極端な円高や円安などを抑え、為替相場を安定させるために行われる為替介入。介入の目的によって円売り介入と円買い介入とに分けられるが、2022年9月にはおよそ24年ぶりとなる円買い介入が行われた。今回は為替介入の仕組みや課題、22年の為替介入が円安に与える効果などをこれまでの記事から振り返る。

為替相場の安定を目的に実施される「為替介入」

 為替介入とは為替相場の急激な変動を抑え、安定化を図るために通貨当局が外国為替市場で通貨の売買を行うこと。正式には「外国為替平衡操作」といい、財務相の指示に基づき日銀によって実行される。なお為替介入には円高を抑えるための「円売り介入」と、円安を抑えるための「円買い介入」の2種類がある。

 2022年3月に始まった急激な円安・ドル高を受け、政府と日銀は9月22日におよそ24年ぶりとなる円買い為替介入を実施した。前回の実施は1998年で、当時の円安は1ドル150円に迫る勢いだったという。これに対し2022年の円安も同様の水準だったが、介入による効果は一時的で、10月下旬には1ドル152円近くまで下落した。

 この記事では近年の為替介入を巡る話題から今後についての予測まで、これまでの記事から振り返る。

円高・株安に官邸危機感、経済対策へ

 22年の為替介入は急速な円安に基づく円買い介入だが、16年の状況は正反対だった。当時は1ドル110円台まで円高が進行しており、日経平均株価も1万5000円を割り込むなど日本経済が揺れていたためだ。輸出企業の業績への影響を懸念する声が高まったことから一時は11年以来となる為替介入(円売り介入)も検討されたという。

円安はどこまで進む? 外為市場について知っておきたい10のこと

 ところが21年の後半になると円安傾向が目立つようになってきた。10月15日には一時1ドル114円台となったが、その背景には米連邦公開市場委員会(FOMC)によって大規模な金融緩和の正常化が示唆されたことと、エネルギー資源の高騰などによるインフレ懸念があったという。

20年ぶり128円台 「悪い円安」巡り市場と当局がつばぜり合い

 およそ20年ぶりとなる1ドル128円台を記録したのは22年4月のこと。株価の上昇を伴わない今回の円安については、鈴木俊一財務相による「悪い円安」という異例の言及が話題となった。このコメントについて市場では「これ以上円安が進んでほしくないという口先介入」との見方もあり、為替相場への影響が注視された。

1ドル140円も? 24年ぶり円安について知っておきたい10のこと

 6月になっても円安は止まらず、1ドル135円台前後まで下落した。これは1998年以来24年ぶりの安値だが、わずか3週間で10円も値を下げたことになる。円安の原因とされるのは米国のインフレに対応した米金利の引き上げと原油価格高騰で、どちらも日本にとってはあらがえない外的要因だ。

円の価値、半世紀ぶり低水準 反転は年明けまでお預けか

 2022年9月に入るとついに1ドル144円まで円安が進んだ(7日時点)。鈴木財務相の「最近の動きはやや急速で一方的だ」という、為替介入を予感させる発言にも円安は止まらず、市場ではこの傾向が年明けまで続くとの見方も出始めていた。

急激な円安は阻止できるのか 3兆円為替介入の「費用対効果」

 9月22日に24年ぶりとなる円買い介入に踏み切った日本政府と日銀。1ドル145円台だった円相場は一時的に140円台まで上がったが、翌週には再び144円台となった。効果が限定的だった理由としては介入規模が約3兆円と限定的だったことが挙げられる。

最後に

 円安が続けば市場では物価の値上げが止まらず、ビジネスはもちろん市民生活へのダメージも大きい。為替が円高・円安のどちらに向かうのか、今後も注意深く見守っていきたい。

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