過剰
人口が最速ペースで増加するアフリカのチャドとその周辺では、この間、国境に接するチャド湖の水がほとんど干上がってしまい、深刻な水不足に陥った。その結果約3000万人が壊滅的な影響を受け、農家は職を失い、イスラム過激派「ボコ・ハラム」の台頭につながったという。一方、東南アジア諸国では、真水の不足に海面上昇が追い打ちをかけている。
TOTOウォシュレットを世界の高級ホテルに普及させた「秘策」
日本と世界の水不足解消のため、企業もさまざまな努力を続けている。その1つがTOTOのウォッシュレットだ。トイレの最高級ブランドとして世界に浸透する同社の製品だが、その中には米国の厳しい節水基準も満たす節水型トイレが求められた。そうした背景から生まれたのがタンクのないトイレ「ネオレストEX」だ。
デジタル時代に輝く職人技 1000分の1ミリの精度で挑む水問題
東大阪市に工場を持つDG TAKANO(東京・台東)は、一般的な水栓ノズルに比べ水の使用量を最大95%減らせる「Bubble90(バブル90)」を開発。ノズルの構造部品が100分の1ミリ違うだけで95%節水はできなくなるという。同社は有名レストランチェーンなど3万以上の飲食店のほか、歯科医院や工場などにも販路を拡大。米国やオーストラリア、アフリカ諸国などに輸出している。
空気から飲料水をつくり出す、コストは1リットル2円以下
空気から水を取り出す研究も行われている。米国の建築家、デイビッド・ハーツ氏が設立した米スカイソース社が開発した水発生装置は、再生可能エネルギーのみを使って、空気から「1日2000リットル以上」の水を「1リットル当たり2セント以下」でつくり出すことに成功している。
最後に
地球温暖化による環境の変化をはじめ、さまざまな要因で水不足が起きている。安全な水の確保は国連のSDGs(持続可能な開発目標)の項目の1つにも設定されており、その達成は世界的な課題だ。もちろん日本も例外ではない。私たち一人ひとりの節水努力はもちろんのこと、水不足に取り組む官民の取り組みが求められている。
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