新しく登場する製品やサービスを、いち早く受け入れる「イノベーター」。全体のわずか2.5%という少数派でありながら、彼らが技術や経済の進歩に及ぼす影響は決して小さくない。この記事では日本のイノベーターに注目し、その行動や果たした役割について振り返ってみる。

イノベーターとは?

 イノベーターとは、新しく登場した製品やサービスが普及する際に「最も早く受け入れる」人たちを指す。米スタンフォード大学エベレット・M・ロジャーズ教授が提唱した考え方で、イノベーター理論と呼ばれる。

 イノベーター理論によると、新製品や新サービスを受け入れる層は5つの段階に分かれている。受け入れが最も早いのはイノベーターで、全体の2.5%。次いで13.5%がアーリーアダプター、34%のアーリーマジョリティー、同じく34%のレイトマジョリティー、16%のラガードと続く。

 イノベーターは「新しい」ことに価値を感じ、コストやリスクの高さはある程度許容する。このためイノベーターの注目を集めたものが一般に支持されるとは限らず、むしろ重要なのはアーリーアダプターの動向だとされる。とはいえ技術や経済が発展する過程において、いち早く行動するイノベーターの存在は欠かせない。

 今回は日本を代表するイノベーターについて、過去記事からピックアップしてみる。

平賀源内を生んだ「国産化」という渇望

 最初に紹介するのは江戸時代中後期のイノベーター、平賀源内。一般には「エレキテル」の発明者として有名だが、彼の真価は当時のハイテク製品である「陶器」の国産化にあるという。それまで陶器は中国やオランダからの輸入が中心だったが、それを日本で生産することで「日本の土をもって、唐・阿蘭陀(オランダ)の金銀を取り候」と考えたのだ。

 また結果的に失敗したものの、漢方薬として重宝されていた芒硝(硫酸ナトリウム)の国産化、「火浣布(かかんぷ)」と呼ばれるアスベスト製の燃えない布の量産化などに取り組んだのも源内の功績とされる。

スピード・規模・独創性 いつの間にか「平凡企業」

 日本の国産技術を高める取り組みは現代も続いている。そうしたイノベーターの一人が本田宗一郎氏だ。彼が率いたホンダは「世界のホンダ」と呼ばれ、英国では「乗用車生産の約1割」を占める工場を稼働し、米国の厳しい環境規制をクリアする「CVCCエンジン」を開発した。

ヤマダHD会長「アマゾンさんは勝てませんよ、この業界では」

 「家電量販チェーン」という分野でイノベーターとなったのは、ヤマダホールディングスの山田昇会長だ。1973年にヤマダ電化サービスを創業した山田氏は、その後「地の利」と「先行の利」を生かしたチェーン展開で家電量販モデルを切り開き、ヤマダホールディングスを「国内最大の家電量販店」にまで成長させている。

ユニクロも採用!高級ブランドも魅了!“紀州のエジソン”の発明力

 「紀州のエジソン」の異名をもつイノベーターが、島精機会長の島正博氏だ。24歳で会社を創業し、80歳を過ぎた今も現役の経営者として活躍する島氏。約650件もの特許を持つ発明王としてはもちろん、「アパレル産業の大量生産モデルに限界が来る」ことを予測し、製造工程で発生するカットロスという無駄を防ぐことで資源節約に貢献する「ホールガーメント編み機」を開発。多くのアパレルメーカーから注目を集めている。

過去最高益で「世界のソニー」再び 社史に見る「井深イズム」という原点

 日本を代表するイノベーターの一人が、ソニー(現ソニーグループ)の創業者、井深大氏だ。早稲田大学理工学部在学中に「走るネオン」で世界を驚かせた井深氏は、戦後にソニーの前身となる会社を設立、「ウォークマン」などで世界をリードする企業へと成長させた。

ESGという追い風「課題先進国」が生む 一点突破イノベーター

 限られた国土や自然災害など、障害の克服を目指して誕生したイノベーターもいる。最近の注目は、

  • 水素エネルギーの安価な生産に取り組むハイドロゲンテクノロジー
  • 古着を材料にバイオジェット燃料を作るグリーン・アース・インスティテュート
  • 「廃棄されたウニ」から循環型のシステムを構築するウニノミクス
  • AIにより「災害地域を1時間以内に正確に予測」するシステムを開発するアリスマー

 といったスタートアップ企業だ。

最後に

 新たに登場してくる製品やサービスを、いち早く受け入れるイノベーター。一般の消費者とは異なる価値観を持つ彼らの存在は、世の中の技術や経済の発展に大きく貢献している。日本にも、古くは江戸時代からコロナ禍の現代に至るまで、さまざまなイノベーターたちが活躍してきた。今後も新たなイノベーターの誕生を、期待して見守っていきたい。

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