東京都が2025年4月の施行を目指す太陽光パネルの設置義務化。世界的に脱炭素社会の実現が急がれる中、国に先行する政策として注目されている。一方で太陽光パネルを使った発電には課題も少なくない。今回はこうした話題について過去記事からピックアップしていく。
東京都が国に先行して取り組む「太陽光パネル設置義務化」

太陽光パネル設置義務化は、東京都が国に先行して取り組む政策だ。都ではハウスメーカー等の事業者を対象に、新築物件への太陽光パネル設置を義務とする。工場や事業所など一定規模以上の建物に義務付ける例はあるが、新築戸建てで義務化されれば全国初となる。25年4月の施行を目指している。
個々の建物すべてに一律に設置するのではなく、屋根の面積が一定規模未満の住宅等については設置対象から除外する。義務対象の事業者がどの建物に太陽光パネルを設置するかについては、日照などの立地条件や、住宅の形状等を踏まえて判断する仕組みだ。
この記事では東京都の太陽光パネル設置義務化や太陽光発電をめぐる課題について過去記事から紹介していく。
太陽光パネルの設置を義務化 住宅の脱炭素、東京都が国に先行
東京都が太陽光パネル設置の義務化に乗り出す。25年4月より実施したい考えだ。義務化はビルも含めた新築の建物が対象となる。このうち戸建て住宅については、年間2万4000棟程度の住宅を対象に、約50社の大手住宅メーカーが実施することになるとみられる。
都内の地域ごとに、メーカーが建てる棟数のうちどれだけの割合でパネルを設けるかを決める。日照量が多い地域ほど設置割合が高くなる。例えば、高層ビルが多く、住宅に日が当たりにくい千代田区や中央区は30%、一方で目黒区や世田谷区は85%となる。狭小住宅は対象外になる予定だ。
炭素中立に不可欠なエネルギー確保、日本が取り得る6つの策
太陽光パネル設置によりカーボンニュートラル(温暖化ガスの実質排出ゼロ、炭素中立)時代に適合したエネルギーを確保するには、どうしたらよいのだろうか。難度が高いとはいえいくつかのオプションが考えられる。例えば、「国内再生可能エネルギー(太陽光・風力)を大量に導入する」というオプションでは、「耕作放棄地や農地にできる限り設置する」「可能な限り多くの建物に取り付ける」といった、従来の発想や制約を超えた取り組みを、官民を挙げて進める必要がある。
太陽光発電の反対運動が40件、「後追い条例」で問題複雑化
とはいえ太陽光パネルの設置には課題も多い。国内では12年の「固定価格買い取り制度(FIT)」開始以降、太陽光パネルの設置が急増した。しかし景観などへの懸念から地域住民が反対運動を起こし、事業を中断・断念するケースも増えているという。また豪雨により太陽光パネルを設置した斜面が崩落し、新幹線が一時運休するといった被害も出ている。行政の規制が遅れたしわ寄せが事業者や開発地域に及んでいるとみることもできる。
“再エネ先進国”テキサスの挑戦
米テキサス州では、農家や牧場などが太陽光発電をコスト削減の手段として利用している。少しでも発電した電力を売れば、農牧業に加えていくばくかの収入を同じ土地から得ることができる。一方、再生可能エネルギーのプロジェクトが猛烈なテンポで進み、テキサス州では最も生産性の高い農地を侵食する恐れも出てきている。
再生可能エネルギー開発が希少種を絶滅に追いやる恐れ、米国
太陽光パネルが希少種を絶滅に追いやると心配する声もある。米国では過去10年間で太陽光や風力による発電量が4倍に増えた。だが、こうした「再生可能エネルギー・ランドラッシュ(土地争奪戦)」が現地に生息・生育する希少種や手付かずの生態系を危険にさらすというのだ。
その太陽光パネル、人権侵害の疑いあり SDGsの本末転倒
太陽光パネルをめぐる課題は人権問題にも及ぶ。太陽光パネルの原料となる多結晶シリコンは中国が8割弱の世界シェアを占めている。だが、中国国内の半数を供給する新疆ウイグル自治区で強制労働の疑いが強まっている。これらの生産者は米国による制裁対象となっている。
日本はパネルや材料である結晶シリコンの輸入を中国に大きく依存している。強制労働の事実が明白になれば、代替先の確保を迫られる。その結果、パネル価格が高騰し電気料金に跳ね返る可能性もある。日本は脱炭素と人権との両にらみで再エネ戦略を構築し直す必要がある。
最後に
脱炭素社会の実現に向けて積極的な導入が進む太陽光パネル。東京都の太陽光パネル設置義務化はその最先端の取り組みといえる。その一方で、太陽光パネルの生産や設置に伴う課題が国内外で報告されている。再エネの導入・拡大には、国や自治体の政策、技術革新などによって課題を解決する努力が求められている
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