めまぐるしい状況の変化により、将来の予測が困難な状態を表す「VUCA(ブーカ)」。元は軍隊用語だが、VUCAは現代のビジネス環境を示す言葉としても使われる。先行きが見通せないビジネス環境の中、経営者に求められる行動や資質について、これまでの記事から振り返る。

VUCAとは?

 VUCAとは、めまぐるしく状況が変化し、将来の予測が困難な状態を表す言葉。「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を組み合わせた造語で、もともとは1990年代後半に誕生した軍隊用語だ。

 近年、VUCAはビジネスの世界でも用いられている。たとえば2000年代後半以降、リーマン・ショックや大規模な為替変動、東日本大震災など予測不能な事態が立て続けに発生し、ビジネス界に大きな混乱をもたらした。また技術や市場の急速な変化、異業種からのライバル参入などで、将来の収益性を予測できない状況もVUCAとされる。

 この記事ではVUCAの時代を生き抜くため、経営者に必要な行動や資質、VUCAをめぐる事例を過去記事から紹介する。

長い会議に意味はなし

 米グーグルや米インテルなど、世界のエクセレントカンパニーの現場から「会議の時間」がどんどん消えている。徹底的な“会議撲滅”で意思決定速度を上げようとしているのだ。先進企業ほど、今は何が起きるか分からないVUCAの時代だと気付いているからに他ならない。

 世界が不確実な時代に突入する以前は、企業も、意思決定に時間をかければそれだけ成功の確率は高まった。安定した時代には、会議を開いて入念に検討すれば、将来のリスクを大抵つぶせたからだ。しかし先行きが不透明なVUCAの時代、経営環境の変化は、いくら会議をしても予測不能になってきている。

VUCAの時代、経営者はすべてを分かる必要はない

 VUCA時代の経営にはアジャイル(俊敏さ)が重要だ。変化が激しい市場における「情報戦」で鈍重に構えていては、組織としての停滞や後退は免れない。では、「俊敏な意思決定」が可能な組織をつくるには、どうすればよいのか。そのために役立つのが、スイスのビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)が考案した「HAVEモデル」だ。

 HAVEとは謙虚さ(Humility)、適応力(Adaptability)、ビジョン(Vision)、良好な関係性(Engagement)の頭文字をとったもの。アジャイルな組織をつくるのに必要なトップの姿勢を挙げたものだ。アジャイルを追求した経営をしている企業のトップはこの4要素を身に付けている。

 迅速な経営の実現には、多様性あふれる組織の構築が避けられない。社内外で関わる多彩なバックボーンを持つ人と良好な関係を築けなければ、アジャイル経営は成立しないのだ。

「緻密な管理」は未熟の証明 強いリーダーの真の条件

 欧州経営大学院(INSEAD)のナラヤン・パント教授によると、VUCAな世の中で成功する経営者の条件は「自分自身を制御できること」だという。怒りっぽい人や決めつけが多い人は多様性を認めることができない。一方、自分をコントロールできる人が成功するのは、VUCAの時代に欠かせない「異なる視点」に寛容になれるためだ。

 バント教授は、リーダーはメンバーでなく自らを管理し、自由闊達に意見を述べられる環境をチーム内につくることが最も重要なことだと言う。世の中では、マイクロ・マネジメントのような緻密な組織管理こそが成果を生むとの考え方もある。しかし同教授は「マイクロ・マネジメントは、自己管理の対極にあるリーダーの姿勢で、私は評価しない」とした。

経営判断、迷ったら「占い」に頼るのも吉

 世界の優れた経営者の中には、今でも占いを経営判断の1つとして取り入れている人も多い。台湾に約20年在住する渡辺裕美さんもそんな相談を受ける占師の一人だ。「占いはそもそも、4000年以上蓄積されてきたデータを基にした統計学。ビッグデータやAI(人工知能)と考え方は同じで、台湾では『うさん臭いもの』というイメージはない」(渡辺さん)。

 台湾ではビジネスのさまざまな事項が占いの対象になるという。たとえば投融資の判断、新事業を立ち上げる場所、方位、風水、会社名、開店日、社員の配置などだ。シャープを買収した鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長(当時)も、買収契約の締結日を風水で決定している。

 経営者は孤独。最後は自分自身で決断しなければならず、責任は自身で背負わなければならない。明日何が起こるか分からないVUCAの時代には、スピード感を持って決断することも必要とされる。占いや風水などの言葉は、孤独な経営者が意思決定をする際の唯一の支えなのだ。

シャープがハマった「VUCA時代」の罠

 鴻海に買収されたシャープ。その衰退はVUCAがきっかけといわれる。社運を懸けた液晶パネルの単価が異常な速度で下落し、中韓パネルメーカーが尋常でない急成長を遂げ、中国スマホメーカーが台頭するといった状況は、かつては想定すらできなかったことだ。

 そしてシャープは13年3月期に5453億円の連結最終赤字、15年3月期には2223億円の最終赤字を計上することになった。16年に鴻海の買収を受け入れ退任した髙橋興三社長(当時)は「事前に想定していた以上の出来事が次々と起こった」と振り返る。

最後に

 先行きの不透明な状況を表すVUCA。かつては強大だった日本企業の中にも、VUCAに対応できず衰退したところが少なくない。新型コロナウイルス禍により、世界の先行きはいっそう不透明になりつつある。VUCA時代を生き抜くため、企業経営者には自分を律する強さや謙虚さ、適応力などの資質が求められている。

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