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 日本のトップメーカーであり、世界有数の総合電機メーカーとして名を誇る日立製作所。歴史がありながらも、今もなお、国内に止まらずグローバル市場で活躍を続けている。その背景には、過酷な市場競争や経営・事業の中での英断があった。

 本記事では、過去のニュース、インタビューを通して、日立の主要トピック、近年の動向をまとめて紹介する。

 「市場競争」「グローバル化」「テクノロジー」「組織」という重要なトピックから、日立がどのような打ち手を講じてきたのか、本誌過去記事をもとに辿っていこう。

総合力では市場優位性を保てなくなった、今後の打ち手は?

 日立グループは持ち前の総合力や事業領域の広さを強みとしていたが、時代は変わり、「総花経営」で勝つことは難しくなった。

 そこで、事業の剪定(せんてい)に乗り出した。情報通信、電力、インフラなどに経営資源を集中させる一方、非中核とみなした事業からの撤退・縮小を決断した。その結果、11年3月期から連続で純利益が過去最高を計上するなど、「V字回復」を果たしている。

 特に事業再生・構造改革に力を入れたのが、テレビ事業だった。その流れについて見てみよう。

テレビ事業の完全撤退や各事業の整理

<日立、脱テレビまで苦難の10年>
2002年 ITバブル崩壊で過去2番目の赤字、2万人規模の人員削減
2003年 家電や産業機器を会社分割
2004年 LSI(大規模集積回路)事業を分離しルネサステクノロジを設立
2005年 トキコなど買収し自動車部品強化
2006年 薄型テレビの増産競争が激化
2007年 クラリオンを買収
2008年 原子力事業を分割し米ゼネラル・エレクトリック(GE)と合弁設立
2009年 リーマンショックで過去最大の赤字。株主資本比率が大幅に低下し、経営状態は危機的に
2010年 経営陣を刷新、公募増資などで財務強化、上場5社をTOB、パネル工場売却
2011年 社会イノベーション事業へ経営資源を集中、純利益が過去最高を更新
2012年 中小型液晶パネル事業を東芝、ソニーと統合
2013年(予想)
*当時
テレビ自社生産を終了

 元来、電機メーカーの象徴とも言えるのが、テレビ事業であった。技術に対して自信をもつ日立であったが、アジア諸国でのコスト戦略に耐えうる競争性を持ち得ていなかったことで「技術力を過信しない」方針をとった。つまり、拡大するのではなく、縮小化路線をとることを決めた。

 2012年には、薄型テレビの自社生産から完全撤退すると発表。

 これは、経営陣はスローガン「遠ざける事業と近づける事業」のもと、成長戦略の構築を優先したものであった。テレビ事業に見切りをつけたことがきっかけとなり、2011年3月期の決算では、過去最高益となる2388億円もの純利益を創出するに至った。

グローバル市場で勝つために日立は”何”を変えたのか?

 2014年、日立製作所が社長交代を決め、グローバル化の加速へ踏み出しタイミングだった。今の日立の課題、変化させるべきこと、米GEや独シーメンスとどう伍していくのかについて、東原敏昭氏が語った。「中期経営計画で掲げる売上高10兆円の目標を達成する自信は?」など、気になる質問へも真摯に回答いただいた。

日本式から脱却。英国へ事業者移転・初の外国人トップを起用

 日立製作所が鉄道事業のグローバル化へ向けて、英国に事業本社を移し、日本式を改め、世界市場で戦うための人事、組織、ビジネスモデル改革に動き出している。

 市場規模20兆円と言われる世界の鉄道ビジネスを取りにいくためには、染み付いた日本式を抜け出す必要があった。日立本体の事業部門に初の外国人トップを起用し、これまでとは一線を画するグローバル化を推進していった。

いち早く、IFRS(国際会計基準)へ

 グローバル化の中で生き残るには、海外企業のM&A(合併・買収)を環境変化に応じて素早く仕掛けられるようにしなければならない。そのためのカギを握るのがIFRS(国際会計基準)だ。のれんの非償却、世界一体経営など利点はあるが、リスクも大きい。日立製作所は2015年3月期から「IFRS」を導入した。

日立が掲げるAI、IoTの推進とその姿勢

 2018年、IoTやAIを活用する第4次産業革命の波が日本の産業に波及してきている。最新のデジタル技術を駆使する「社会イノベーション」を事業の中核に置いてきた、日立製作所会長・中西 宏明氏は「ITを支えるデータを、どのように扱うかという点」が重要になると語っている。

日立の総合力を武器に、IoTの活用を邁進させる

 日立はより一層の、IoTの活用、機能向上を目的とした「ハロー!ハピネス」というキーワードを掲げた。さまざまな企業が技術投資に取り組むなかで、IT(情報技術)とOT(運用技術)とプロダクトの、3つを持つ日立の総合力で実現できる強みを提唱した。

IoT売り込む「4万人」の人材育成を進める

 業績回復にめどをつけ、IoT事業を強化している日立製作所は、人材育成を急ピッチで進めている。IoT事業、導入を促進するには、顧客の課題を理解して解決策を提示できる人材が不可欠だ。3年間で4万人を育てた研修現場の実態や、社員の働き方について解説している。

先進のGEと差別化。決め手は汎用性

 IoT技術を活用したシステムの導入を計画する企業向けに、データ分析などの各種機能を提供すると表明した。「当社で提供する各種機能はあらゆるメーカーの機器で使えるようにする」と、本事業の先行企業であるGEとの違いを強調している。

管理職が行動目標を宣言する、日立の働き方改革

 日経WOMANと日経ウーマノミクス・プロジェクトによる「女性が活躍する会社ベスト100」で、総合ランキング10位に入り、採点カテゴリでは「女性活躍推進度」が1位、「ダイバーシティ浸透度」が2位と高スコアを獲得している。社内で働き方改革をどう推進していくのかを解説している。

日立の新役職「CLO」とは?

 日立には、CLO(チーフ・ルマーダ・オフィサー)という役職がある。IoT基盤としてルマーダという言葉を掲げ始め、関連事業の売上成長を目標としている。事業、社内外においてルマーダをけん引する、「旗振り役」として現在13人にそのポストが与えられている。

IoTを軸に子会社の絞り込みを本格化

 かつて御三家とされていた、上場子会社である日立化成、日立建機の売却の検討に入った。

 日立の東原敏昭社長兼CEO(最高経営責任者)は、「IoT戦略に親和性がある事業は積極的に残すが、強みがプロダクト(商品)のみでコモディティー化する可能性がある事業は外に出さざるを得ない」と述べている。

オープンイノベーションを推進!「協創の森」を開設

 日立は国分寺の中央研究所を「開放」することで、イノベーションを生み出し、事業化のスピードを上げる効果を見込んでいる。「従来は自社製品の開発だけでもビジネスとして成立していたが、製品がコモディティー化する中では、顧客の抱える問題を解決するところまで踏み込まないと難しくなった」という背景があるとのこと。

マネジメント・IT・OT教育を一貫して行う「日立アカデミー」

 「既存事業の変革につなげる」ことを目的として、日立アカデミーは全社員がデジタル教育を受けられる体制を整える。全社的にITの最新動向、IoTの仕組みや要素技術、業務革新の手法などを学び、全社のデジタル技術の活用力をアップしていくという狙いがある。

最後に

 ご紹介してきたように、日立は過酷な市場競争を乗り越え、今のグローバル市場でのポジションを得ている。特に、グローバル市場で戦うことを主軸に置いた戦略へのシフト、その背景にある経営層の英断は重要な契機になったと言える。

 「IoT」「AI」など、今後の市場や事業成長には欠かせないインフラとなる分野への投資や研究が活発な点においても、日立の動向から目が離せない。